3年前の君に捧ぐ
今の彼女と付き合う2ヶ月前のこと。3年間引きずり続けた元カノから突然連絡が来た。
仕事が終わり家に着き、ふとスマホを確認すると見覚えのある名前からの着信。
「えっ」と思わず声が出た。彼女は相変わらず「電話してもいい?」の断りがない。
心臓の高鳴りを感じながら、恐る恐るかけ直す。
「もしもし?」
「あ、もしもし」
「え、どうしたの急にかけてきて。なんかあった?」
「ううん、別に。てかよかった。無視されるかと思った」
無視するわけがない。僕は君のことを3年間も待ち続けていたのだから。
それから数十分、3年間のことを話し合った。僕の仕事の話、彼女の仕事の話、それから、彼女の今カレの話。
「遠距離になっちゃって。あんまり上手くいってないんだ」
「戻ってきなよ」
間髪入れず、何の躊躇もなく口にしていた。恥ずかしげもなく、モゴモゴすることもなく。
「…受け入れてくれるの?」
「もちろん。結婚しよう」
「でたー(笑) ダメだよ冗談で言ったら」
「冗談じゃないよ」
「はいはい」
僕の意を決して発した「結婚しよう」は、どうやら逆効果だったようだ。
「そういえばあれ、たまに読んでるよ、何だっけ『クソ…イグアナ男』?」
君だけには読まれたくなかった。だって僕の恋愛のエッセイには、たくさん君が登場しているから。
「あ…うん、ありがとう」
「すごいね、あんなにエッセイ書けて」
「君のおかげだよ」
「…どういうこと?」
それから僕は伝えた。君の生き方全てが尊敬の対象で、何事にも臆することなく挑戦する姿に憧れていたことを。
そして、そんな君に少しでも近づきたくて、僕にも誇れる何かが欲しくてnoteを始めたことを。
彼女は僕の話を笑って聞いてくれた。
「なんか普通に喋れてよかった。彼氏の話とかしちゃってごめんね」
「ううん。全然」
「ありがとう。じゃあ、またね」
「うん、じゃあ」
結局彼女は、僕の元には帰ってこなかった。きっと僕に連絡してきたのはただの気の迷いで、僕は彼女が戻ってこなくてよかったと心底思った。
たった一本の電話が、全てを終わらせてくれた気がした。
ありがとう。僕に恋の辛さを教えてくれて。ありがとう。僕を君から解放してくれて。ありがとう。僕と出会ってくれて。
僕はようやく心から君の幸せを願えるようになりました。
もう二度と連絡してこないでね。
さようなら。
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