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なぜIBは今後広がっていくのか

時代の流れと共に、色々な価値観や常識も変化していきます。ただ、"変化"というのはその中にいると意外にわかりにくいのですが、後で振り返ってみてみると「ずいぶん変わったな」と気づくものです。

私とIBの出会い

ところで、私とIBの出会いは、今から15年近く前のことになります。カナダのバンクーバーでいくつかのIBスクールを訪問しました。

どの学校でも驚きがありましたが、ひとつご紹介したいのは、バンクーバーにある「公立」のIBスクールでのことです。

「体育館を案内するよ」と校長先生に案内してもらった時、私がみたのは小学生の高学年が練習する『空中ブランコ』の器具でした。聞けば、「シルクドソレイユのOBが教えてくれる」のだと。ど肝を抜かれました。

こんな事があってもいいのかと。私は思わず、カナダの教育指導要領には空中ブランコが入っているのかと聞きましたが、校長先生は「それはないよ、うちのオリジナルだけれど、うちはIBだし、カリキュラムはクリエイティブでいいんだよ」と笑っていました。

学校という場所は子どもにとってワクワクできる場所でなくてはならない


IB教育は、生徒たちに『考えさせる教育』をひとつの特長としていますが、同時に、教える教師たちにもクリエイティブであることを求めます。

認定校になるには『授業の共同設計(Collaborative Planning)』という項目があり、IBスクールの教員には、仲間の先生同士で授業カリキュラムを一緒に作成することが求められています。

当然『授業のねらい(Learning Intention)』はありますが、その狙いをいかに達成するかということについては、生徒がより興味をもって取り組めるように、教師の「工夫」が求められるのです。それにより、学校を行きたくない場所ではなく、今日は何があるのだろうとワクワクする場所にしていかなくてはいけません。

「空中ブランコに取り組むと何が学べるか」


IB的に言えば、空中ブランコを学ぶのは単なる体育の授業ではありません。
振り子の原理、質量と速度、仲間とのコラボレーション、恐怖心に打ち勝つマインドセット、失敗しても諦めないレジリエンス・・・
教科の枠を超えて、色々な学びや気づきにつながっていく授業をするのがIBの真骨頂です。

そして学んだ事は生かされなければなりません。学んだことを生かすとはどういうことか、それはつまりApply(適用する)ということです。

空中ブランコの例で言えば、物理の原理を適用してタイミングを測ることが出来ることに気づいたり、別の機会に『物事は最初から上手くいかない』ことを知り、それをわかって空中ブランコの練習に取り組めば、ちょっとやそっと失敗をしても気にせずに済みます。これは『経験』という言い方も出来ると思います。

そして今、この変化の時代…
混沌とした時代に必要なライフスキルとは、学びをApplyして課題解決すること、経験や知識をつなげて考える力です。

これが知識自体の有無を点数化する、日本の今までの教育と大きく異なる点です。

時代の変化の中で、だんだんみんな気づき始めています。『生きるのに役立つ学びとは何なのか』を。

簡単に言えば、教養としての知識は素晴らしいことだけれど、一方で学んだことが生かされなければ意味がありません。Applyする力がとことんある人は色々な荒波を乗り越えていける人になれます。

高校生の卒業資格IBディプロマ


もうひとつ、IBで高校生の卒業資格となるIBディプロマは、海外の大学では完全にスタンダードとなっています。事実、IBが世界の富裕層で人気なのは、実際にIBディプロマをもった生徒が世界の有名大学に多く入っているからに他なりません。

日本の大学は、まだIBディプロマに門戸を完全に開いていませんが、日本国内が少子化に直面している今、大学にとって海外から生徒を取ることは絶対条件であり、その上で、良い生徒を取りたければIBディプロマの生徒を受けるのは当然のことです。

したがって、今は、みなさん『日本の高校卒業資格』にこだわっていると思いますが、早晩、景色は変わっていくと思います。特に海外の大学を希望する場合は日本の高校の卒業資格より、IBディプロマの方が有利になることが考えられます。

またこれまで日本の大学はIBディプロマでは入れないと思っていたのが、それで入れる日本の大学も確実に増えてきています。

さらに、おまけ情報ですが、私立中学受験の難関校、開成や武蔵といった私立が今年から、「日本の小学校を出ていない、インターナショナルスクールの卒業生であっても、受験資格を与える」と制度を変更しています。

【中学の内申】というものにどれほどの意味があるのか、という議論も聞かれるようになってきています。この時代、【制度】や【学歴】よりも、【実力】『本当に必要な力』が重視される時代になってきているのです。

IB機構は、世界最大の教育系NPOです。
最先端の教育実践への知見を有しているのがIBです。どういう教育実践が次の世代を生きる子ども達に必要なのか、それを常に研究している団体です。そういう意味ではIBを『教育界の黒船だ』という人もいます。

時代の変化の最中にいるとわかりにくいかも知れませんが、IBの教育に関する知見は今後日本においても必ず広がっていくと私は考えています。

(次回:「これさえすれば東大は必ず入れる!」)

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