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短歌見聞録

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記事一覧

短歌見聞録 #8

短歌見聞録 #8

おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃって生きてたらはちゃめちゃに光ってる夏の海
/青松輝(ネットプリント「第三滑走路 8号」)



現代短歌の象徴ともいえるこの歌。歌人界で賛否両論の激論が起こったのも記憶に新しい。私は衝撃を受けたとともに、短歌の可能性を目に見えて押し広げた歌として後世に残ると確信した。私は大好きです。



韻律のスピード感は言わずもがだが、読み手の感情、歌い手の感情で5・

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川柳見聞録 #番外編2

川柳見聞録 #番外編2

先方が欲しがる星の扇風機
/橋爪志保「ドラムロールの肖像画」(ネットプリント)



短歌見聞録の番外編で川柳を読む、というアレの2回目。番外編がシリーズ化しつつあるのがなんとも計画性の無さが露呈してしまっている。最終的にはPCエンジンくらいラインナップがごちゃごちゃになりそう。



韻踏みがあまりに心地よくて笑ってしまう。内容はよくわからないけど、それでも全然いい。リズムだけで句としてすご

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川柳見聞録 #番外編

川柳見聞録 #番外編

待ち人は来ずお前だけ来た
/スズキ皐月「おすそ分けの日」(ネットプリント『レンタサイクル』)



短歌見聞録の番外編ということで今回は川柳。

「待ち人来ず」というのはおみくじの代名詞だけど、それは「待ち人は来ないでしょうね」という神のお告げというか、神さん側の予想みたいなものである。

が、「待ち人は来ず」と言っているから、これは「待ち人は来なかった」という当人の断定になるので、おみくじ構文

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短歌見聞録 #7

短歌見聞録 #7

ダイイングメッセージを書く練習をさぼってる 後悔するのかも
/森 慎太郎「シャッフル・ボイス」on Twitter
https://twitter.com/Mori_QK/status/1469631127732518917?s=20&t=EZC0eczZ2OW2cmkehhsJ9A



「やらなくてはいけない」ことを「やらないでいる」時、つまりサボってる時というのは、「やらなくてはいけない」

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短歌見聞録 #6

短歌見聞録 #6

海沿いできみと花火を持ちながら生き延び方について話した
/平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』



誰に頼まれるでもなく、ぼくたちは日々を生き延びている。生き方はわからないけれど、なんとか生き延び方を捻り出して次の日を飛び越え、くぐり抜ける。

線香花火を持っていたとすると、直球すぎる解釈かもしれない。パチパチと音を立てて、じわりじわりと終わりへと向かう。先っちょが落ちるまで、線香花火は生き延び

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短歌見聞録 #5

短歌見聞録 #5

そんな中、白いくじらが出現し、歓喜の声を上げる船長
/偶然短歌bot「ウィキペディア日本語版「白いくじら」より」2020.12.17 on Twitter



偶然短歌botとは、Wikipediaの記事から57577を拾い上げて、ひたすらTwitterに流し続けるというアカウントで、私は結構好きでよく見ている。徹底して57577を拾い上げることで、定型の良さを味わうこともできるし、断片的な言

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短歌見聞録 #4

短歌見聞録 #4

夢に出てきた団地にはヤシの木が生えていて白いガードレール
/伊舎堂 仁「海」



団地にヤシの木が生えているという不思議な夢の世界に、暴力的なくらい現実味を帯びた白いガードレールが視界を横切る。現実と非現実が入り乱れ葛藤する夢の世界を、描写で表しているような感じがする。

あと、言葉のリズムが小気味いいというか、口に出して楽しい。特に七七の「生えていて白いガードレール」は、「ガードレール」とい

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短歌見聞録 #3

短歌見聞録 #3

うらさを私へ向方逆が速快だん込り乗くよグンミイタ
/石川真琴「うたの日」2021.6.6秀歌・題『首一でき書横右』



右横書きという古典的な書き方を指定する題に対して、「でもやっぱり逆に読んじゃうよね」という現代人の素直な感覚を突く。

階段を駆け上がり、発車メロディを手で制しながら(別にそれで止まりはしないのだけど)、汗を垂らしてパッと乗り込む。
駆け込み乗車にため息をつくようにドアが閉ま

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短歌見聞録 #2

短歌見聞録 #2

今日きみに肯定されたカワイイが全部売ってるマツモトキヨシ
/目白しずか「既発表作品より抜粋12首」(短歌作家がつなぐリレーネプリシリーズNo.13)

たしかに、大体のものは近所のドラッグストアで買うけど、そうじゃない特別なもの、気合い入れて買ったもの、お気に入りのものだってある。それを持って出る。きみと会うときは。でもそれはカワイイとは言ってもらえない

晩ごはんを手抜きして、買ってきた惣菜を出

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短歌見聞録 #1

短歌見聞録 #1

光の方をきみは見ている 蜂と蝶 光の方をきみは見ている/青松輝「hikarino/蜂と蝶」(第三滑走路 11号)

「光の方をきみは見ている」の重さ、明るさ、角度、視点、様々なものが前と後ろですごく変わる
僕を見ていないきみを強く感じて、さみしいような、清々しいような気持ち #第三滑走路

https://twitter.com/3kassoro/status/140355352011718656

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