見出し画像

ラーサラはアホの食いもん

学生時代、札幌に住んでいた。ただ学生といっても大学院生時代の話で、学部を関西で過ごした私は入学時すでに22歳になっており、それ相応に酒も飲む。それゆえ札幌での暮らしは18歳の若者とは少し違った次元でワクワクしていた。

札幌の居酒屋には、大阪出身の私が知らないメニューが数多くある。ザンギと呼ばれる唐揚げはもちろん、魚で言えばソイやコマイ、またキャベツとニシンの漬物なんてものもあった。

ラーサラ頼むか」

札幌で囲んだ初めての酒の席。学生寮の同期は耳慣れぬ言葉つぶやいた。

届けられた料理を見たとき、私は冷やし中華かと思った。なにせ麺がしっかりと入っているのだ。無論レタスやキャベツも入っているとはいえ、その主役はやはり卵色の中華麺だ。

その名もラーメンサラダ、通称ラーサラ。ちなみに、それを口にする、否、すすっている同期曰く、北海道で冷やし中華は冷やしラーメンと呼ばれているらしい。

今、そんなことはどうでもいい。私は思ったのだ。

「あぁ、これはアホの食いもんや」

ただこの日以来、他の道民よろしく、私も毎度のことのようにラーサラを注文してしまう様になるのだが。

そもそもアホの食いもんは蔑称ではない。大阪生まれ大阪育ちの筆者にとってアホの意味は「愛くるしい憎めない奴」に近い。
そしてこの国にはアホの食いもんが数多くある。

たとえばスパゲッティサラダ。スパゲッティをマヨネーズで和えたもの。どこがサラダなのか教えてほしい。これはポテトサラダも然りである。

続いて、かぼちゃの煮物。かぼちゃは秋のビタミン野菜の代表格として名高いが、実際は炭水化物の王様でもある。そのため、かぼちゃの煮物は炭水化物に砂糖をかけて煮るというファンタスティックな料理なのだ。そしてステーキについてる人参グラッセ、お前も同罪である。

ただこれらとラーサラの違いは彼らが一品料理として提供されている点にある。すなわち多くの居酒屋では、サラダ扱いではなく、そもそも酒の肴として提供されている。

かたや北海道でサラダメニューを開くと、グリーンサラダ、シーザーサラダ、ラーメンサラダとある。

「何をサラダみたいな顔してんねん」

すなわちキングオブアホな食いもんなのだ。ラーサラはおそらく自分のことをサラダだと思っているに違いない。

気づいてないなら教えてやろう、お前は麺類だ。

札幌を離れ早5年が経とうとしているが、やはり今のところラーサラを超えるアホの食いもんとは出会えていない。もはやラーサラを倒せる存在を誰かが知っているのなら教えてほしいくらいだ。

きっとラーサラは今日もサラダの顔をして「はて?」と皆を見つめているに違いない

この記事が参加している募集

ご当地グルメ

いただいたサポート分、宿のお客様に缶コーヒーおごります!