『パテントトロール―特許マフィアに狙われた日本企業の行方』石橋秀喜

はじめに:特許戦略

経営学を学んだことがある人もない人も、特許の重要性は重々承知されていることであると思う。

今回は、パテントトロールなる企業(組織)についての小説を紹介したい。パテントトロールとは、他社の特許を買い集めて、特許収入で富を成す企業または組織のことである。

異郷から来た女史が何者か知りたい人はこれを読んでくれ。

そして、女史のnoteをどう読むか、こちらを参考にしてくれ。

パテントトロール:現代のビジネスモデル

本小説では、アルダス電機がとある倒産企業を買収するところから話が始まる。被買収企業には魅力的な特許がいくつかあった。そこで、パテントトロールが登場する。パテントトロールは、あの手この手で特許からの権益を搾り取ろうとする。

アルダス電機は、パテントトロールから奪われたパテントを、ライセンス料を払って利用するか否かの選択を迫られ、苦渋の決断をしてライセンス契約を結んだところで、パテントトロールの仕組む罠にハマってしまう。

産業スパイなども登場し、もはや推理小説並みの面白さで進んでいく小説である。

おわりに:特許の意味に立ち返る

本小説を是非特許に興味を持つ導入本として読んでみて欲しい。特許とは、価値あるイノベーションを世間に公開するインセンティブを技術の保有者に与え、より社会の発展を図るというのが本来の目的である。

しかし、実際は、パテントトロールなる企業や組織が世界中に蔓延し、特許を食い物にして牛耳っているのである。彼らがやっていることは、違法ではない。彼らのほとんどは弁理士集団を抱え持っていて、法の抜け穴を徹底的に洗い出している。

とはいえ、パテントトロールの近年の暴挙を見ていると、特許に関する法律を各国で見直す時が来ているように感じる。





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