木下 浩之

商社でPR・IRを担当。主に広報・PR、ファシリテーション、組織的知識創造、リベラルア…

木下 浩之

商社でPR・IRを担当。主に広報・PR、ファシリテーション、組織的知識創造、リベラルアーツをテーマにノートを書こうと思っています。座右の銘 "leave the world better"(J.S.ミル『大学教育について』より)

マガジン

  • 読書録

  • insight - 知識と経験の交わりから

    読書等から得た知識と、日々の経験からの知覚・感覚とをつなぎ、気づき・洞察(insight)を得る。そうして自分独自の知的資産を蓄積していくことを目指す。

  • 日々と、本と。

最近の記事

ブランディングとは動詞である。

1年ほど前、通勤電車のドア横にある広告に衝撃を受けた。 そこには「美しく走る。」の一言。 そしてドアの反対側には、美しい自動車の写真。 あまりの潔さ。そして、それで完成されていた。それ以上の言葉は不要だった。 「美しく走る。」とその自動車の写真だけですべてを物語っていた。 僕は運転は好きだが、特に車に詳しいわけではない。しかし、街中でふと見かけたときに直感的に「あ、XXXっぽい」と分かるブランドが一つだけある。 「マツダ」である。 さて、そんなマツダのブランドや

    • 米津玄師「メトロノーム」に見るメタファーの威力

      この半年ほど、米津玄師をよく聴いている。「Lemon」はたぶん1000回くらい聴いただろう。歌詞のひと言ひと言が絶妙で、深く響いてくる。 さて、今日は久しぶりに1時間くらい走った。Youtubeで米津玄師のミックスリストを流しながら。50分くらい経ち、身体が心地良い疲労を覚え始めたとき、イヤフォンから切ない楽曲が聴こえてきた。何という曲だろうと思って画面を見ると、「メトロノーム」とあった。どうやら失恋がテーマのようだ。 ぼんやりと聴き入っていたのだが、いつの間にかその世界

      • 読書録『国境の南、太陽の西』(村上春樹)

        「花には香り、本には毒を」 ずっと前に出口治明さんが紹介されていた、現代思潮社の広告コピー。 文学作品を読むとこの言葉をよく思い出す。 文学には毒があり、ひとを癒す。 さて、村上春樹さんの小説を読むのは、恥ずかしながらこれが初めてだった。 つい最近、『走ることについて語るときに僕の語ること』というエッセイを読んだのを機に、今更ながら村上ワールドと呼ばれる作品に触れてみたいと思ったのがきっかけだ。 『国境の南、太陽の西』では、特に目立たないある男性の心の陰が、同じく心に陰を

        • 『世論』とメディアスタンス

          「STAY HOME」の連休中、何となくテレビをつけていると、当然ながら新型コロナ関係の報道が続き、オンラインで参加するコメンテーターが政府の対応についていろいろと意見を述べている。 それぞれの立場や見識から意見を出されているのだが、「これだから政府はダメだ。もっとこういうことをすべきだ」という論調が多い。そうなると僕は一人の視聴者としての僕は段々とうんざりしてきて、テレビを消す。 僕はここで政府を支持しようという意図は全く無い。また、批判的(critical)に考えるこ

        ブランディングとは動詞である。

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        • 読書録
          4本
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          0本
        • 日々と、本と。
          2本

        記事

          PRパーソンとメディアの新たな共創関係

          一週間前のことだが、PR Table社のオンラインセミナー「Withコロナ時代のPRについて話そう」を視聴した。 このテーマ自体にはあまりピンと来なかったのだが、最近は仕事一色の生活が続いていたので、角度の異なる話に触れたいと思ったからだ。 テーマにある「Withコロナ時代」と「PR」がどのように結びつくのか、はじめはよく分からなかった。それよりも僕としては実務でコロナに伴う会社の取り組みを適時適切に発信することに目下取り組んできたので、「危機管理広報」の観点と、他の企業や

          PRパーソンとメディアの新たな共創関係

          映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を観て

          ちょうど昨年末から三島文学を読んできたところで、一週間ほど前にこの映画の新聞広告を目にしてとても気になっていました。「圧倒的熱量を、体感。」「伝説の討論会」といったコピーにも惹かれ、また何らかの強烈な刺激が欲しい気分だったので、公開日の昨日3月20日に思い切って一人で観に行ってみました。 舞台は学生運動が激しく続いている1969年。東大安田講堂の占拠と陥落の後。左翼・革新派の全共闘の学生たちが、右翼・保守派の代表的存在である三島由紀夫に討論会の挑戦状を叩きつけ、三島がそれに

          映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を観て

          読書録『問いかける技術』

          組織心理学や組織開発の大家であり、「プロセスコンサルテーション」という概念を生み出した著者。ぜひ勉強したいと思いつつも、理論書に向き合って腰を据えて読むのは億劫だと感じていたところ、もう少し優しい語り口の本書『問いかける技術』を発見。ファシリテーターとしても気になるタイトルだったので購入しました。僕にとっては全7章のうち特に最初の2章と、監訳者である金井壽宏先生の解説が良かったです。 謙虚に問いかける原著のタイトルは『Humble Inquiry』で、「謙虚に問いかける」と

          読書録『問いかける技術』

          読書録『SUPER MTG』

          「MTGが変われば会社が変わる」というと大げさですが、「総人件費の15%を占める仕事の質が変われば会社が変わる」といえばどうでしょうか。この15%という数字は、ゼロックスで製造開発部門の社員24,000人を対象に行った調査結果だそうです。 実際に何%かはともかく、多くの人がかなりの時間をMTGに費やしていると思います。そして役職が上がる程に1日に占めるMTGの時間の割合は大きくなるでしょう。 だからこそ、MTGの質あるいはMTGのリーダーに対して評価を行うことを著者は推奨

          読書録『SUPER MTG』

          新型コロナウイルスの話題ばかりなので読書くらいは違うものをと、『ペスト』を読み始めました。重要性と発生頻度に基づくリスクアセスメントができても、実際に感染症の可能性を認めて徹底した対策をとるという決断には、極めて人間的な逡巡が難しくするのだと感じます。

          新型コロナウイルスの話題ばかりなので読書くらいは違うものをと、『ペスト』を読み始めました。重要性と発生頻度に基づくリスクアセスメントができても、実際に感染症の可能性を認めて徹底した対策をとるという決断には、極めて人間的な逡巡が難しくするのだと感じます。

          テレビのインタビュー回答力

          テレビのインタビュー対応は難しいものですね。ある程度想定問答がある場合はまだしも、その場での質問となると、うまく答えられるかどうか不安なものです。 視聴者が見ていられる時間は短い「うまく答えられる」というのがまたポイントで、テレビという媒体特性では、一つの回答で使える尺は15秒程度が限界でしょう。昨日オンエアされた取材内容を見てもそうでした。秒数で言えば5〜15秒、表示されるテロップで1〜3カットくらいとなります。 テレビでは視聴者が同じ人のコメントを見ていられる時間の限

          テレビのインタビュー回答力

          プレスリリースの文章は志賀直哉に学ぼう。

          広報パーソンにとって文章力は不可欠です。僕も一応のこだわりをもって書いているつもりですが、なかなか難しいものです。 自分の文章や言葉を磨くヒントを求めて、谷崎潤一郎の「文章読本」を読みました。小説家の文章指南が仕事の文書にどこまで役立てられるかは半信半疑でしたが、結論から言えば読んで正解でした。(ちなみに僕にとって最初の文章の教科書は、『理科系の作文技術』(木下是雄、中公新書)で、谷崎とはおよそ対極にいる物理学者の著書でした。とてもいい本です。) 特に印象的だったのが、志

          プレスリリースの文章は志賀直哉に学ぼう。

          「ニュースバリュー」の罠にご注意。

          もう何度目か分かりませんが、また懲りずにブログを初めてみようと思います。いつか続くようになればいいので、それまでに何度挫折したって構わないですし、始めなければ続きようがないですから。 さて、企業で広報を担当していると当然ながら「ニュースバリュー」を意識します。日本語で「報道価値」です。プレスリリースのネタ候補がある場合、広報的にはどこにニュースバリューがあるかを考え、より多くの記事掲載を獲得できるように、そのネタをよりよく見せたいという心理が働きます。 しかしこの言葉、少

          「ニュースバリュー」の罠にご注意。

          プレスリリースに愛情を(ある記者さんが教えてくれたこと)

          プレスリリースは主として報道機関に向けたお手紙である。もっと言えば、記者の仕事をする生身の人間へのお手紙である。受け取った一人ひとりがそのお手紙を読み、そこにどのような価値があり、世の中の人にとってどのような意味を持つかを考える。報道価値とは、世の中の人が知る理由・意味である。 広報が発信するプレスリリースは、広報から記者の方へのお手紙だ。優しく、分かりやすく、誠実に説明したい。すなわち、愛を以って伝えたい。 また広報というのは、自分の仕事を記者に、そして世の人々

          プレスリリースに愛情を(ある記者さんが教えてくれたこと)

          経団連の新卒一括採用廃止で、実態はどう変わるか。変われるか。

          経団連が新卒一括採用の指針を廃止する。これまで批判の多かった制度でもあり、改革に踏み切るのは歓迎されるべきだろう。 とは言え、実際の企業の側は、何をどのように変えていくのか。これは簡単ではない。採用につながるようなインターンをどう設計し、どのような仕事に従事させるか。売り手優位の採用市場では有名企業以外はどこでインターンを募集したりしていくか。結局は合同説明会しかなくなるのではないか。説明会時期が分散すると、採用時期も分散されるかもしれない。入社時期も例えば春入社・秋入社のよ

          経団連の新卒一括採用廃止で、実態はどう変わるか。変われるか。

          記事が動画に取って代わられるというのはナンセンス

          ブログのアフィリエイト収入では食えなくなる、という結論については特に関心はない。 だが記事が根拠の一つにしている、5Gによる動画コンテンツの伸長が人を読むという行為から遠ざけるというのは、あまりに短絡的だ。 人がブログに求めているものと、Youtubeなどの動画に求めるものは全然違っており、ほとんどの場合でそもそもコンテンツが競合関係にないだろう。 それに、ブログに動画が組み込まれたって良い。記事と動画を二者択一にすることはそもそもフレームとして間違いだろう。 https:

          記事が動画に取って代わられるというのはナンセンス

          成長のドライビングフォースは責任感

          串カツ田中の新人育成のやり方は非常に合理的だと思います。新人だけで数カ月間店舗を任され、必死で運営すると。 僕は人が成長するには自助努力しかないと思っています。 そして、その努力のドライビングフォースとなるのが責任感だと考えます。 自分にとって少し重く感じられる責任をどうにか果たそうと必死になるとき、人は努力せざるを得ず、結果的に強くなるのだと思います。 逆に責任感のない人、責任を避けようとする人は、あまり成長を期待できないでしょうね。 原石を逃すな(2) 「スパルタ」

          成長のドライビングフォースは責任感