見出し画像

変化を急がなくてもいい


街中へ出かけると、職業柄ついつい子どもを見てしまう。そしてご両親がどんな声をかけているのかなんかも見ていたりする。
大体が微笑ましい場面なのだが、時たま子どものイヤイヤが止まらなくってどうしようもない場面なんかにも出くわす。

日頃から疲れが溜まっていて怒りをぶつける方もいれば、気持ちを丁寧に受け止めようとする方もいたり、人間だからその姿勢も様々だ。

私は保育園という限られた場所でしか子どもと関わることがないが、家族ともなれば朝も夜も時間を共にするんだと思うと、仕事をしながら子育てをするお母さんやお父さんたちは本当に頭が上がらない。
私の親もかつてこんな時期があったことを思うと、改めて尊敬の念でいっぱいになる。



そんな中でも時折、「この子は発達的にグレーゾーンかもな」という子と出会う。
何を話しても他に気を取られてやる事を忘れてしまう子、突発的に他の友達に手が出てしまう子、みんなより理解力が少し遅れている子・・・。

私自身も若干ADHDの節があるし、妹も発達障害を持っているので何日も見ているとなんとなくわかってくる。

子どもとは一人ひとりと関わっていくことをポリシーに普段から遊んだりお話しをしているけれど、特にそういった子との関わりは人一倍慎重に丁寧にしている。

気を取られて作業が進まない子に「またあれやってないじゃん」「いつになったらやるの」と一方的に声をかけたってどうにもならない。突発的に叩いたり物にあたる子を頭ごなしに怒ったって、その場凌ぎになってしまうだけ。
それに、理解力が遅れている子に「何にもわかってないじゃん」と声をかけたらどう思うだろう。

大人だと時間のなさにすぐ解決しようとしてしまうかもしれないけれど、それでは根本的な部分には響いていかないと思う。
私が普段から大事にしているのは「目をしっかり見て話すこと」、「まず相手を受け止めてあげること」だ。

話をしている人の目を見ること。他に注意が逸れているとせっかくの大事な話も入っていかない。
できるだけ集中が逸れない静かな場所に行ってから落ち着いて話をするようにしている。

そしてもう一つは相手を受け止めてあげること。
相手は何かがしたかったから、何かを思ったからその行動に出ているので、できればその子の言葉で言ってもらって理解できるようにしている。なかなか言葉にできそうでなければこちらが代弁したりしながら受け止めるようにも。


それを分かった上でこちらが一緒に考え、提案してみる。その繰り返し。

人間誰しも1日で変わるものではない。何日もかけることでそれが染み付いてくるわけなので、こういったやり取りをいかに丁寧にするかが後々に響いてくる。

どうしてもここは強く言わなければ分かってもらえなそうな場面もきっとあると思うけれど、私が指標にしているのは「向こうから信頼をしてもらえているなと感じるところまで自分はたどり着けているのか」という事だ。

まだ自分のそばにいて安心するところまで関係値が築けていない、この子はなんとなくまだ不安そうだと思う時は、強く言いたくてもそこはぐっと堪える。
ただ、もう自分のことを大いに頼ってくれていて、何も言わずとも向こうから近寄ってきてくれるような関係値になっているなと感じた時なら、しっかり怒る時は怒る。

こちらも人間。ずっと優しいわけではないし、やっていいことと悪いことがあるということは伝えていかなければならない。
ちょっとなめられ過ぎているなと思ったら、機会を見計らって真剣に話す時間も作ったりする。

それなりに関係が出来上がっていれば多少強い言い方をしたって後のフォローをしっかりしたなら、次の日にはケロッとしていたりする。

まだまだ感情のコントロールはこれからだからこそ、楽しければついついまた同じことを繰り返してしまうこともあるけれど、子どもたちにやってしまった理由を聞きながらも、きちんと理由を伝えながら繰り返し話をしていくと、不思議なことに少しずつ成長していく。

子どもを「弱い存在」として見ているのか「一人の人間」として見ているのか、大人の関わり方を見ていれば大体わかる。

もちろん、体や心もこれから育っていくのですから大人より非力な部分ができるのは当たり前。だからこそ守っていかなければならないというだけで、決して子どもが「何もできない存在」ではないことは勘違いしないでほしいところだ。
何なら世の大人よりも斬新なアイデアをくれることもある。だからこそ未来のためにも守っていかなければならない存在だと思う。

いつもよりちょっとでもできるようになったことがあれば、そこを褒めてあげるだけでもいい。悪いところだけを助長して言わないこと。大人にとってはこれぐらいなんてことない言葉でも、子どもにとっては心に刺さるような言葉だったりする。私も20年経った今でもそういう言葉を変に覚えていたりするから。

自分基準ではなく、この子だったらどう感じるかな、という目線で物事を考えてみるといいかもしれない。もちろんそれは自分以外の大人と関わる時にも役立ってくれると思う。

相手を頼りにしている事を伝えること、相手に頼ってもらえる自分になること。こんな強い関係が出来上がることで、お互いの未来はいくらでも変わる。

急いで変わらなくても大丈夫だ。人生は長い目で見るくらいが丁度いい。

読んでくださりありがとうございます。 少しでも心にゆとりが生まれていたのなら嬉しいです。 より一層表現や創作に励んでいけたらと思っております。