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小沼勝『いんこう』〜おねショタロマンポルノ〜

はい、お久しぶりのボロクソDEシネマです。この前の記事で、予告していた通り、にっかつロマンポルノ50周年記念として、ロマンポルノの映画紹介・レビューをしていこうと思います。

今回の作品は『いんこう』という、言わずと知れた名匠・小沼勝監督の作品です。ロマンポルノの中では、かなり終盤の作品で、1986年公開の映画です。ロマンポルノが88年に終わりを告げるのだとすれば、まさに最終盤という感じですね。

この頃になると、いわゆるアダルトビデオが台頭してきて、日活もそれに呼応するように「ロマンX」という本番行為を売りにしたシリーズを始めるなど、なかなかきな臭い時代です。

いんこうとは

みなさんお気づきの通り、これは淫行を題材にしたものですね。

淫行:しかるべき関係ではない男女が性的に乱れた行為(性交)に及ぶことを意味する表現。特に、18歳未満の少年少女と性交もしくは性的欲求を満たす目的の性交類似行為に及ぶことを指して用いられることの多い語。

ロマンポルノやピンク映画で淫行と聞くと、多くの方は成人男性と未成年女性の物語を想像するかもしれませんが、この作品は逆です。

完全に「おねショタ」です。

作品紹介

主演:麻生かおり
出演:坂元貞美/戸上正彦/島村健二/水城蘭子/渡辺久美子
監督:小沼勝  脚本:佐伯俊道
プロデューサー/鶴英次 企画/沖野晴久、作田貴志 撮影/水野尾信正 照明/川島晴雄 録音/福島信雅 美術/金田克美 編集/山田眞司 助監督/萩庭貞明 

麻生かおり

西村昭五郎作品のイメージが強いですね。『花と蛇 地獄篇』や『赤い禁猟区 ハードコアの夜』などなど、タイトルからして、ハードな「やられる側」のイメージが強かったのですが、この作品では全く逆で新鮮です。

ちなみに私的麻生かおりベストは、『レイプハンター 通り魔』でしょうかね。
U-NEXTで見れますので、ぜひご鑑賞あれ!

あらすじ


26歳の女性プログラマーと16歳のパソコン少年の淫行を描く。

26歳のフリーのコンピュータープログラマー・田所真理子(麻生かおり)は、契約している会社を経営する青年実業家の宮永とカラダの関係を持っていた。また、真理子にはともに仕事をするパートナーがいた。16歳の少年・講平である。母親とふたり暮らしで頼りない講平だが、宮永にプログラマーとしての腕を認められ、仕事を任されているのだ。ある日、真理子はふたりで作業をするために講平の部屋を訪れる。すっかり夜になり、真理子は帰ろうとするが玄関に靴がない。講平が隠したのだ。講平は以前から密かに真理子を想い、欲情していたのだった。

作品レビュー

この作品は、現在交際中の彼女と自宅デートで見たもので、なかなか印象的です。なんといっても、おねショタ炸裂でいいですよね。
多分、私と同世代くらいの男子ならこの映画は最高なんじゃないでしょうか?

プログラマーとして社会を生きる真理子は、会社でもポジションを獲得しているキャリアウーマンです。作品序盤では、関係を持っている青年実業家とのイチャラブ情事が二度ほど入ります。

この風呂上がりのバスタオル姿のシーンはよかったですねぇ。完全に麻生かおりの目がときめいてるんですよ。タオルをはだけて、転んで、寝っ転がってからくすぐりあって、で、笑いながら情事が始まる。本当に幸せそうですよ。

で、早く淫行しろ!とか思ってたら、今度は女子学生のパンツを覗く耕平を描く。本当に、こいつがばかでどうしようもないんです。

そうこうしているうちに、真理子と耕平は一緒に仕事するようになって、耕平は愛してしまうんですよね。あぁ、仕方ない。私も16歳の時に26歳のお姉さんと密室で仕事したら、恋してしまいます。

で、どうにか帰らせたくない一心で、耕平は真理子の靴を隠す

「帰らないでくれよ!」
「いい加減にして!靴返して!」
「返さない!」
「・・・裸足で帰れるもん」

さぁ、ロマンポルノが始まりましたね。

裸足で夜道を歩く彼女のインサートが挟まれ、次の瞬間、彼女を望遠で捉える縦構図のカットが入る。あ、これは何かが起こるぞ、と期待した瞬間。

そっと画面前方に、が置かれる。

そら見たもんか!とばかりに、物語は一気に展開していく。
この画像一枚で、ロマンポルノしてる(笑)

めちゃくちゃ細かいんですけど、画面奥に街灯をしっかり映すことで、露光不足を感じさせない技がなされてますね。

二人はそのまま、夜の公園で情事に励むかと思われましたが、ここで一度焦らす。そうです、何せ真理子には耕平に行くきっかけがない。ただ単に若造が欲情しただけです。

そして次のシーンで、青年実業家とのバーのシーンが挟まれる。

妙に気合の入った照明設計がされていて、現場でも「ここが重要」という意識があったのでしょう。バックから照らされたオレンジのライトが、真理子の孤独を印象つけるとともに、その左右に暗い緑や青のライトをつけることで、視線が真理子に行く。いいカットです。

試しに、左右の手で隠して比べてみてください。人物や物の配置、照明設計、それら全ては視線誘導に作用しているとともに、物語上の真理子の心情をきちんと描写している。

さあ、もう真理子が向かう先は一つです。

翌日、耕平の仕事場に来た真理子は、これまでの地味な白や紺の衣服ではなく、ビビッドな黄色の衣裳を見に纏い、耕平を誘惑します。

このシーンは白眉です。素晴らしい。

一緒に見ていた彼女も「えっちだ・・・」と呟いてしまう「おねショタ」シーンです。完全に真理子主導で進むシーンで、まさに観客が待ち侘びたシーンでしょう。汗だくで男子の上に跨り、腰を振る様は、もう冒頭のイチャラブシーンの目とは違います。

もう二人はどんどん、どんどん、淫行を重ねてしまう。
耕平は止まりません。その反面、真理子には青年実業家との関係が冷えた寂しさがあります。

この、真理子の寂しさを感じさせるシーンが本当にいい。ロマンポルノしてるなぁ!とテンションが上がります。

青年実業家と電話が取れない夜、寂しさを埋めるようにシャワーを浴びようとする。そして浴場で、剃刀を見つける。

涙を流しながら、下の毛を剃るのです。

これは、『淫行』というテーマだからこそ二重に意味を見出してしまう行為です。


剃ることで、これまでの男から離れる決意をする。いわゆる失恋したら髪を切るみたいな物です。それに加えて、剃ることで男(未成年)に近づく、という隠喩も込められており、そこに涙が加わるわけですから、真理子のその心中や・・・

二つの逆の意味を演出に取り込む手法は、ラストの別れのシーンでも顕著です。離れる女は「またね」と呟き、追いかける男は「もう来ちゃだめだ」と伝えようとしている。

素晴らしい。

追いかけ続けた少年が、尚も追いかけ続けるラストにすることで、精神的な成長を反復と差異で感じさせながら、それでも彼女への想いに変化はない、というメッセージさえも受け取れます。いやぁ、これはいいラストだ。

おまけ

この映画は、その二人の姿をずっと捉えながらも、例えば耕平がもともと思いを寄せていた女子学生の様子をクロスカッティングしたり、耕平の祖母?の洗濯機振動オ○ニーが出てきたり、飽きないように場面を展開してくれるのもいいです。

二人の物語がシリアス寄りな分、周縁の人物たちはコミカルに描くのがメリハリ効いてて助かります。

まとめ

今回はかなり画像を多めに書いてみました。
もしかすると、いまだにロマンポルノ未体験の方が、読みにきてくれるかもしれないので。

世間一般の声として、「エロ一辺倒」「物語がない」「AVとどう違うのか」などと聞こえますが、どうでしたか?

私はそんなふうには思いません。物語の中心に「性」があることで、そういう描写は多いですが、その演出や物語の構成、見せ方、伝え方には、間違いなく映画としての強度があるのではないでしょうか。

ぜひとも、一度見てみてください!

「おねショタ」は興味ないなぁという方は、今後の記事をお楽しみに(笑)

最後に

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