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rakugaki_74「美術館へ行こう!【兵庫編】兵庫県立美術館(後編)」


兵庫県立美術館

私の現存する記録の中で、現在まで「兵庫県立美術館(前身である兵庫県立近代美術館含む)」の企画展に出かけたのは10回です。
これは今まで鑑賞してきた「兵庫県立美術館(前身である兵庫県立近代美術館)」の感想ブログ(後編)となります。


6)2016年7/16-9/22「生誕130年記念 藤田嗣治展 東と西を結ぶ絵画」

生誕130年記念 藤田嗣治展 東と西を結ぶ絵画

今年は台風が多いですよね。
何でもまたこのシルバーウィークに台風が近づいているとか。
台風が来られる前にと、美術鑑賞に出かけました。
この美術展は、7月3日まで名古屋市美術館で開催していたものが巡回して来たものです。
兵庫県立美術館です。

本展は、お河童頭に丸眼鏡で有名な藤田嗣治の生涯と画業をたどる展覧会です。
27歳で初めてフランスに渡って以来、81年の生涯の半分近くを、フランスを中心とする異国で送った藤田の芸術は、まさに東と西の文化の上に誕生したものです。
しかし、藤田自身は、二つの文化に引き裂かれる苦しみを味わいます。
エコール・ド・パリの寵児として大成功を収めた後も繰り返される毀誉褒貶。
戦中に描いた戦争画を巡る責任論。
その結果としての、1949年の離日、フランス帰化、そしてカトリック入信という生涯は、芸術と人生の間にある、ぬきさしならぬ関係を示唆します。
本展は、画家の没後長らく遺族のもとに保管され、フランス、ランス市に寄贈された800余点の中から選ばれた作品と、国内外の主要美術館および個人所蔵家からご拝借した作品約120点を展示し、藤田の芸術の新たな解釈と理解を目指したものだそうです。

藤田単体の美術展は2013年9月にBunkamuraザ・ミュージアムで観た「ポーラ美術館コレクションを中心に レオナール・フジタ展」以来です。
私は藤田の絵は、乳白ベースの裸婦と猫のイメージが強かったのですが、この時の美術鑑賞でイメージが変わりました。
藤田の描く子どもたちが、余りにひねてて可愛らしかったからです。
(「つばめと子供」が特に好き!)
ああ、こんな絵も描くんだなと。
今回も同じように、新たな藤田像を垣間見ることができました。

まず初期の絵にびっくり。
東京藝術大学時代、黒田清輝に師事していたらしく物凄く正統派。
そして、絵のテイストが目まぐるしく変わります。
ピカソ風だったり、モディリアーニ風だったり、ゴッホ風だったり、それはもうびっくりするほど絵のタッチが変わります。
この方も自分の絵を手に入れるまで、大変苦労したのだなと感じました。
で、個性的な絵を描かれる方だと思っていたのですが、すっごく写実的な絵が上手な方なんだと分かりました。
ま、皆さんそうなんですけどね。
写実的に描けて当たり前。
そこから先の、その画家にしか表現できないものを見つけるのが如何に難しいことなのか。
また、静かで穏やかな絵を描かれる方だと思っていたのですが、戦争画をリアルな写実画で表現されていて、観ていてとても心が落ち着きませんでした。

今回はいろんな表情を見せる、藤田画伯の絵を鑑賞した感じです。
この美術展では私好みの絵はありませんでしたが、やはりこの方が描かれるひねた子ども像が一番微笑ましいと思いました。
この美術展は9月22日まで開催した後、10月1日より府中市美術館に巡回予定です。


7)2017年10/3-12/3「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち」

大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち

東京からの引っ越し後、2ヶ月以上経つのですが新しい業務に馴染めず、未だに混沌とした毎日を悶々と過ごしています。
そんなスッキリしない気持ちの中、月に1回の楽しみである美術鑑賞に出かけることにしました。
この美術展は森アーツセンターギャラリー、愛知県美術館を経て巡回してきたものです。
今年も残すところ、今日を含めて残り16日間。
どうやらこの美術展が、今年最後の美術鑑賞になりそうです。
兵庫県立美術館です。

「大エルミタージュ美術館展」は今から5年以上前、2012年7月に国立新美術館で鑑賞して以来です。
本展での「大エルミタージュ美術館展」は、ルネサンスからバロック、ロココにいたる16世紀から18世紀にかけての巨匠たち、いわゆるオールドマスターと称される西洋画家の作品群の展示らしいです。
前回は「世紀の顔・西洋絵画の400年」と銘打って、マティスやピカソなど20世紀美術も含んでいたので、今回の美術展は随分時代を絞り込んだようですね。
国・地域ごとの章構成とすることで、それぞれの国・地域の人々がこの時代、どのような絵画を愛したかが見て取れるようになっているのが、今回の「大エルミタージュ美術館展」の見どころなのだそうです。

エルミタージュ美術館が世界有数の大美術館となる基礎を築いた、8世紀後半にロシア帝国を統治した女帝エカテリーナ2世の戴冠式の姿を描いた肖像画から本展はスタートします。
この絵は特別に撮影可だったので、写真をアップしますね。

戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像

それにしても、思っていた以上に人が入っています。
シニアな方が目立ちますか。
目玉作品はないものの、なかなかの傑作揃い。
とはいえ、ちょっと時代を絞りすぎた感が否めませんでした。
5年前に国立新美術館で観た「大エルミタージュ美術館展」の方が、個人的には良かったような。

来週のことを思うとまだモヤモヤ感で気が重くなりますが、絵の鑑賞をしている間は忘れられてちょっとした気分転換になって良かったです。


8)2018年3/24-5/27「小磯良平と吉原治良」

小磯良平と吉原治良

小磯良平という画家を知っていますでしょうか?
私にとっては昔から知っているという意味で一番身近に感じる日本人画家で、過去に何度か美術展にも行ったことがありますし図録も所有しています。
東京美術学校を卒業後渡欧し、アカデミックな西洋美術の正統な継承者をめざし、官展や新制作派協会にて類いまれなデッサン力を駆使した珠玉の人物画を数多く制作・発表し、日本を代表する具象絵画の巨匠として活躍してきました。

一方の吉原治良を私は全く知りませんでした。
家業である製油会社を経営しつつ、ほぼ独学で絵画の技法を習得し、戦前の海外の抽象絵画に影響を受けた前衛的な作品を二科会の九室会で発表、戦後は日本の前衛美術を代表する具体美術協会の主宰者として数多くの抽象絵画を手がけました。

この展覧会は阪神間の生んだこのふたりのモダニストの足跡を、代表作を時代毎に「並置」することで、その対照性と類似性を明らかにしつつ、それぞれの画業を再確認するものだそうです。
土曜日に兵庫県立美術館に出かけてきました。

久し振りにに観る小磯良平のアカデミックな絵と、初めて?観る吉原治良の前衛的な絵。
とても面白い比較でした。
小磯良平に関しては、バレリーナや斉唱している少女の絵が有名なのですが、結構戦争の絵も描かれていたんだなぁと再発見。
一方の吉原治良は、知らなかっただけに新鮮で面白い絵を描かれる画家さんなんだなぁと。
後半は本当に現代アートになっていて、大きな画面に丸が描かれているだけとか(笑)
でも、それが清かったりもします。
自画像の比較もあるのですが、小磯良平はお坊ちゃんぽく、育ちの良い好青年のイメージで、吉原治良はオシャレな優男風で、個性的なイメージでした。

決して楽な時代ではなかった激動の時代の中、描く絵は違えど描き続けてきた二人。
ふと、彼らが歩んできた戦前・戦中・戦後に想いを馳せ美術展を後にしました。


9)2018年4/7-7/1「ジブリの大博覧会 ~ナウシカからマーニーまで~」

ジブリの大博覧会 ~ナウシカからマーニーまで~

兵庫県立美術館で「小磯良平と吉原治良」と同時開催しているこちらの美術展。
美術館に入った時には行列ができていて、観ることなんてとんでもないなと思っていたのですが、「小磯良平と吉原治良」の鑑賞後に覗いて見ると行列が少し緩和されていたので、つい最近亡くなられた高畑勲監督の追悼も兼ねて鑑賞いたしました。

スタジオジブリの映画宣伝で試行錯誤した30年の軌跡に触れられる展覧会。熱い思いを込めた映画がどのようにして世に送り出されたのかを、数えきれないほどの宣伝材料やグッズ、貴重な原画やポスターなどで紹介するものだそうです。

いやこれ、ついさっきまでゆったり鑑賞していた「小磯良平と吉原治良」が懐かしい(笑)
人混み過ぎて満員電車の中を移動する感じ。
まあ、ほぼポスターとグッズ展ですね。
それでも亡くなられた高畑勲監督と宮崎駿監督が写っている写真とか、原稿や原画にはグッとくるものがありました。
ささやかながら追悼コーナーもあり、
当時映画館まで2回も観に行った「おもひでぽろぽろ」など、それこそ思ひ出に浸ることができました。

鑑賞後、美術館を出てランチをしたのですが、美術館で無料のピアノのリサイタルが聴けるとのことだったので、再び美術館へ。

屋野晴香ピアノリサイタル 〜ウィーン・ロマン派の風景〜

ブラームスの「6つの小品」、シューマンの「ウィーンの謝肉祭の道化」、シューベルトの「ウイーンの夜会」。
1時間ほどのピアノでのクラシックを聴きながら、少し寝てしまいました(笑)

美術館でクラシックの名曲。
たまにはこんな贅沢もいいですね。


10)2018年6/13-10/14「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」

プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光

地震、酷暑、豪雨、台風と、怒涛の2018年の夏が過ぎ、ようやく秋めいた自然が訪れつつありますね。
と、先月は自然が騒がし過ぎて行きそびれた美術展に出掛けることにしました。

マドリードにあるプラド美術館は、スペイン王室の収集品を核に1819年に開設された、世界屈指の美の殿堂です。
本展は、同美術館の誇りであり、西洋美術史上最大の画家のひとりであるディエゴ・ベラスケスの作品7点を軸に、17世紀絵画の傑作など61点を含む70点(うち9点は資料)を紹介するものだそうです。
この美術展は国立西洋美術館で5月末まで開催した後、兵庫県立美術館に巡回してきたものです。

主題別に7つの章で展示し、第6章を除く各章にベラスケスの作品が含まれているそうです。
第1章「芸術」、第2章「知識」まで観て、ほぼ肖像画が多い印象。
第3章「神話」は神話っぽい絵というより、人物画のような。
第4章「宮廷」で、また肖像画になり、第5章「風景」、第6章「静物」でようやく人物アップから離れたかと思うと、第7章「宗教」で、また人物画に戻った感じ。
ベラスケスのコレッ!という絵というより、ああ、コレかぁという個人的な感想。
目玉作品はベラスケスの「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」らしいのですが、特に私の感情の琴線に触れることもありませんでしたし。
う~ん、なんかイマイチ。
期待していただけに、肩透かしを食らった感じがしました。
この美術展は来月中旬で終了予定です。


以上、兵庫県立近代美術館時代を経て兵庫県立美術館での美術鑑賞でした。
美術館が駅から少し離れているのが難点ですが、王子動物園とセットでアートと動物のW鑑賞もありかも知れません。

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