いつ女性やマイノリティの人がCEOに昇進するのか?

1. はじめに

女性やマイノリティの人々にとって、ある組織のトップになるということは男性(特にアメリカの場合は白人男性)に比べて困難である。

その理由はバイアスによるのだが、今回の研究では女性やマイノリティの人々がCEOになるための条件を探求している。

論文は以下の通り。

Cook, A., & Glass, C. (2014) Above the glass ceiling: When are women and racial/ethnic minorities promoted to CEO? Strategic Management Journal, 35, 1080-1089.

2. Glass Cliff Theory と CEOになるための条件

Cliff という言葉は崖を意味し、Glass という単語はガラスを意味する。つまり、Glass Cliff とは「目に見えない崖」という意味であり、Glass Cliff Theory によれば、職務上マイノリティの人々は組織が下落リスクに直面している時ほどリーダーの立場に昇進しやすくなることを提唱している。

これは、通常の状態だと女性や黒人といったマイノリティの人々は、白人男性と比べて「劣っている」というバイアスがかけられているものの、組織の財務業績が悪くなると従来必要だと考えられてきたリーダーとしての資質が変化し、人々のマイノリティの人々に対するバイアスが緩和されるためだという。

つまり、女性やマイノリティの人々がCEOになる可能性が高まるのは、企業がピンチに直面しているときであると言える。

一方、Cook らはマイノリティの人々がCEOになったとしても、企業のパフォーマンスが低い場合、白人男性にCEOをとって代わられてしまう可能性が高まることも主張している。

これはつまり、マイノリティの人々は結果がより厳しく求められることを示唆しているのかもしれない。

3. 分析結果

Cook らはFortune 500 企業のデータを15年分用い、CEOの変遷について実証分析を行った。分析は条件付きロジスティック回帰分析と分散分析である。その結果、明らかになったのは以下のことである。

(a) 前CEOのときのROEが低いと、マイノリティのCEOが就任する可能性が高まる。
(b) 白人男性がマイノリティの人々の後にCEOに就任する可能性が高いのは、マイノリティの人々のCEO在職期間中、企業のパフォーマンスが低い場合である。

一つ目の結果に関しては Glass Cliff Theory の予想通りといえる。

二つ目の結果に関して、著者らはマイノリティの人々が状況を打開できない場合、人々は伝統的な企業の救済者を求めるようになる、と主張する。つまり、また白人男性を求めてしまう、ということである。

4. 危機的な状況こそ結果が求められる

今回の研究は、マイノリティの人々がCEOになるかならないかの要因として、企業や組織が危機に直面しているか否か、そしてその危機を乗り越えられたかによることを示している。

これは今のコロナの状況にも言えることかもしれない。

人々はとにかく現状を打破してほしい、というリーダーを求め、性別やその他の特徴をカッコにくくるようになるだろう。これによってバイアスが除かれ、今までは注目されてこなかった人がリーダーとして台頭してくるかもしれない。

しかし、このような状況下でリーダーになった人は、よりパフォーマンスというプレッシャーにさらされることになるだろう。結果が出せなければすぐに他者に取ってかわられてしまうかもしれない。

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