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組織開発を定量的にどう評価するか

こんにちは。WorkTech研究所の友部です。年末年始いろんな情報を眺めていた中で、「パフォーマンスが高くないと判断されてた人が退職したら、実はその人がハブになっていて業績が悪化した」という内容のものがあり気になりました。これは極端な例ではありますが、これに近いことはいろんな企業・組織で起こりうるかもしれないな、と思っています。

経営目線で人事を見ていると、ビジネスに直結する「個人のパフォーマンス」へ目が行きがちです。一方で、個人のパフォーマンスを下支えする活動に関しては見えてないことが多いです。そのため上記のように、パフォーマンスが高くないと判断された人が退職したら業績が悪くなる、というようなことが起こるのでしょう。

こういった成果を下支えする動きに限らず、組織を円滑に回すための活動、いわゆる組織開発においてこそ、データの活用が必要なのではないか、というお話をします。

組織開発をどう捉えるか

企業や組織が持続的に成長していくためには、人材開発も組織開発も行う必要があります。

人材開発については、個人のパフォーマンスやエンゲージメントの改善を目的として、結果としてもビジネスに直結させてイメージすることができるので、そこへ投資を強化する場面も多いかなと思います。

一方で、組織開発については組織サーベイなどで組織の課題を見つけ改善することや、コミュニケーション施策などで従業員同士の関係性を円滑にするなど、「良い組織」を作るため幅広く行われることが多いです。しかし、ビジネスに直結しているイメージが薄いため、人材開発と比べ優先順位が低くなることがあったり、過度なコミュニケーション施策に対しては抵抗感を示す従業員の方もいるかと思います。そもそも、「良い組織」という言葉自体が曖昧だったりもします。

良い組織を作っていく、といっても仲良しサークルを作りたいわけではありません。あくまでビジネスという企業おける活動に紐付けられるべきなので、良い組織とは「持続的にパフォーマンスを上げて企業や事業の成長に貢献する組織」である、ということができます。

「組織開発」という言葉を調べると様々な説明が出てきます。その中で共通しているのは「人と人との関係性に働きかける」というものです。人と人との関係性で重要なのはコミュニケーションとなります。

よって、組織開発とは「組織が持続的にパフォーマンスを出せるように、コミュニケーションの土壌を作ること」として私は捉えています。人材開発が直接的なパフォーマンス改善のための取り組みとすると、組織開発は間接的なパフォーマンス改善の取り組みである、とも言えます。

組織開発をパフォーマンスに貢献するものと捉えることによって、人材開発と同様に組織開発も重要なものである、と考えることができます。

組織開発の方向性

では、組織開発がパフォーマンスに貢献するとしたとき、どのような貢献をするのでしょうか。ここには大きく2つの方向性があると思います。

組織開発の方向性

スポーツのチームワークなどを考えると、ついつい後者を期待してしまいます。ただ、現実にはコミュニケーションの土壌ができておらず本来出せるパフォーマンスを阻害している、という場面も多いと思うので、まずは前者のコミュニケーション改善を行うことが重要です。従業員サーベイも、パフォーマンスを阻害している組織要因を特定する、という点でこれに近しいスタンスであると考えられます。従業員サーベイについてはこちらの記事も参考にしていただればと思います。

組織開発のキモはコミュニケーションのあるべき姿の定義

組織開発の目的が「組織が持続的にパフォーマンスを出せるように、コミュニケーションの土壌を作ること」とすると、そこで必要なのはコミュニケーションのあるべき姿です。どういうコミュニケーションの状態であれば、本来のパフォーマンスを発揮できるか、を言語化していく必要があります。

「あるべき姿」は人事でデータ活用する時に非常に大事なものです。こちらのnoteでも書かせていただいております。

コミュニケーションのあるべき姿は、「組織内のメンバーのコミュニケーション量が多い」「気軽にコミュニケーション取れるひとが沢山いる」「部署を跨いだコミュニケーションが発生している」など、いろいろな姿がありそうです。

ここで大事なのは、「誰のパフォーマンス観点で見るか」というものです。例えば、入社間もないオンボーディング期間にあるひとであれば、本来のパフォーマンスを出せるようにするには社内のことをいち早く知るための情報共有や、自律的に活動できるようにするための社内ネットワーキングなどが必要になるでしょう。また、新しいチームが組成され各部署から様々なひとが集まった組織では、組織としてパフォーマンスを出すためには円滑に業務遂行できるようお互いの人となりを理解できるくらいのコミュニケーション量が必要になるでしょう。

こういったコミュニケーション土壌を作るための活動は組織においては必須であり、さまざまな形で施策が行われております。どの施策であっても、「これは誰のパフォーマンスにどのようにつながっているか」を考えておかないと、なんの目的に行っているか不明になり、施策自体が形骸化してしまいます。

組織開発の定量的評価

組織開発の施策自体を形骸化させないためにも、施策の効果の振り返りを定量的に行うことが重要です。そのためには、KPIを設計し定量的に評価する必要があります。

このnoteの冒頭で、組織を下支えする人たちが正当に評価されづらい、という話を書きました。組織を下支えしているひとは在籍している間は目立たず、だけど退職して初めて組織のパフォーマンスに影響していることがわかったりします。コミュニケーションが円滑におこわなれていることが「当たり前」の状態であることに気づかず、コミュニケーション不全がパフォーマンスの阻害要因になってしまったり。こういった組織を下支えする人たちの評価を正当に行うためにも、組織開発施策のKPI設計は有効であると考えています。

このひとは組織を下支えしてくれている、貢献してくれている、ということ自体、現場レベルでは理解できていること多いです。一方で、人事やマネージャーから見えておらず、認識のズレが生じていることがあります。では、なぜ人事やマネージャーから見えないんでしょうか。それは、やはり「評価」が難しいからでしょう。

「評価」するためには基準となるものさしが必要となるので、定量的な指標が必要となります。現状、組織開発における指標はこれである、という代表的なものがあるわけではありませんが、組織開発の「組織が持続的にパフォーマンスを出せるように、コミュニケーションの土壌を作ること」という目的のもと、コミュニケーションのあるべき姿について議論し、その姿になったとき、誰がどういう状態になっているか、を定義・言語化できれば、その企業・その組織に合った組織開発のKPIが作れると思います。

まずはオンボーディングの評価から始めるのもあり

組織開発のKPI設計をしようとすると、会社には様々な人がいるので、あるべき姿の定義が難しいと感じられるかも知れません。そんなときは、まずはオンボーディングから始めるのもよいかと思います。なぜなら、あるべき姿の共通点が多く、比較的短期間のデータでも意味があるからです。

入社したばかりのオンボーディング中のひとが社内で1ヶ月あたり何人とコミュニケーションとっているか、とか、特定の職種のひとが部署外のひとと1週間あたり何時間コミュニケーションをとっているか、などがKPIになりうるかもしれません。また、より高度なアプローチとして、ネットワーク分析で使われるネットワーク指標なども使える可能性があります。

「ひととひととの関係性」には変数が多く、定量化するのが現段階では難しいかもしれませんが、その価値は非常に高いものなので、どうあるべきなのか、について継続的議論されることが望まれます。

今回のnoteでは組織開発についてお話しました。どういったあるべき姿があるのか、具体的にどのような指標を見るべきか、その指標を見るためにはどのようなデータを取得するべきか、についてはWorkTech研究所で研究中です。事例なども含め、こちらのnoteでもお話できればと思っております。

人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方などWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、引き続きお気軽にお申し付けください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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