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躁うつ時代を乗り越える創作術16 -生きづらさを"ありのまま"表現するコツ-

躁うつ体質の方の中には、うつ状態になると極度の無気力に陥り、何もする気力が湧かない人も少なくありません。そうした無気力の中で、創作などの表現活動を日課として続けていくのは並大抵のことではありません。

平常時には創作を楽しめていたとしても、うつ状態では好きなことへの関心さえ持ちづらくなります。身体の些細な動作でさえ億劫に感じるのがうつの症状です。本当に億劫になります。
そのような極端な無気力状態からいきなり創作活動を日課にするのは現実的ではないでしょう。

しかし、めげずに地道に取り組み続ければ、創作活動が日課となり、うつ状態の内面の嵐を和らげる一助となります。しかし、無気力な状態からでも創作の習慣を身につけるには、何らかの工夫が欠かせません。

では、具体的な工夫の例をいくつか挙げましょう。

負荷を最小限に抑え、ものすごい低いハードルから始める。

例えば、最初は5分でも構わないので、とにかく毎日少しずつ制作に触れましょう。たとえ5分でも、それは立派な創作の時間だと肯定的に捉えましょう。
とにかくハードルは低く設定することが大事です。ハードルは低ければ低い方がいいです。そして、少しでも創作ができたら、自分を褒めてあげましょう。

自分なりのリマインド方法で継続を心がける。

例えば、机の上に画材置いておく、すぐ手に取れる場所に執筆用のノートを置いておくなど、すぐに創作の姿勢になれるようにしておきましょう。これは、誰でもできる継続のコツです。画材を毎日、丁寧に片付けてしまうと、どんなに真面目な人でも取り出すのが面倒くさくなってしまいます。片付けは丁寧に、ですが、できるだけ素早く創作できるようにしておきましょう。

創作を応援してくれる理解者の存在を見つける。

家族や友人に協力を仰ぎ、創作について、励ましてもらいましょう。簡単なのは、SNSを使う方法です。創作の成果をSNSで共有し、仲間からフィードバックをもらいましょう。

小さなステップを設定し、達成した時の自己肯定感を大切にする。

最初の目標は5分。できたら次は10分、というように少しずつ習慣化を図りましょう。例えば絵を描くときは、未完成でもいいですし、文章も書きかけのままでいいのです。そして、制作途中のものでも、どんどんSNSにアップし、人の目に触れさせましょう。
「今日も完成できなかった・・・」と自己嫌悪に陥る必要はありません。

他の日課と組み合わせて定着させる。

毎朝の掃除や食事の後に、決まった創作の時間を設けましょう。僕の場合は、朝食を食べて、アルバイトに行く前の、15分間で、パステル画を描きました。それをとにかく「日課」として自分の頭と体に叩き込みました。
例えば他の家事→創作という流れにするなら、その流れを体に染み込ませましょう。

一朝一夕に習慣化するのは難しいかもしれません。それでも、諦めずにコツコツ続ければ、いつか創作が日課の一部として定着します。

こうした地味な積み重ねによって創作活動が日課として根付いたとき、それ自体が大きな自己実現となり「前を向く原動力」=「生きる力」に変化するでしょう。つらい症状でも、それを受け止めて、少しでも前進できた充実感は、うつ状態でボロボロになったプライドの向上にもつながります。

また、うつ状態でも、創作による自己表現の機会が確保されれば、内なる思いを吐露する出口が保たれます。それは、どこまでも尊い行為です。
鬱屈とした気持ちを創作で発散できれば、心の重荷が少しずつ軽くなっていくはずです。鬱屈した気持ちのままでは、自罰的、もしくは他罰的になってしまいます。それはもっとも忌避すべきことです。
まずは、その鬱屈した気持ちを、創作物で昇華させましょう。

着実に一歩ずつ努力を重ねることで、徐々に前を向く心境を手に入れられるでしょう。創作は地味な作業の積み重ねですが、その積み重ねこそがあなたの「生きる力」を沸き立たせる尊い営みなのです。

創作の習慣化に向けた様々な工夫の真の意義は、そこにあると言えるでしょう。

苦しみを"ありのまま"表現する意義

創作において、苦しみや辛い体験を飾らずにありのまま表現することは非常に重要です。

そうすることで初めて、作品に命が吹き込まれ、「圧倒的な説得力」が宿ります。

例えば、自伝的要素の濃い文学作品は、作者の生々しい体験が投影されているからこそ、読者の心に深く迫る力を持っていますし、感情を美化せず、ためらいなく真実を描くことで生まれるリアリティこそが、人の心を揺さぶる秘訣なのです。

ヘミングウェイはこんな言葉を残しています。

事実を事実のまま
完全に再現することは
いかに
おもしろおかしい 架空の
物語を生みだすよりも
はるかに困難である ---

アーネスト・ヘミングウェイ

絵画表現でも同様に、画家自身の内面がむき出しに投影された作品ほど、強い訴求力を放ちます。言葉を超越した感情の表出は、鑑賞者の魂に直接語りかけるのです。

つまり、苦しみの本質を隠さず、ありのままに表現できた作品ほど、創作者の魂が息づいており、人々を強く惹きつけずにはおきません。リアルな苦悩を余すところなく注ぎ込めば込むほど、実りに満ちた作品が生まれるのです。

そして、ヘミングウェイが言うように、それは、架空の物語を生み出すよりも、はるかに難しいことなのです。

そうしてできた作品を、僕は「詩」と呼びます。
ここでいう「詩」とは、必ずしも韻文の形式を取ったものだけを指すのではありません。むしろ、心の奥底から湧き上がる感情を、ありのままの言葉で表現したものすべてを「詩」と呼ぶのです。
そうした苦悩のまま紡がれた「詩」は、他者に「生きる力」を与えてくれます。

僕は主に文章とパステル画を「創作物」にしていますが、文章は内面を、パステル画は自然を、描写しています。
ですが、それは"たまたま"そうなったというだけで、自分に表現したいことがあれば、どの表現方法を選ぶかは自由です。

だから、とにかくミーハーに、手を出しまくってみましょう。
ミーハーというとネガティブな印象があるかもしれませんが、とにかく「量」をこなすことでしか、自分がやりたい表現は見つかりません。他人がとやかく言おうが
とにかくいろいろなことに挑戦してみましょう。
「量」をこなすことでしか、「質」は生まれないのです。

つまり、なんだっていいのです。

日記や自由連想で思いつくままに書き記す、抽象画でイメージを描き出す、自伝的小説で体験を再現する。言葉でも絵でも、あるいは物語の形でも、自分に合った方法で構いません。表現手段は何でも良いのです。肝心なのは、内面と真摯に向き合い、飾らずに吐露する姿勢なのです。

それを見せつけましょう。

表現の過程で、私たちは自らの深層にある真実と向き合います。無意識に押し込めてきた感情を掘り起こし、表出させ、整理する。それは時に、新たな気づきや洞察をもたらしてくれるでしょう。

自身の体験を赤裸々に綴った作品は、同じ苦しみを抱える人々に深い共感を呼び起こします。自分だけが特別なのではないと知ることで、孤独感から解放されるのです。共感は新たなつながりを生み、人と人を結びつける絆となります。

それこそが、僕のいう「詩」なのです。「詩」の様式は必要ありません。そもそも「言葉」である必要はありません。
自分の内面と真摯に向き合い、感情を余すことなく表現する。そうして生まれた言葉は、創作物は、同じ苦しみを抱える誰かの心に響くはずです。

加えて、創作行為には、心の重荷を一時的に下ろす効果もあります。内なる叫びを作品に昇華させる体験は、浄化のプロセスでもあるのです。そして、この過程で新たな人生観や価値観が芽生えることもあるでしょう。苦悩は、創作を通じてプラスの力へと変容を遂げるのです。

人生の辛い体験をありのままに表現する行為は、自らを浄化し「生きる力」の源泉となります。言葉や色彩に感情を乗せることで、悲しみから徐々に解き放たれ、内なる力が目覚めていく。創作とは、まさに魂の再生を助ける媒体なのかもしれません。

表現がもたらす共感の力は、僕たちの中の本来の「人間性」を呼び覚まします。孤独から解放され、新たな自信を手にするきっかけとなるはずです。苦難を糧として意味づけ、乗り越える原動力を見出す。そんな個人的な再生のドラマを、創作は静かに後押ししてくれるのです。

辛く苦しい体験を一度、深いところで受け止め、言葉や形に変換していく。そのプロセスを乗り越える先に、再び力強く生きる活力が待っているのかもしれません。まるでリセットするかのように、新しい心持ちでまた一歩を踏み出せる。そんな再出発の勇気を、創作の行為は与えてくれるのです。

人生の荒波を生き抜く強さを、表現者は自らの内側から引き出していきます。創作とは、自己を見つめ直し、魂を再生させる崇高な儀式といえます。

その先にある、生きる喜びと充実感。僕たちは創作という営みを通じ、人間的な成長を遂げられるのかもしれません。だからこそ、苦難に直面した時こそ、ためらわずに自分を作品に投影する。とにかく一心不乱な姿勢が、やがて「生きる力」となって報われるのです。

創作は、あなたが経験した苦難や悲しみを、かけがえのない表現として結実させてくれるでしょう。どんなに傷ついた心も、創作という営みの中でゆっくりと癒されていきます。

だからこそ、自分の苦しみから目を背けずに、真摯に向き合ってください。

その苦しみを"ありのまま"表現する。
その創作のプロセスこそが、新しい人生への第一歩となるのです。


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5月19日に開催される文学フリマ東京にも出展します。会場で僕の本を手に取っていただけると嬉しいです。

🕙5/19(日) 12:00〜17:00開催
📍東京流通センター 第一展示場・第二展示場
📘文学フリマとは?→https://bunfree.net/attend/
📕イベント詳細→https://bunfree.net/event/tokyo38/


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