銀鏡
雨が凍りついた日の
足音が
白い息を追い越して行く、すずしい言葉の
切れ味を温めていた懐で、脆く
討たれて、
声を上げた動機の波は高い
虚構とは呼ばずに、
人を
受け止めようとして、また
空に放った眼差し、ゆっくりと
肌を伝う水が
細く名前のない静脈を辿るように戻って来る、
いつか
硫化して
沈んだ瞳は越えて行く、君の世界を
過ぎて行ったものが
そばにいるとき、
目に映る日々を受け取りながら、
鏡の中の手で
無音の波を放さずにいた詩人のように生きて
胸元に渦巻く水から
生まれて来た言葉も
冬に隠せずに光る、
空に伸びて行く姿見を背にして
不可思議なサークルの半円がどこまでも遠く
広がって行く、風が吹く
誰かが素足のように
眼差しを浸している、春の
水平線に変わる
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