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【独占禁止法叙説】

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大学・大学院における経済法・競争法の講義の際に利用するハンドアウトをここにまとめました。
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【独占禁止法叙説】0-1 資本主義・市場経済・独占禁止法

 独占禁止法は、正式には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第…

【独占禁止法叙説】6-2 過度経済力の集中の防止(パート3)

(三)「事業支配力が過度に集中することとなる」会社  この「会社グループ」が「事業支配力…

【独占禁止法叙説】6-2 過度経済力の集中の防止(パート2)

(一)過度経済力集中会社の設立・転化の禁止  2002年改正法(平成14年法律47号)以降、法9条…

【独占禁止法叙説】6-2 過度経済力の集中の防止(パート1)

 独占禁止法(以下、「法」という。)は、その冒頭において同法が禁止する私的独占、不当な取…

【独占禁止法叙説】6-1 過度経済力集中規制

 法1条は、法により禁止・制限される類型として、私的独占、不当な取引制限および不公正な取…

【独占禁止法叙説】3-3 分析の枠組み

(一)競争関係  独占禁止法において「競争」は、「二以上の事業者がその通常の事業活動の範…

【独占禁止法叙説】3-2 規制の手法(パート3)

(4)濫用規制  これまで検討してきた「行為規制」及び「構造規制」は、法においては、しばしば正統的な手法と呼ばれるものである。しかし、すでに見たように「構造規制」にあって、企業分割などによる構造措置は、現実には弊害が明らかな場合のみに規制が限定されることになろうし、私的独占の予防行為として位置付けられる法第4章の各規定も、いまだ競争制限に至っていない行為に対し全面的な禁止を命ずるのはまれで、問題解消措置といった条件付きの承認を与えるのがせいぜいである。また、公益事業の民営化や

【独占禁止法叙説】3-2 規制の手法(パート2)

(三)規制手法の類別化と類型  法が採用する規制手法には、実定法上存在する具体的な禁止・…

【独占禁止法叙説】3-2 規制の手法(パート1)

(一)法目的実現の方法  独占禁止法は、その直接的目的として「公正且つ自由な競争の促進」…

【独占禁止法叙説】3-1 規制の対象

(一)事業者  独占禁止法は、事業者を「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」と定義し…

【独占禁止法叙説】1-2 規制の概要

 独占禁止法は、実体的規定と手続的規定とから構成されている。  実体的規定は、目的にもあ…

【独占禁止法叙説】1-1 法の目的

 戦後に制定された経済立法は、そのほとんどすべてにおいて目的規定が存在し、法律ごとの政策…

【独占禁止法叙説】0-a コラム−経済秩序と価格メカニズム

 近代市民法に由来する経済秩序とは、市場、なかんずく価格メカニズムが有効に機能することに…

【独占禁止法叙説】0-4 社会法・経済法としての独占禁止法

 経済の寡占化・独占化に伴って認識され展開した経済法は、近代市民法が前提とする法主体の自由・平等・独立という形式的・抽象的な人間像からの実質的な乖離をその背景としている。  このような認識は、いくつかの具体的な法主体間の関係において見出すことができる。たとえば、経済力を異にする大規模企業(寡占企業や独占的企業)と中小企業の間では、対等な当事者間の取引において導かれるはずの交換の利益が歪められる可能性があるし、また、商品やサービスを提供する者(たとえば生産・販売業者)とそれを購