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クオリティ = 価値ではない

価値の定義を
『会社の存続のために、中長期的に利益を増やし続ける』
とする。

クオリティを
『ストレスのないユーザー体験と、ブランドに好感が持てるデザイン』
とする。

と、必ずしもクオリティ=価値にはならないよねという話。
特に『価値』は変数が多すぎる。そもそものプロダクトが解決するコトだったり、ユーザーのバーニングペイン・インサイトだったり、組織だったり、マーケットのタムだったりいろいろな要素が複合的に絡む。

今日はそんな事例を2つ紹介する。

ゲーム「GRAVITY DAZE2」PV

このゲームのPVはいろいろな広告賞を受賞した。
このPVは映画『インセプション』と同じ方法で、撮影された。つまり部屋ごと回している。

映画「インセプション」

もちろん、多額の撮影費が投入されている。
が、結局約10万本しか売れていない。ゲームは100万本売れれで大ヒット、30万~50万売れれば売上の良いゲームと言われている。
何より前作のグラビティデイズ1が約10万本売れているので、PVの無力さが伺える。

ソニー・インタラクティブエンタテインメントとしては価値のないPVだが、制作会社もしくは広告業界にとっては価値がある。

広告業界はいまでも賞とってなんぼの価値観があるので、賞をとることで別のクライアントからの案件や、競合時の優位性、採用などに多大な影響がある。

また広告業界にとっても、新しい流れを生んだのかもしれない。
例えばポカリスエットのCM「でも君が見えた」編でも、床が動くセットを使って撮影されている。

みんなの銀行

株式会社みんなの銀行は、ふくおかフィナンシャルグループ傘下のデジタルバンク。

このサービスも2021年にグッドデザイン賞など国内外の賞をかず多く獲得している。
が、残念ながらサービススタート以来、大幅な赤字を垂れ流している。

銀行法では原則開業3年以内に黒字化することが求められているが、23年9月期中間決算の最終損益は27億円の赤字。通期でも90億円程度の赤字が見込まれており、3期連続の赤字は決定的だ。このため黒字化の達成時期は開業5年目の25年度に先送りされていたが、さらに27年度に再延期された

https://news.yahoo.co.jp/articles/36ce7105b22912dc619429cfdd3de8e21428b6d1

さまざまな原因があるだろうが、「地銀の強みは地域に密着した顧客基盤」。「みんなの銀行」はそうした地域の強みがない。

つまり、結局は体験や技術の新しさだけを見て、人を見れていなかったというスタートアップあるあるの失敗をしている感じだと思う。

ただ、もちろんこのデザインも業界に流れを作っていて、ブラックのシンプルなイラストがサービス業界で流行ったりした。

さいごに

短期的にクオリティが高くて広告賞をたくさんとって話題になっても、中長期的には価値を出せなかったものがいっぱいある。(みんなの銀行はこれから逆転があるかもしれないが)

代理店時代は「アイデアは考えつくもの」だと思っていたが、事業会社に入ってみると「アイデアは見つけるもの」だと気づく。
広告デザインは楽しいし飽きないのでずっと広告デザインをやっていたくなるが、広告業界だけでなくより本質的な社会的価値を出したくなったら事業会社を試してみてもいいと思う。

もちろん、合わなかったら戻っていいし。文化祭の準備だけじゃなく、長い間育てるのも楽しいですよ。

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