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日本の伝統文化「聞香」体験をしてみて


徳川美術館

徳川美術館さんで開催された「聞香体験講座」に行って参りました。

場所は徳川美術館内にある大正時代に建てられた「餘芳軒」というお茶室で、文化財にも指定されています。
 
はて、聞香(もんこう)とはなんぞや?
 
聞き慣れない言葉ですが、「聞香」とは香りのする木「香木」を焚いて、その香りの違いを古典の和歌や故事、そこから想像できる情景を考えたりする芸道のこと。

また香道では、香りを「嗅ぐ」とは言わず「聞く」と表現します。
なんだか雅ですね。

■お香のはじまり

そんなお香の起源は、その昔、日本に仏教が伝来した頃まで遡り、仏具や経典とともに百済(昔の朝鮮)からもたらされたと考えられています。お寺では線香を立てたり、焚いたりするのが一般的ですが、お供えやお焼香など日々のお勤めとして当時から香は欠かせないものでした。
 
それが平安時代になるころにまた少し変化します。空間に漂わせるだけじゃなくて、家具や着物に焚きしめちゃおう!となり、さらに日本独自の漢方を粉末にして練り合わせるなど、より複雑化。
 
これを「薫物」(たきもの)と言います。
 
やがて「歌合」や「絵合」、「物合」などのひとつとして、「薫物合」が上流階級の貴族たちの知的な文化として定着していきます。

■競技としての「聞香」の誕生

その後、公家社会から武家社会へと移行した室町時代。東山文化を発展させた将軍・足利義政が「香木」を使って香りを楽しみ、またその違いを当てる、現在の香道につながる競技的な「聞香」が誕生します。

将軍が香道を推奨すれば、周囲の武士たちもならって香木を収集し始めます。こうして香道や香木の価値も高まっていきました。
そして香道の祖とされる「志野宗信」や「三条西実隆」らによって茶道や華道とならぶ芸道として体系化されました。
 
江戸時代になる頃には、武士だけではなく財力のある町人たちも香を嗜むようになります。香道はより作法が整えられ、く遊戯や競技から進化し「香道」へと昇華しました。
 
この伝統的な香道が現在も引き継がれ、多くの人達がその道を極めているのです。

■聞香のルール


固い話は上記までにして、こちらでは聞香のルールを簡単にご説明します。
今回は、香道の祖とされる志野宗信の志野流・香元さんから手ほどきを受けました。


聞香のルール

体験した聞香は「梅烟香」(ばいえんこう)と呼ばれる組香。 最初に知っておく情報は大きく3つ。

1.香は三種


・梅 二包 内一包試
・烟 二包 内一包試
・香 一包 無試

2.聞き方


最初に、香を整えてくれる香元さんが梅、烟の順で試しに聞かせてくれます。この2つの香りをしっかり記憶。次に「出香」と声かけされ、梅、烟、香がシャッフルされた状態で回って来ます。

3.香りを当てる

出香と言われたあとの香りが、どれなのかを当てるのが聞香の基本のルールです。

また香りを聞くときは、回ってきた器のサイドを手で覆って香りを逃さないようにします。

梅烟香のルーツ

調べたところ以下の歌がもとになった、梅の季節の組香のようです。
 
・難波津に咲くやこの花冬ごもり今を春辺と咲くやこの花
(難波津に梅の花が咲いている。冬ごもりをして、今こそ春が来た と い っ て 梅 の 花 が 咲 い て い る)
古今和歌集より「仮名序 王仁」
 
・高き屋に登りて見れば煙たつ民のかまどはにぎはひにけり
(高殿に登って国の様子を見渡せば 民家からは煙が立ち上り、民は豊かに栄えているのである)
新古今和歌集より「仁徳天皇」

■聞香を体験してみて


…正直、一個も当たりませんでした。
香りの微妙な違いは感じ取れるのですが、やはり瞬時に記憶できないですし、香りを聞いている最中ずっと頭の中が「???」の状態でした。
 
でも背筋をちゃんと伸ばして集中するって日常ではなかなかしないことなので、とても興味深い時間を過ごせたと思います。
 
それにお香を回して香りを聞くあいだは、他の体験者の方々も当然ですが皆さん静かにされていて、非日常を感じることができました。
 
ぜひまた聞香体験やってみたいです。
次はもう少し成長しているといいのですが…。

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