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不定刊イガラシ増刊号Vol.1~バズリズムLIVEとヴィニルと烏と年末プライブ~

■最近のイガラシ

どうも皆様お久しぶりです、お目めの恋人、貴方の毎日の歪みエフェクターになりたいイガラシです。

前回のエントリから何ヶ月経ったでしょうかねぇ、確かめちょめちょ真面目なお話したような記憶があるんですけど、今回は今までの通常運転と言いますか、こんな感じです。すみませんねえ。

と言うか見てくださいました?タイトル。『不定刊イガラシ特大号』。聞いたこともないサブタイですよ。当然ですよ、今回から始めたんですもの。完全に個人的な問題で申し訳ないのですが、実は昨年の11月辺りから家族に不幸があったり本業の方で大きな変化があったりと急に忙しくなってしまい、なかなか好きな事を自由に綴る余裕が見つけられない状況が続いてしまったんですね。

まあ七転八倒の甲斐あって実は今年からとある音楽誌・Webメディアの編集者としてお仕事させて頂けるようになったのですが(しれっと重大発表)、その間にもひっそり特筆すべき芸術との出逢いや初体験などをしてきていたわけですよ。でもそんなこんなで話題が新鮮な間に世に放つ事が出来ず、臍を噛むしかない毎日。物書きとしてそれはどうなんだ?この手の中には是非ともみんなと共有したい、きらきらとかけがえない輝きを放つダイヤの原石が山のように抱え込まれていると言うのに!!!!!!



……というわけで始めたのが、この『不定刊イガラシ特大号』でした。簡単にご説明しますと、書きたい事がはちゃめちゃに溜まっているのにnoteの更新になかなか当たれない時期に、書きたかった事をまとめてぶち込むごった煮Webマガジン風記事シリーズです。現在連載している以下のいつものマガジンも引き続き更新していくつもりですが、そちらもそもそも不定期なのでご高覧くださっている皆さんにおかれましては、大して生活に影響はなかろうかと思います。



↓↓↓いつものやつら↓↓↓


マガジン:ロックバンド偏愛記録ー下北沢から涅槃は遠い

https://note.com/igaigausagi51/m/m032b57afb2b1


マガジン:極楽浄土は何処にある

https://note.com/igaigausagi51/m/m436001087f61



というわけで、今回は『不定刊イガラシ』創刊号となりますが。あまりにネタが溜まりすぎてしまったので創刊号なのに特大号です。めちゃ長いです。こちらの記事は内容を簡潔に見せるために1センテンスにつき1500字前後に纏めると言う目標も設けておりますし、1ネタ毎に見出しもつけますのでまー気になるところだけ読んで頂ければなと思います。寝る前のちょっとぼんやりしたい隙間時間にでも、少しずつごゆるりとお楽しみくださいませ。



■バズリズムライブに行ってきたよ

昨年の11月10日、横浜アリーナで行われた『バズリズムLIVE』に行ってきました。基本的にワンマンライブ信奉者、大勢のひとが集まるだだっ広い場所にわざわざ赴き、しかも何組も何組もミュージシャンが出てくるイベントともなるとイガラシ的にはわんこそばみたいなものなので(わんこそばみたいなものなので?)相当脳味噌の消化活動が活発な時期や余程の事がない限りは足を運ぶ事もないのですが、この時は何を隠そういわゆる“余程の事”があったわけです。そう、出演ミュージシャンが“神ラインナップ”だった。

だってスキマスイッチ・フジファブリック・sumika・KEYTALK・King Gnuですよお嬢さん!?地上波人気音楽番組の財力とキャスティング力を惜しげもなくフルスイングしたこの字面!!!!個人的には特に最推しツインボーカルバンド二組KEYTALKとKing Gnuの競演にはイクッキャナイッショ~~~!!!!と言う心持ちになりまして、喜び勇んで友人イチハラ氏と連れ立って二度目の新横浜へと赴いた次第です。



とまあ、前置きはこの辺にして。次からは出演バンド別の感想になります。完全に旬を過ぎてしまいライブレポートにすらなっていない一言感想ですが、んなこたどうでも良いんだよおれが書きたいから書くの諸君は黙って読め。(誰だ今「本性が出たな」って言った奴)


┗King Gnu

トップバッターだったKing Gnu!このイベント、実はタイムテーブルが発表されてなくて僕達うっかり遅刻しちゃったんですがアリーナ外の回廊を駆けずり回りながら聴く『飛行艇』も悪くなかったですね。あのMVを思い出すかと思いきや、セキユーのフルスイングドラムがシブ過ぎてなんか入場行進中の甲子園球児みたいな気分でした。めっちゃ応援してくれるやんけ。

そんな感じで初っぱなからテンションアゲアゲ(死語)間違いなしなエントランスだったわけですが、普通フェス的なサムシングのトップバッターってまず最初にオーディエンスを沸かして、場を温めておく役割を担う存在だと思うんですね。待てよブラザー、そこはおれ達のKing Gnuだ、そう一筋縄にはいかないのがヤツ等と言うバンドだぜ。その時丁度全国をツアーで回っている最中だった事もありリズム隊のグルーヴ感も凄まじく、とにかく引き込まれることこの上なかったのだけれど、何と言ってもハイライトは『白日』と『The hole』。オーディエンス沸かすどころじゃない。そんなガスコンロみたいなみみっちい役目、King Gnuは担おうともしなかった。

徐にギターを下ろし、鍵盤に向かう常田。照明の落とされた暗闇の舞台の上、井口くんだけを照らし出す心許ないスポットライト。吐息混じりのスモーキーなハイトーンを吐き出す井口くんは何故だか不思議といつもより幼く、少年のようなあどけなさすら感じる表情を浮かべ、ぶかぶかの古着風のスウェットの袖から少しだけ覗く指先で白鍵に触れます。

実は彼はこの時喉を傷めていて、病み上がりの状態でのライブだったのだとか。そんな事情が嘘のようによく通るロングトーンは勿論相変わらず美しかったのだけれど、各曲サビに差し掛かる程に掠れ、途切れ、心細い発声になってしまうように。それでも、その絞り出すような歌声には確かに鬼気迫る美しさがあり、なんだかとんでもない祭祀を見せられてしまったような不穏な神々しさすらあるように見えました。今ちょっと話題の映画『ミッドサマー』みたいな。まだ僕は観てないけど。

MCもほぼなし、たったの五曲のセットリストだったのだけど体感二時間ぐらいの濃厚さのある、濃縮版のKing Gnuを見せられたようなアクトでした。まあそんな井口くんの狂気のバラードの後に『Slumberland』とかキメられちゃうと無事常田ギャになって咲きまくってしまうのですが!!!!悔しいぜ、くそう。


┗KEYTALK

二組め!みんな大好きKEYTALKだよ!!!!言わずと知れた(?)KEYTALKのオタクなイガラシですが、実はフェス的な場での凝縮版セトリは未経験なんですよねぇ。この時も同行してくれたイチハラ氏といつもワンマンに行っていたので。とにかくこの時が初体験だったわけだけれど、全部聴き慣れたよく知る曲とはいえここまでキラーチューンばかりぶち込むか!?と狂気的ですらある盛り込みようにぶったまげました。

彼等もこの時丁度アルバムのリリースツアーの真っ最中で、その影響か音が全体的に肝っ玉据わってると言うか、上半期のツアーよりもバンドサウンドがエロくなったような感じがありましたね。武氏がギターをいつもの黒SGからおニューの白SGに変えた影響もあるかもなあ。パフォーマンスも勿論ゴリゴリ。これだけバリエーションのある出演者のイベントだとファン層が幅広すぎて多分彼等のライブを観るのはお初だと言うひとも少なくなかったと思うのだけれど、良い意味で一見さんに全く優しくないアクトでした。いつもより多めにくるくる回るよしかつさん、マイクスタンドをひっくり返して投げんばかりの豪快なパフォーマンスを見せる巨匠、美形が台無しな必死の形相でのホイッスルタイムをしっかりステージカメラに抜かれる八木氏、MC中ずっと八木氏の肩に腕を回して喋り倒す武氏(?)。

特にヤバみがMAXだったのが、『MATSURI BAYASHI』前のよしかつさんの荒々しい所作とあり得ないぐらいドスの利いたボーカル。お立ち台に片足をのせて身を乗り出し、重力無視の前傾姿勢でフロアに睨みを効かせたかと思いきや徐にピックを投げ棄ててバチバチのスラップを鳴らす一連の所作は正にロックバンドのカリスマベースボーカル然としていて、あの絵に描いたような華奢で柔和そうなルックスや普段の歌声からは想像もつかない程猛々しくて最高に色っぽかったですね……。派手な柄シャツにスキニーデニムの出で立ちもなんかグラムロック感あって素晴らしかったです。イエモンのロビンみたいな。イガラシはグラムがなんぞやをよく知りません。

さっき「一見さんに全く優しくない」と書いたばかりなんですけども、逆に“一見さん向け”のKEYTALKがあれだったのかな、とも今となっては思います。何故なら、彼等のロックバンドとしての華やかさや狂気、旨味が呑み込みきれない程に詰め込まれていたから。初めてのお客さんも沢山いるのに堂々たる風情で「ぺーい」を連発するリーダー・武氏に最高に頼もしさを感じる抜群のパフォーマンスでした。


┗sumika

いよいよ生で拝むのは初めてのバンド。この年King Gnuに負けないぐらいの飛躍を遂げましたね。sumika。一度ライブを観てみたいと思ってはいたのだけれど、想像以上でした。圧倒的透明感。音のひとつひとつが夏の早朝の草原を抜ける風みたいだし、何よりメンバーがみんな心底楽しそうに鳴らしている姿が堪りませんでした。

特にボーカルの片岡くんの歌とMC。声がイイのは言わずもがな、優しくてアツい性格が滲み出していて。何度も何度も「ご機嫌いかがですか?」と問いかけ、両手を広げて一生懸命観客に語りかける白シャツ姿の彼は正にフェアリー。もうあれはニュー○ーズの妖精。洗濯洗剤各社は今すぐsumikaにCMオファー出してください。真っ白な洗濯物が青空いっぱいにはためく中、野原にバンドセットを組んで笑顔で演奏するsumikaの姿が見えるよあたしゃ。脱線しました。

以前から好きだった『ソーダ』や『雨天決行』も聴けたので、短時間でめ大満足のセットリストでした。ちょっとワンマンも行ってみたくなっちゃったな~絶対チケット獲れないけど!

片岡くん、今回のイベントに関して「別にビジネスでオファーを受けたわけじゃない、『バズリズム』と言う大好きな番組からのお願いだったから、いち音楽なかまとして出演を決めた」と言うような旨の事をお話されていて、なんて心の綺麗なひとだと脳味噌まで洗濯のうえ柔軟剤仕上げされそうになりました。


┗フジファブリック

実はこの時一番生で観てみたかったフジファブリック。だってウチらからしたら伝説的だもの、存在が。とは言え浅学ながら僕自身はあまりフジファは詳しくはなく、『若者のすべて』と『Green Bird』が好きだなあ、ぐらいの認識だったのだけれど、この時改めて思い知らされたね、このひとたちは格が違うと。

とにかく登場した瞬間の存在感が凄い。さっきまで充分すぎるぐらいの華やかさや貫禄を見せていたKEYTALKやsumika、King Gnuが失礼を承知で言うとひよこにトサカが生えたぐらいに思えてしまう程の佇まいの安定感と美しさ。あまり舞台の上を動き回るようなパフォーマンスをするひとたちではなく、定位置に立って淡々と聴かせるタイプなのだけれど、それでも不思議と躍動感があって楽しげで軽快な印象すらありました。

そして何より山内総一郎さんのギターの上手さと声の良さよ!!!!表現力が抜の群。あと音がいちいちエロい。官能的。武氏のギター霞んじゃう、ヤバいヤバい。

実は僕、山内さんに対して気難しそうなイメージを長年抱いていたのだけれど、MCでの柔らかな関西弁でお話しされる姿にそんなイメージは一瞬で霧散しました。

「我々もう15年もバンドやってるんですけど、今でもこうして初めて観てくれるってひとたちにも出会える事が、とても嬉しいです。今、ここにいてくれる全てのひとへ」と言う優しい言葉に続いて披露された『若者のすべて』は、夕暮れの街のような照明の色も相まってこの世のものとは思えない程美しくてちょっと泣いちゃった。フジファブリックを知らなかった昨日までの僕へ。人生、損してたぜー。

(おまけ:当該イベントのメインメニューと言っても過言ではない、MCのバカリズムさんとフジファブリックのコラボ楽曲は言わずもがな素晴らしかったです。こればっかりは僕の貧相なボキャブラリーでは表現し尽くせないので、是非MVをチェックしてみてください。個人的にはギター弾けないのに持ち前の演技力とベテランおかっぱバンドマンみ満点のルックスで“玄人”感が凄かったバカリズムさんがめちゃめちゃ面白可愛かったです。ギター持って立ってるだけなのに完璧な“フジファブリックのメンバー”だった。見た目だけは。)


┗スキマスイッチ

この時のトリは皆さんお馴染み、昨年は某おっさんがラブなドラマ主題歌でも話題だった(そこはsumikaもでしたね)スキマスイッチでした。一番聴いてたのはイガラシ中学生ぐらいの頃かなあ。完全に年齢バレるんですが、『ガラナ』『奏』『全力少年』『マリンスノウ』が四強です。

あまりに親しみが深すぎてこの令和元年の秋に今更ライブが観られるだなんて思いもしなかったのですが、「やっぱり長年指示され続ける音楽ってのはイイもんなんだなあ」とつくづく骨身に沁み渡る時間でしたね。お馴染み大橋さんと常田さんのコンビの他におそらく固定メンバーであろうサポートバンドを加えたダイナミックなバンド編成で、ドラムンベースのローのサウンドが重めの意外にもドープな音がカッコ良かったです。

何が凄いって、全ての音声情報が音源そのままなんですよね。当たり前かもだけれど、安定感が凄い。寧ろあれだけのキャリアのあるひとたちだったらば、ちょっとぐらい粗い演奏しても誰も文句言わなかろうに、愚直なまでに音楽に向き合っているのが痛い程伝わってくるんですよ。しかも楽しそう。心底。大スクリーンにでかでかと映し出された大橋さんの笑顔見てみなよ、あんたが全力少年だよ。

とにかく歌も演奏もピュアだし、でもベテランならではのこなれ感もあるし、MCは漫才かってぐらい軽快だし、安心して身を委ねられる上質な音楽体験と言う感じでした。『全力少年』を歌いながら花道を走り回りお客さんとハイタッチしまくる大橋さん、紛れもなく少年。

それにしてもMC、本当に芸人レベルだったな。終演後同行者イチハラ氏が真っ先に口走った一言が「……軽妙なトーク……」だったもの。因みに内容は常田(ときた)さんと同じ漢字綴りの、King Gnu常田(つねた)の話題多めでした。めちゃめちゃ「セクシー」言われてた。彼の照れる様が目に浮かぶようです。

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■映画『ヴィニルと烏』


同じく11月に、期間限定上映をしていたので観賞。監督は若手のホープ、横田光亮氏。主演から脚本まで務める八面六臂っぷりの監督の魂が詰め込まれた30分に陰と深みを宿すのは、俳優・井口理。そう、さっきのKing Gnuの彼(推し)ですね。

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実は僕がKing Gnuを知った一昨年の段階でもとある映画祭で上映されていて、その時は運悪く高熱を出してしまい機会を失ってしまったのだけれど、故あってお世話になっているツイッターのフォロワーさんにお誘い頂き、やっと観賞の運びと相成りました。長い道程だった。

簡単に説明すると、物静かな男子高校生がクラスメイトから酷いいじめを受け、それに反撃するためにボクシングの心得のある兄貴から闘い方を教わる――と言うようなお話なんですけれど、多分される方でも巻き込まれた方でも、かつていじめに関わった経験のあるひとはフラッシュバックとかしちゃうんじゃないかな、と言う程度には生々しいです。映像はまだ荒削りな感じも多分にあるのだけれど、そこは流石マカロニえんぴつのMVも監督した華々しいキャリアのある期待の横田監督、「まだ経験も浅いし、こんなもんだろ」と言う感じの粗の多さでは決してなくて、その荒削りさがドキュメンタリーのような、青春文学のような芸術性と生々しさに繋がっているように思えるのが凄い。

個人的に一番魅力的に感じたのは、ワンカット毎の画ヂカラの強さ。どのシーンを切り取っても絵になるんだから最強だよ。特に大好きなのが、クライマックスの校舎裏で横田監督演じるジュンと井口くんが演じるいじめっ子(サッカー部のエース然としている)が対峙するシーン。絵として完成度が高すぎていっそ神々しいレベルだった。パネルにして飾りたい。

作品としての魅力は当然ながら、念願だった役者・井口理もそれはそれは末恐ろしいものがありました。初っぱなからフルスロットル。暗く沈んだ、森の奥の澄んだ沼みたいな瞳でこちらを覗き込み、可愛らしく整った相貌の真っ白な陶器のような頬を醜く歪ませて笑うんですよ。怖い。この世の軽蔑の権化みたいな表情してる。悪い思い出ががっつり蘇るかはたまた新しい扉が開く音が聴こえるかのいずれかですあれは。その他の役者さん達の存在感も素晴らしくて、しかも行間の読み甲斐がありまくりなのでもうちょい長尺で撮ってほしかったな~と思ってしまうぐらいでしたね。でもあれぐらいコンパクトな方が良いのかな、とにかくヒリヒリした、古いケロイドを引っ掻き回されるような映画だったから……。

それでも、僕はあの作品に出会えて良かったと思っています。ひとりだったら発狂してたかもだけどな!!!!!!まじでフォロワーさん誘ってくださって有難うございました……。でもこのしんどさを正しく感じられるような感性が培われたのは間違いなく、僕も同じような目に遭ってきた経験があるからで、僕の人生は決して間違いじゃなかったのかな、なんて思わされたり。とにかく、ずっと浸っていたいと思ってしまうような、青臭く泥臭い、爽快な地獄のような映画でした。


■Plastic Tree年末公演『ゆくプラくるプラ~海月リクエストの宴 まひるのうた~』

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昨年の締め括りも毎年恒例、長年敬愛してやまないPlastic Treeの年末公演へ。例によって毎年ご一緒してくれているアングラの先輩みたいな存在である、遠方に住む絵描きの友人と共にヴァニラ画廊など都内のアングラスポットを楽しんだ後水道橋のTDCホールへ向かうこれまた恒例のルート……と思いきや、実は今年は何故か現場があの関東でもかなり大型のホールに入るであろうパシフィコ横浜に移動。万年運動不足のフリーライター(当時)と絵描きのコンビは12月の寒空の下、大した土地勘もない見知らぬ港町で小一時間彷徨い歩く羽目になりました。何故なら、会場内への入口が全く一切見つからなかったから。

パシフィコ横浜って駅ナカのショッピングモールから繋がってるんですけど、屋外にある空中回廊みたいな渡り廊下の途中に入口らしきサムシングがあるんですね。ライブと言えば物販。特にプラのライブグッズはデザインが良いので有名ですから、まず買っておこうかな~とそちらに向かったのだけれど、何故か『閉鎖中』の立看板。辺りを見回しても他に入口らしき場所もなく、それらしきバンギャの姿すらも見当たらない。あれ?まだ物販やってないのかしら。しかしこの時の公演は実は昼夜二公演制、僕達が観賞する予定の昼公演開始までには二時間もないのでした。そんなはずはない、きっと何処かにあるはずだ。藁にもすがる思いで辺りを歩き回る運動不足気味のインドアクリエイター二名。十二月の寒風がふたりに容赦なく吹き付け、皮膚の潤いがどんどこ奪われる。

「寒いよう・・・・・・寒いよう・・・・・・干し海月になっちゃうよう・・・・・・」

「やめて・・・・・・出荷されちゃう・・・・・・酢の物にされちゃう・・・・・・」

「あれ?何やらあっちの階段に吸い込まれてゆく人々が」

「下に繋がってるっぽいけど・・・・・・でもなんか、様子がおかしくない?ファン層が違うと言うか」

「確かに、随分ラフでカジュアルなご夫婦がおる」

「銀座に観劇に来たみたいなツーピースのご婦人もおられるよ」

「どう考えてもシューゲイザーを聴きに来たひと達の格好じゃないね・・・・・・」

などと言いながらもとりあえず向かってみるも、階段を降りれば降りる程募る不安。バンT姿もゴスロリも見つからない!!!しかし背に腹は代えられぬ、歩き出してしまったからには後戻り出来ないと言うもの。とりあえず下まで行ってみるかと歩みを進めると、何やらなにかを求めて列を成す人々の影!やったあこれは間違いなく物販だとバンギャまっしぐら、最後尾を示すパネルを持った係員のお兄さんの派手なブルゾンの背中に飛び付かんばかりに駆け出す我々が見たものは…………

お兄さんが手にしたパネルに書かれた、「福山○治ライブグッズ物販最後尾」 の文字でした。

(パシフィコ横浜には音楽ホールや展示会場が大小数ヶ所あるので、うっかり間違えるとお目当ての演者のものではない催しの会場に迷い込んでしまうぞ!気をつけよう☆)

「開演まであと一時間・・・・・・この時間じゃお茶も出来ないし、自販機すら見当たらない・・・・・・」

「あれ?今横をどう見ても福○雅治ファンには見えないバンT姿の女子が」

「なぬっ!?」

慌てて彼女の後を追うと、先程まで閉鎖中の看板が出ていた建物の脇から延びる階段に。どうやら下へ延びているのだけれど、どう考えても行く先、海。

しかし横を次々とやたらファッショナブルな女子達やゴスロリのお嬢さんが通り過ぎる。背に腹は以下略なので恐る恐る階段を降りてみるものの、行けども行けども、その先、海。横浜の美しい海。なんかヨーロッパ風の船着き場みたいな小屋までご丁寧に佇んでおり、洋風の竜宮城を彷彿とさせるよう。

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気がつけば我々の足元にはファニーなヤドカリの係員が。

物販と入場口はこちらでえす。

「えっ、でも海の中ですよ?僕達息出来ます?」

ご心配なく、皆様も“海月”ですので――――。

。〇。〇。〇。ゆゅゆゅゆゅゆゅゆゅ。〇。〇。〇

導かれた真っ青な舞台は言わずもがな素敵な世界で、物販も無事購入出来たしファンリクエストによるセトリもアッパーとダウナーのバランスが良く抜群。

特に第一位に選ばれた『エンゼルフィッシュ』なんか緞帳に映る魚影の美しさと相まって有村さんが乙姫様にしか見えなかったしいつにも増してプラらしい趣向に溢れた素晴らしい年末公演だったのだけれど、あれからひと月以上経った今でもあの日着て行った一張羅のアルゴンキンから潮の匂いが消える気配がないので、正直またいつものTDCホールに戻ってきてほしいな~と思っています。


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(竜宮城産のタピオカも問題なくもちもちでした)

《完》

かねてより構想しておりました本やZINEの制作、そして日々のおやつ代などに活かしたいと思います。ライターとしてのお仕事の依頼などもTwitterのDMより頂けますと、光の魔法であなたを照らします。 →https://twitter.com/igaigausagi