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「びっくり退職」をなくしたい

「びっくり退職」というものがあります。優秀な今後を期待される社員が、突然退職してしまう、という事象です。現場でマネジメントを行っている管理職の方も、もちろん人事の方も、全く予期していなかった退職を告げられた瞬間は驚き、次の瞬間には業務に穴を明けないために人員をどう補填したらいいのか、それまで今いるメンバーに負担かけないようにしなきゃ、などと思いを巡らせてしまうため、「びっくり退職」はできればなくしたいものでもあります。

「ちょっとお話があるんですが…」と部下から声をかけられるとドキドキしてしまいますよね。

そんな「びっくり退職」ですが、人事にとってもマネージャーにとっても、ない方がよいものです。では、この「びっくり退職」をなくすためには、どうしたらよいでしょうか。


「びっくり」と「退職」

「びっくり退職」をなくすために、まずは「びっくりしない」「退職を防ぐ」に分けて考えてみます。

「退職を防ぐ」は人事にとって重要なテーマでもあります。退職要因を分析したり、エンゲージメントを高めて未然に退職に至る状況を防いだり、などを行います。とはいえ、退職分析は難しい、というお話はこちらのnoteで書かせていただきました。

では、「びっくりしない」ためにはどうしたらよいでしょうか。もし事前に退職を予期できていれば、それに備えた計画的な採用や異動による人員の補填、リソースアロケーションを行うことができるので、退職自体は痛いものの、痛みを最小限にできるはずです。

ですので、「びっくりしない」状況を作っておくというのが大事になります。

なぜ「びっくり」するのか

予期していない事が起こった時、人はびっくりします。びっくり退職についても、その人が「退職すること」が予期できていなかったため、起こっていると考えるのがよいでしょう。

では、なぜ予期できていなかったのか、それにはいくつかパターンがあります。

退職の兆候はあったが、それに気づかなかったパターン

退職は従業員にとって大きな人生の意思決定です。「急にどこかに旅行に行きたくなった」的に突発で思いつくわけではありません。日頃の会社・組織への不満や業務のストレスが蓄積されている状態から、何かがきっかけとなるものがありトリガーが引かれて退職に至る、というケースが多いと思ってます。

とすると、日頃の不満やストレスなどから従業員は何らかのアラートを出している、という可能性が高いです。

このアラートは、不満として声や文字の言葉で発せられるものだけではありません。日常業務での振る舞いやミーティングでの態度、勤務時の表情なども含め、余程意図的に隠さない限りはアラートとして現れていることがあるでしょう。

にも関わらず、人事やマネージャーのアンテナの感度が低く、そういった兆候に気づかない、ということが起こります。その結果、退職することが予期できず、「びっくり」してしまう、ということが起こります。

日常の振る舞いや態度といった、言葉として出てこない非言語情報に気づくためには感度が必要です。ただ、感度が高くなくてもそれを補うツールはあります。例えば定期的なパルスサーベイなどを用いればこういった変化に気づけるかもしれません。コンディションに関する回答が悪い方へ変化した、などはわかりやすいアラートになるでしょう。

勤怠状況の変化もアラートとして見逃せません。出社時間や退社時間の変化、有給休暇の消化状況なども退職の予兆として現れることがあります。勤怠データから退職を検知する、といったことも技術的に可能です。

また、社内のコミュニケーション状況が変わる、というのもあります。社内のチャットツールやメールのやりとりにおいて、急にコミュニケーション量が減ったり、逆にコミュニケーション相手が増えたりなどの変化は、アラートである可能性もあります。

こうした変化があった時、退職の可能性も含め何らかのアラートがあるのではないか、と頭の片隅においておくことが重要だと思います。ただし、あまりに監視が過ぎると従業員に警戒されることもあるので注意が必要です。

そもそも退職の兆候がみえず、気づきようがなかったパターン

一方で、どんなにアンテナの感度を高めていても気づかないことがあります。それは、従業員が退職の兆候を全く見せなかった、という場合です。

前述した通り、突発的に退職する、ということ自体はあまり多くありません。この場合は従業員が意図的に退職の兆候を隠していた、と考えるのが妥当でしょう。では、なぜ意図的に兆候を隠すのでしょうか。

こういった場合、従業員との関係性の問題があることが多いです。これまで会社や組織にいて、自分以外の人の様子を見ていて

  • 他の人が退職するときに、退職交渉が非常にめんどくさそうだった

  • 退職を予期されると、プレッシャーをかけられる

といったことが起こっていると、そういうことはなるべく避けたい、と考えるでしょう。

会社として、マネージャーとしては退職されては困るので、退職交渉でなんとかしたいとするのはあると思います。しかし、意図的では無いにしろ退職がめんどくさくなるので、職場に迷惑がかかるとわかっているものの、みんな退職を打ち明けるのが遅くなっていく。結果、びっくり退職が更に増えていく、ということになります。

このような状態では、退職を決めてしまった時点で取り返しがつかない、と思ったほうがよいでしょう。事前に退職の可能性を含むアラートをつかむとか、エンゲージメントを高めて退職に至らないようにする、とするのが本質的な対応策になります。

「びっくりしない」ために何をしたら良いか

結局は「びっくりしない」ためには、従業員が上げるアラートをちゃんとキャッチアップする、アラートをキャッチアップするためには、アンテナの感度を上げる(もしくは、ツールやデータなどを上手に活用する)、従業員との信頼関係を構築する、ということになります。

アンテナの感度と信頼関係はつながりがあります。退職に限らず、何か変化を見せれば、きちんとキャッチアップして誠実に対処してくれる。何か変化をみせるとめんどくさい、と思われないようにする。日常のコミュニケーション、関係性を大切にすることによって信頼関係も保たれ、不満があったらコミュニケーション取れる、退職が頭をかすめたらそれを相談してもらえる、という状態になるでしょう。

また、データ・情報を集めることもアンテナ感度を高めるサポートツールとして大事です。それは人事で使っているツールやシステムに格納するためのものだけではなく、ヒューリスティックになってしまいますが、「人の頭の中」にあるものも重要なデータ・情報となります。

現在のHR Techでは、システムに格納しきれていない、人・組織のデータや情報が数多くあります。先程話したように、振る舞いとか表情とか。こういった可視化されてない情報をアンテナ感度を高め集める、といったことは愚直ですが大事なポイントです。これはいわゆる人事やマネージャーの経験に今の段階では頼らざる負えないこともあります。

ただこれではスケールしないので、もう一歩先に進むために、こういった情報をきちんと言語化する、なんらかのシステムに投入していく、というのを行うのもよいでしょう。リソースはかかりますが、まずはテキストベースでもいいのできちんと記録を残す、それをもとにPDCAを回す、といった活動も必要かと思います。AI含めたテクノロジーの進化が著しいので、このあたりも今後機械化できる可能性は高いです。

従業員と関係性を築き、データをきちんと集めることがびっくりしないですむ方法です。そして、これができるとそもそもの退職自体を減らすことができるのではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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