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ISSUE.01 「林檎宇宙」

その日、二日酔いで三田線に揺られていた。
前夜に東京に到着し、空手の師範代と飲んでいた。
翌日(今日)、友人に畑に連れて行ってもらう約束をしていて蓮根駅に集合の予定だった。だが、車中でオエっときていた私は、乗り物酔いとか齢のせいにして遅刻していた。

辿り着いた初めての蓮根駅。
降り口からゴロゴロと住宅地に響くスーツケースを引っ張りながらぼとぼと歩いていくと、目的の畑が見えてきた。
黒々とした畑の土。
晴々とした空(風は冷たい)。
待っていてくれた友人と、ハスネファームの冨永さん、女性ふたり。

友人と、お名前をもう一度聞きたい女性陣、冨永さん。

「初めまして」と挨拶。とても歓迎してくれた。(ボロボロの私を……)
もともと友人がこの畑をボランティアで手伝っていたのが縁で、紹介してくれることになったのだ。私と友人は、オンラインや手紙でよく環境問題の話をしていたから食べ物や農作業のこと、好きなものが似ているのだ。

義理の父の畑を引き継いだのが冨永さん。無農薬、有機野菜の野菜を育てている。今は大根(いろんな種類)や人参、葉物、カブなどが畑に植っており、さつまいもは最近収穫が終わったらしい。茎ブロッコリーはその場で食べさせてもらったけど、瑞々しくてサクッとした歯応えで美味しかった。ホップなんかも育てていた。多品種を少ない量で栽培しているそう。スーパーには卸さず、レストランや個人宅に配達で。忙しい中、丁寧に説明してくれた。

わらを敷き詰める農法を試しているそう。後で自然農法「わら一本の革命」を知る。

「微生物や菌なんかが土の中にいて、ワラをかぶせておくと、ほら……」と言ってワラをめくると、白い納豆の糸とか綿みたいな菌が生えている。畝(うね)に生えているのがサクサクの茎ブロッコリー。(※写真で畝の溝に生えている雑草のように見えるのは麦)そういえば麦って成長はやいんだよな……

枯れたホップ。黄色い花粉のような微粒子(ルプリン)がビールづくりに不可欠なのだ。

短時間でいろいろ見せてもらって、太陽も浴びて、だんだん調子がよくなってきた。
「コンポストも見ますか?」と言ってくれたので、もちろん「YES!」。
近くの別の場所で作っているそうなので3人で畑を出た。

コンポストとは……以下参照。

私も自宅でやらなきゃな……と思いつつ、親が「虫が気になるから嫌」と言って別に湧きゃしないのに説得が面倒でやってない。どんなに意識高めでも実行しなきゃ意味がない。

ファームの新鮮野菜を使ったレストランの庭でコンポスト(右の小屋)やキウイ栽培などなど。

コンポストはファームの新鮮野菜を使ったレストラン「PLANT」の庭先で作っていた。ほぼ毎日生ゴミ、野菜の皮なんかをコンポスト用の土にどんどん投入していく。微生物やミミズの力を借りて分解して堆肥にしていくので、時間や手間はかかるけど自然で環境によいのがコンポストのいいところ。

画像に写っていないところに第一段階のコンポスト(生ゴミが分解されていない状態)があって、二段階目がこちら。中はホカホカ、高温で発酵させるのがポイント。

「家庭でもだいたいのところまではできるけど、最終的な堆肥にするには高温で発酵させないといけないのでそこが難しい」と冨永さんは言っていた。たしかに、家で管理するには難易度が高いし(環境や設備、時間、手間、コスト)、このくらいの量を作れれば畑に還元するにも効率が良い。最後にしっかりと完熟発酵させることで、さらさらで臭いもないよい堆肥ができあがるのだそう。

「各家庭でできるところまでやったコンポストをこういう場所に持ち寄って、最終的な堆肥づくりを地域でまとめてやれたらいいと思ってる」という冨永さんのアイデアを聞いて、たしかに何ヶ月かに一度、地域の住人が集まれる情報交換の場としてコミュニケーションにもなるし、品質の安定した堆肥も作れる。そうやって、みんなで環境負荷を減らす活動を、楽しめるようなことが前向きな課題解決になっていくと思う。

無造作に干されていた、茄子。そして牡蠣殻。なんとなく干してみたらしい。このときコンポストと畑の洗礼を受けてアレルギー持ちの私の鼻は大爆発中。

農作物を育て収穫して売る、というサイクルにこういう取り組みを積極的に取り入れるハスネファームの冨永さん。自分たちで循環をつくることや継続すること、それを周りに伝えていくことは大事なことだなと改めて思う。

そして……
この後に衝撃的な出会いが起こったのだが。
(「林檎宇宙」)
眠たいので次回に書きます。

つづく


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