入間さん

名古屋市でぼんやりとしています。読書が好きです。日々の雑記です。

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最近の記事

考えることについて考えるときに僕が考えること

信仰とは自由になるもの 今日の説教はガラテヤ書からであった。なかなか興味深い内容だったので備忘録として。 ただ読み違えると大変なことになりかねない箇所だとも思った。 また私がパウロ書簡の中で大きく頷きまくった箇所は他にここ。 自由であることはとても難しい。 大学の講義で聞き齧ったカントの話を思い出す。欲望のまま生きることは欲望の奴隷であり自由ではない、とかなんとか。 いにしえのふみ 古文の勉強を開始する。用言の活用をまず暗記せねばならぬ。 国語は現代文なら試し解いてみ

    • <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十一回

      Chapter 10 エレベータへ向かうべきか、守衛室へ向かうべきか迷った。喧しく鳴り続けるサイレンが思考を乱す。俺はエレベータへ走った。呼び出しボタンを何度も叩く。  「火災が発生しました。安全のため、エレベータは使用できません。係員の指示に従い、最寄りの非常階段から落ち着いて避難してください」  取り付く島もないアナウンスがボタンの脇に開けられた網目のスピーカーから流れるだけだった。続いていくつかの言語で同じ内容がアナウンスされる。  なんの役にも立たない。糞。  俺はス

      • 春は匂い付き消しゴムの香り

        肉体派内気気質 週二回ほどジムに通い黙々とミットを打つ。この際の擬音語はモスッモスッ。ただし体力が足らずに最初のアップでバテバテになる。ミット打ちも手足がとても重くヘロヘロ。きちんと打てるようにするためにはまず体力作りが急務である。 これまでスポーツをする場面では元来の運動神経の無さを体格と勢いで乗り切ってきたが体力がここまで落ちるとただの木偶の坊である。ジムに行った日は翌日まで体が軋む。 スパーリングに参加することを目標にモスッモスッ。 春は匂い付き消しゴムの香り 通

        • <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十回

          Chapter 9 1時間ほど体と脳の連携を切るだけで、荷揚げ仕事3日分の金になる。スイッチの切り方は、他人の好意とその裏側にありがちな優越感に頼って生きる中で自然と身についたことだ。福祉制度が与えるものは必要最低限度をギリギリ下回るものだけで、足りない分は自力で補うしかない。  まず他人が自分に向ける目線を読み取ることを覚えた。  海辺の街の保護シェルターから児童施設へ送られた。  乳児院から出たばかりの赤ん坊から18歳までが一緒に生活していた。  通学に自前のバスを走らせ

        考えることについて考えるときに僕が考えること

        マガジン

        • 〈小説〉ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム
          11本

        記事

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第九回

          Chapter 8 少しだけ開いた窓の隙間から破裂する花火の音が聞こえた。 「猫、みつかった?」  俺はルームミラーごしに話しかけた。小夏は手元のゲーム機に向けていた顔をちらりと前に向けた。 「安藤と話してたよね。猫が飼いたいって。トイレ砂まで買い込んできてさ」 「まだ見つけてない」 「今の季節なら、事務所の目の前の公園にたくさんいるよ。子猫が生まれる頃だし」 「干乾びてるのなら何匹か見たけど」  暗がりで表情は見えない。すれ違う対向車のライトに照らされた時はもう手元に顔を向

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第九回

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第八回

          Chapter 7 ビニール紐が食い込んで指先はほとんど紫になっている。近所のスーパーまで紙の束を両手にぶら下げて歩いた。  陽は頭の真上にあった。どう歩いても焦げる。たった数分で鼻や頬がひりひりとしてくる。少しでも焦げる面積を減らすために顔を下に向けると今度は後頭部や延髄が焦げる。田中のキャップを借りてきたほうがよかった。  全てが紫ががって見えた。  紫ががった意識で最短距離を進むために路地を縫う。建物の頭ごしにツインタワーがどこからでも見えた。  斜めに走る古い道の痕跡

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第八回

          あまりにも春

          concertâ de mode 日曜日の朝にコンサータを飲み忘れそのまま一日過ごす。意識がぼんやりしたまま食欲だけが暴走し昼食を二回摂る。 その後妻の家に行く。歩いている時に物音やすれ違う人に意識が向いてしまう。意識をフォーカスすることができない。すべての情報が並列処理されるように感じる。 結果、脳味噌がオーバーフローしてとてもぼんやりする。 この状態で30年くらい生きていたと思うとハードモードだった。コンサータを飲むようになって楽になったのだと再認識する。 ディレクショ

          あまりにも春

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第七回

          Chapter 6 その夜は爆弾も花火に紛れて爆発していた。  花火も爆弾も基本構造は同じだ。殻の中に爆薬を詰めて点火して、中に詰めた金属片が赤や緑に燃えながら飛び散って観衆を楽しませるのが花火で、殻の破片や釘やベアリング玉など思い思いの詰め物で周辺の人間を吹き飛ばすのが爆弾だ。  爆弾魔は暇を持て余した16歳の少年で、爆弾は地味なものだった。そいつは人気のない雑居ビルの屋上で爆発させたからけが人も建物への被害もなし。  事務所からそう遠くはなかった。俺もケーキを食いながらそ

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第七回

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第六回

          Chapter 5 ケーキ屋で並んでいた間も地上の花火と歓声は聞こえていた。梨のタルト、チーズケーキ、オレンジピールを添えたショコラ、ベイクドプリンを手早く選んで会計を済ませる。甘いものは別腹だ。  ケーキの箱を下げて地上に出ると人通りはさらに増えていた。車道へはみ出る群れも多く、クラクションがひっきりなしになっている。線路の下を潜る地下道に入る。雑踏をかわして地下道へ入る。ここはいつも古い公営住宅の匂いがする。ドブを消毒したような匂いだ。頭上からひっきりなしに電車の振動が聞

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第六回

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第五回

          Chapter 4 ボスの車で行きつけの洋食屋へ連れていかれた。運転はいかつい短髪にシルバーフレームの眼鏡の男だ。ボスの家の玄関を出るともう目の前に車が待機していた。中心街の裏手の路地にある店の前で俺たちを降ろすと、そのままどこかへ去っていった。近くの路上でまた待機しているのだろう。  案内された席につくとメニューとワインリストを持ったソムリエの男がやってきて、ボスは彼と相談しながら注文を決めた。ボスは俺に飯やワインについて教えようとするが 俺はそこまで熱心になれない。ボスの

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第五回

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第四回

          Chapter 3「資本と人間との関係、あるいは愛、これこそが僕にとって探求すべき命題だ」  陽が大分傾いてはいるがいつもカーテンが降りていて薄暗い。白と黒を基本に揃えられらた家具。ボスの部屋はいつもモデルルームや家具屋みたいだ。  ボスとローテーブルを挟みソファに対面に座っている。ボスはいつもスーツを着ているがビジネススーツではない。シルクのつるっとしたジャケットにディオールのドレスシャツ、カフスボタンには小ぶりな翡翠がはめ込まれている。  壁にスピーカーが埋め込まれたスピ

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第四回

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第三回

          Chapter 2 この街は総合的だ。  世界有数の企業が管理する工場群、そしてオフィス街。リニア鉄道が走り、国際空港や大規模な湾口もある。ホワイトカラーも汗にまみれたブルーカラーも汚職役人もサイコパスもホームレスも売春婦までなんでも。  そして土地は大部分が埋立地だ。  夕方から夜に騒ぐ鳥たちは、この街が海に沈みつつあることを知っているのだろう。街のどこにいても海水が染み込んだアスファルトの生臭さが湿り気と一緒になってまとわりつく。  沈下気味な地盤に反して地価上昇率は国内

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第三回

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第二回

          Chapter 1 こんな日に外で働いている人間は静脈に冷却剤を点滴しているとしか思えない。実際に冷たいのを入れているやつもいただろう。  陽は傾きかけているが、気温は下がらない。真っ黒に灼けた、というか焦げた肌の労働者達が、何の表情も見せずに立ち働いていた。その肌はもともと様々な色だったのだろうが一様にどす黒い。  それぞれの仕事の制服を着て飛行機を誘導し、荷物を運ぶ。なにをしているのか分からない連中もこんな暑い日に外で動き回るからには多分何かの理由があるのだろう。連中

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第二回

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第一回

          Chapter 0 ひたすらに暑い夏で、最後は海に辿り着いた。  俺と女はそれぞれの理由で逃亡者だった。下手な映画の結末みたいだ。  しかし世界中のどの場所でも逃亡者が逃げ続けていれば最後は海へ行き着くのだから仕方ない。  その夏が始まるまで海になんて行くようなライフスタイルじゃなかった。年中通して街の、それもビルの地下とかそういうところで過ごしていた。  海なんか実在するのか?セットで作られたものばかりだとヤケクソだかやっかみ半分で信じていた。  青い空と、白く波が浮かぶ

          <小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第一回

          素敵な生活

          贅沢 デスクとチェアを自宅に導入。QOLが上昇する。組み立てに一時間くらいかかったのも許せる。 NHKオンデマンドのクラシックコンサートをずっと流している。オーケストラが好き。世界でトップクラスの演奏家達を何十人も束ねた音楽というのはとても贅沢なものだ。クラシック音楽に特別詳しいわけではないがこの贅沢は理解できる。 ところでクラシックと呼ばれる音楽は古典楽曲を演奏することが多いのだけど、現行の作曲家の作品も百年後にクラシックと呼ばれるものをあるのだろうか?きっとあると思う。よ

          素敵な生活

          無縁墓を求めて〜名古屋の霊園とお弔いワンダーランド〜

          以前、名古屋市の引取者のいない死者の遺灰の慰霊碑(霊灰碑)の場所を割り出した記事を書いたが、今回は実際に行って答え合わせをしてきた。 同じように霊灰碑への行き方を知りたい人のために記録しておく。まあ八事霊園に電話すれば教えてくれると思うが。 なお収骨の際に拾いきれなかった骨もまとめて供養されているので必ずしも無縁墓というわけではない。 場所はここ 八事霊園の火葬場のすぐ裏側にある。 徒歩の場合のルートを記す。 最寄り駅名古屋市営地下鉄名城線八事駅 六番出口から徒歩20

          無縁墓を求めて〜名古屋の霊園とお弔いワンダーランド〜