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真冬の夜の夢 ~ 第一回心灯らくご会

ドン・キングという人物をご存じだろうか。あの『モハメド・アリvsジョージ・フォアマン(1974年・キンサシャの奇跡)』や、『マイク・タイソンvsイベンダー・フォリフィールド(1997年)』などのビックマッチを仕掛けてきた、ボクシングのプロモーター(興行主、主催者)だ。

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悪名高き人物ではあるが(実際に悪い事もかなりしていたらしい。殺人、詐欺 ,etc.)、なぜか超一流ボクサーたちが次々と彼と契約してしまう。

それは非常に頭が切れるうえに、たぐいまれな人を惹きつける魅力が彼にあったからだと言われている。会う人はみんなキングを好きになってしまうというのだ。

2020年12月20日(日)の高円寺。

僕は彼女の後姿に、ドン・キングを見ていた。


◇ ◇ ◇

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落語とロックのスペシャルマッチ。

と、聞かされてもなにがなんだかわからないだろう。僕もどうなるのか行って観るまでわからなかった。

だが。

これが面白かった。大当たりである。

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青コーナー、落語家・桂竹紋。赤コーナー、演芸ロックアーティスト・イカルス渡辺。スタイルは違えど、客を笑わせることにかけては一流。互いに相手に不足なし。


14時。

試合は二人のフリートークからスタートした。たっぷり20分、容赦なく繰り出されるパンチを受け、時にクロスを被せるバチバチの乱打戦。
旧友のごとくやりとりされるその息の合ったトークに超満員の客席からあがる歓声。会場の最後列で、僕は大笑いをしていた。

一旦捌けた後。

ステージにはあらためてイカルス渡辺が登場した。

演芸ロックミュージカル。演目は、もやは日本人の遺伝子に組み込まれていると言っても過言ではない『忠臣蔵』。

MCで十分に観客をあたためてから、それは始まった。

笑える、ノれる、踊れる、勉強になる。

小学生を持つお母さんがこの記事を見ているなら、悪い事は言わない、今から聴かせた方がいい。

歴史とは、こう覚えるものだ。演芸とは、こう楽しむものだ。

割れんばかりの拍手でステージを終わらせると、イカルス渡辺はアンコールの拍手を背中に感じながら颯爽と楽屋に戻って行った。

ありがとう吉良&大石! ありがとうイカルス渡辺!


暗転したステージでは設営スタッフにより高座が組まれていた。(設営スタッフが息をのむほどの美男美女揃いだったのは偶然なのだろうか)


静寂に包まれた会場に太鼓の音が聴こえてくる。

後方から桂竹紋の登場だ。

厳かに高座につくと。ここから彼一人の戦いが始まる。

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「読めば4分くらいの台本を渡されて、これを15分にしてくれと言われて困り果てた」

枕でドッカンドッカンとウケをさらっていく。

ちなみにその台本というのがこれだ。

大変申し訳ないお願いをしたと自分で反省している。だが、書いた落語が落語家によって高座にかけられる。夢が叶う瞬間である。

さすがプロという内容だったのだが、さあここからがこの人情噺の聞かせるところ、という時に・・・

ピーポーピーポー ♪

外から救急車の音が。音は無視できないほどに大きく、しかも長い。なかなか通り過ぎてくれない。
間がそがれる事になったのだが、やはりさすがプロ。なんとかまとめて最後に締めてくれました。

大いに笑い、そして心に少ししっとりきたお噺でした。

僕の稚拙な台本を見事に仕上げていただき感謝しています。

竹紋さん、僕の夢を叶えてくださり、本当にありがとうございました。

その後、両者ともに、もう1ステージずつを披露し、らくご会は終了。

たっぷり2時間、2020年の笑いを納めさせていただきました。


◇ ◇ ◇



会場の一番奥、演者の登場口近くにその女は立っていた。

黒のレザースーツに身を包み、時に大笑いし、時に冷静な目でステージを見つめている。

女の名は、さや香。

この興行の仕掛け人である。

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演者への出演交渉から、場所選び、演目の構成など、全て彼女が一人で行った。

会場ではパンフレットとカードが配られたのだが、これも彼女のアイデア、企画力だ。

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初の興行にして、このマッチメイク。そしてこの状況、この年末でありながら動員20名以上(連雀亭をはるかに凌ぐ)で見事に成功を収めた。

彼女を見て僕は思った。

「この人は、日本のドン・キングになるかもしれない」


◇ ◇ ◇


第一回心灯らくご会。これにて大団円でございます。

桂竹紋さん、イカルス渡辺さん、さや香さん、スタッフの皆様、そして来場していただいたみなさま、本当にありがとうございました。

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民代さん、金ときちゃん、来てくれてありがとうー! 


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第三回心灯杯、始まっています!今回は落語縛りがなく、なんでも自由に書ひけるので僕はすでに4本リリースしています。みなさまもぜひ!

YYさんもらくご会の感想を書いてくださいました。ありがとうございます!

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