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〈小説〉ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム

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少女売春組織の中間管理職である鈴木が仕事中に遭遇した爆弾テロをきっかけに政治的陰謀に巻き込まれていく。名古屋によく似た街を舞台にした冒険小説。 全25回前後を予定
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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第二十回 夏祭り実行委員会

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第二十回 夏祭り実行委員会

Chapter 19 夏祭り実行委員会 井上と入れ違いにサングラスが俺の横に立った。俺をここに連れてきてからずっと他のテーブルにいたのだ。こいつはサングラスをつけたまま何を食ったのだ?
「ホテルに戻るぞ」
 サングラスが言った。ここからなら歩いても帰れる距離だがそうはさせないのだろう。大人しく席から立ち上がりサングラスのあとについて行く。店内の客から盗み見るような視線を感じた。
 ツインタワー東側

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十九回 クーデター計画とウィンク

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十九回 クーデター計画とウィンク

Chapter 18 クーデター計画とウィンク「単刀直入に言うとですね、まずは鈴木さんの会社の業務記録や顧客名簿ですね」
 どちらもボスに指示された通り確保してある。業務記録とはよく言ったものだ。顧客が未成年者と倒錯的なセックスに耽る様子の隠し撮りだ。活用すれば俺もそれなりの金にできるだけのネタだ。しかしそんなことをしたらすぐに行方不明になるのはわかっている。
「そして小夏ちゃんの身柄ですよ」

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十八回 人道的な配慮

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十八回 人道的な配慮

Chapter 17 人道的な配慮 車は空港から出るとそのまま海岸沿いの道を走った。花火見物客の路上駐車が多く蛇行して進む。
 女の運転は荒かった。殺されかけたばかりなのだから仕方ないだろう。まだ肩を上下させている。
 俺だってそうだ。動悸は止まなかったし、現実感が戻ってこない。
 しばらく進むうちに感覚だけは少しずつ戻ってきた。
「もし動けるなら座席についてシートベルトを締めて下さい」
 耳鳴り

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十七回 閃光、鈍痛、失禁

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十七回 閃光、鈍痛、失禁

Chapter 16 閃光、失禁、鈍痛 職員用駐車場に停まっている車は少なかった。
 ビルの陰から黒いワゴン車が出てきてこちらへ曲がってくる。運転席に田中の顔が見えた。田中は俺を見るとにかっと笑った。右の頬からこめかみににかけて大きなガーゼが当ててある。腕は包帯だらけだ。
減速していたとはいえ走っている車から飛び降りてその程度で済んだなら本当にタフなやつだ。
 田中はワゴンを俺たちの脇にゆっくりと

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十六回 空港の特別ラウンジ

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十六回 空港の特別ラウンジ

Chapter 15 空港の特別ラウンジ 壁にはイルカの絵がかかっていた。ジェットの排気音が申し訳程度に開いた曇りガラスの小窓から聞こえた。
 予約した便はとっくに出発していた。ぎりぎりで押さえた最後の1席だった。その席はキャンセル待ちの誰かを乗せて飛んで行った。
 素っ気ない長机を囲んで椅子が4つ置いてあって、壁の一面は鏡張りだ。マジックミラーだろう。まるで警察の取調べ室だ。それなのにイルカの絵

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十五回 ドライブ・マイ・カー

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十五回 ドライブ・マイ・カー

Chapter 14 ドライブ・マイ・カー  諦めて家へ帰ることにした。
 不動産屋に言われるまま家具と家電もセットで契約して家賃と一緒に割賦を払っている。おかげで冷蔵庫も洗濯機もテレビもまとめて最新のものが揃った。その割賦を払い終えるまでもなく逃げることになった。やたらと笑顔の爽やかな不動産屋の店員を思うと心苦しい。
 ナビの画面をテレビに切り替えた。
 ニュースは接近している台風の情報を伝える

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十四回 蝉、逃げ遅れたあと

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十四回 蝉、逃げ遅れたあと

Chapter 13 蝉、逃げ遅れたあと 業務は停止していた。
 児童福祉局が入ってきたわけじゃない。とにかくそれどころじゃなくなった。
 杉浦に呼び出される前日、つまり事件の翌日にはボスは雲隠れをしていた。
 会った時はいつものようにボスの自室で葉巻を吸いながらだった。
 番犬みたいな運転手ががさごそと荷造りをしていて落ち着かなかった。
「どこへ行くんですか?」
 一通り話が終わって俺は尋ねた。

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十三回 気分はもう暴動

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十三回 気分はもう暴動

Chapter 12 気分はもう暴動 爆発音が聞こえた。壁が震えたような気がした。店内のやかましさが一瞬で静まる。
 事件以来、各地の花火大会は異常な盛り上がりだ。花火大会がピークの時季だった。   
 事件の翌日に予定されていたとある地方の花火大会では、主催者が陽も落ちていよいよというタイミングで自粛を発表して、詰めかけた群衆はそのまま暴徒になった。それ以来、各地で連日花火大会が続いた。
 静ま

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十二回 イエロージャーナリスト

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十二回 イエロージャーナリスト

Chapter 11 イエロージャーナリスト 典型的なトバシ記事だ。そして記者は作家志望なのか筆が滑りまくっているのがわかる上司か校正係は添削をしてやってくれ。読みながらそう思った。
 しかし内容はどのメディアよりも正確だった。夕刊ゲンザイから目を上げた。
 本誌記者が目の前にいる。Sこと杉浦だ。半端な長髪を掻き分けるのが癖だ。全体的に汗か脂でツヤツヤとしている。俺を安酒場へ呼びつけてひっきりなし

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十一回 踊り場でダンスを

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十一回 踊り場でダンスを

Chapter 10 踊り場でダンスを エレベータへ向かうべきか、守衛室へ向かうべきか迷った。喧しく鳴り続けるサイレンが思考を乱す。俺はエレベータへ走った。呼び出しボタンを何度も叩く。
 「火災が発生しました。安全のため、エレベータは使用できません。係員の指示に従い、最寄りの非常階段から落ち着いて避難してください」
 取り付く島もないアナウンスがボタンの脇に開けられた網目のスピーカーから流れるだけ

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十回 炸裂

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第十回 炸裂

Chapter 9 炸裂 1時間ほど体と脳の連携を切るだけで、荷揚げ仕事3日分の金になる。スイッチの切り方は、他人の好意とその裏側にありがちな優越感に頼って生きる中で自然と身についたことだ。福祉制度が与えるものは必要最低限度をギリギリ下回るものだけで、足りない分は自力で補うしかない。
 まず他人が自分に向ける目線を読み取ることを覚えた。
 海辺の街の保護シェルターから児童施設へ送られた。
 乳児院

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第九回 デリバリードライバーの長い夜

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第九回 デリバリードライバーの長い夜

Chapter 8 デリバリードライバーの長い夜 少しだけ開いた窓の隙間から破裂する花火の音が聞こえた。
「猫、みつかった?」
 俺はルームミラーごしに話しかけた。小夏は手元のゲーム機に向けていた顔をちらりと前に向けた。
「安藤と話してたよね。猫が飼いたいって。トイレ砂まで買い込んできてさ」
「まだ見つけてない」
「今の季節なら、事務所の目の前の公園にたくさんいるよ。子猫が生まれる頃だし」
「干乾

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第八回 白昼夢の見方

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第八回 白昼夢の見方

Chapter 7 白昼夢の見方 ビニール紐が食い込んで指先はほとんど紫になっている。近所のスーパーまで紙の束を両手にぶら下げて歩いた。
 陽は頭の真上にあった。どう歩いても焦げる。たった数分で鼻や頬がひりひりとしてくる。少しでも焦げる面積を減らすために顔を下に向けると今度は後頭部や延髄が焦げる。田中のキャップを借りてきたほうがよかった。
 全てが紫ががって見えた。
 紫ががった意識で最短距離を進

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<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第七回 テロリスト・ワナビーと老婆

<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第七回 テロリスト・ワナビーと老婆

Chapter 6 テロリスト・ワナビーと老婆 その夜は爆弾も花火に紛れて爆発していた。
 花火も爆弾も基本構造は同じだ。殻の中に爆薬を詰めて点火して、中に詰めた金属片が赤や緑に燃えながら飛び散って観衆を楽しませるのが花火で、殻の破片や釘やベアリング玉など思い思いの詰め物で周辺の人間を吹き飛ばすのが爆弾だ。
 爆弾魔は暇を持て余した16歳の少年で、爆弾は地味なものだった。そいつは人気のない雑居ビル

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