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著…梓澤要『荒仏師 運慶』

 「美しいものを見ると、この手で触れると、恍惚として、自分の醜さを忘れられる」

(著…梓澤要『荒仏師 運慶』 単行本版P5から引用)

 という、運慶が仏師の仕事にのめり込むきっかけとなった理由にとても共感出来たので、わたしは読んですぐこの小説の世界に惹き込まれました。

 「わたしは美に恵まれなかったが、誰も気づかない美を見つけることができる。この手で美をつくりだすことができる」

 (著…梓澤要『荒仏師 運慶』 単行本版 P7から引用)


 という文もわたしの心を打ちました。

 美しいものが好き。

 でも、自分は醜い。

 そんな自分が嫌でたまらない。

 でも、そんな自分にも、美しい仏像を彫ることは出来る。

 そして、自分が造り出した仏像に手を合わせることでしか救われない人たちがいる。

 だから彫り続ける。

 …そういう運慶の気持ちに共感出来る方はきっと他にもいるのではないでしょうか?

 死ぬのも地獄。

 生きるのも地獄。

 仏師・運慶が生きたのはそういう時代。

 当時、仏様とは、仏像とは、仏師とは、どんな存在だったのか?

 本来は目に見えないはずの仏様を、仏像として目に見える姿に創り上げることで、仏像を通して仏様に手を合わせる人だけでなく、それを造り上げる仏師自身も救われるのか…?

 そんな様々な問いをも読み手に投げかける小説です。

 死ぬのも地獄、生きるのも地獄、というのは時代がどんなに移り変わっても変わらないでしょうから、仏教だけに限らず宗教は古き世から今に至るまで無くならないのでしょうね。

 そしてきっとこれからも…。



 〈こういう方におすすめ〉
 生きているのがしんどく、死ぬのも辛いけれど、美しいものを愛でる時だけは心が救われる方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間〜3時間くらい。

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