石井一成

文藝春秋という出版社で編集者をしています。 2023年7月より、小説誌「オール讀物」の…

石井一成

文藝春秋という出版社で編集者をしています。 2023年7月より、小説誌「オール讀物」の編集長。 香川県坂出市出身。

記事一覧

固定された記事

オールの小部屋から① 自己紹介

 文藝春秋の小説雑誌「オール讀物」をご存じでしょうか。  7月より、この雑誌の編集長をしている石井一成と申します。よろしくお願いいたします。  いま、お盆休みで静…

石井一成
9か月前
51

オールの小部屋から㉓ 雑誌づくり以外の仕事(後編)

 いよいよGWも終盤ですね。  本日は、かつて在籍した京都大学推理小説研究会の創立50周年大会に出席してきました。日帰りの慌ただしい京都旅でしたが、開催されたシンポ…

石井一成
4日前
9

オールの小部屋から㉒ 雑誌づくり以外の仕事(前編)

 暑い日が続きますが、お変わりありませんか。  GW中、noteを連続更新してみようと急に思い立ちました。  今回は、オール讀物のPRをちょっと離れて、「編集部だより」ら…

石井一成
5日前
9

オールの小部屋から㉑ 新たな賞の作り方と3人の書店員さん

 みなさん、いつもお読みくださってありがとうございます。  現在発売中の「オール讀物」5月号の中でも、今日はとくに多くの方に知ってもらいたい「大人の推理小説大賞」…

石井一成
7日前
4

オールの小部屋から⑳ 編集部員シマダの偏愛おすすめ(後編)+AI文字起こしについて

 みなさん、ご無沙汰しております!  気がつけば4月も半ば。まもなくオール讀物5月号が発売されてしまいますが、まだまだ3・4月号を粘りづよく宣伝すべく、おなじみ最年…

石井一成
3週間前
15

オールの小部屋から⑲ 編集部員シマダの偏愛おすすめ(前編)

 みなさん、こんにちは。  今回は、おなじみ最年少編集部員シマダさんに登場してもらい、先日、ポッドキャストで放送した「【オールの小部屋】3・4月合併号編集部員のお…

石井一成
2か月前
8

オールの小部屋から⑱ 編集者はタイトルを考える

 気がつけば1か月、更新が滞っていました。ついこの前、年があけたばかりなのに、もう2月も終わろうとしていて、驚くばかりです。  このひと月、何をしていたかをふりか…

石井一成
2か月前
39

オールの小部屋から⑰ 直木賞選考会と伊集院静さんのこと

 本年もどうぞよろしくお願いいたします!  1か月更新が滞ってしまいました。年が明けるとすぐオール讀物2月号の校了、そして第170回直木賞の選考会……と、昨年末から…

石井一成
3か月前
35

オールの小部屋から⑯ 高校生直木賞について

 ようやくオール讀物新年号を校了しました!  雑誌って、現実の発売日よりも少し先の日付を表示するのが慣習になっていまして、12月21日に発売するオール讀物は、まだま…

石井一成
4か月前
15

オールの小部屋から⑮ 編集部員紹介 トリハラ青年の巻

「オール讀物」編集部ではいま、どんな人が、どんな志を抱いて働いているのか――。  大好評をいただいているオール編集部員の身内インタビュー企画。先日のシマダさんに…

石井一成
5か月前
16

オールの小部屋から⑭ 編集者って何?

 こんばんは。気がつけばもう冬ですね。  ちょうどオール讀物12月号が発売されたばかりです。  東野圭吾さんのガリレオ新作「重命(かさな)る」や、髙見澤俊彦さんの「…

石井一成
5か月前
50

オールの小部屋から⑬ ”台割”って何?

 急に涼しくなりましたが、みなさんお変わりありませんか。  目下、オール編集部は12月号の校了中です。 「本屋が選ぶ時代小説大賞」など豪華特集目白押しの12月号につい…

石井一成
5か月前
16

オールの小部屋から⑫ 編集部員紹介 シマダさんの巻【後編】

 文春にとびこんだ大学生は、何を見、何を思い、どのように編集の仕事を覚えていくのか――。前回につづいて、編集部員シマダさんのインタビュー【後編】をお届けします。…

石井一成
6か月前
8

オールの小部屋から⑪ 編集部員紹介 シマダさんの巻【前編】

 いつも自分の話ばかりだと広がりがないので、急遽、突然、思い立って、編集部員インタビューをお届けします!  精鋭5人。いま「オール讀物」編集部ではどんな人が、どん…

石井一成
6か月前
16

オールの小部屋から⑩ 鮎川哲也賞の贈呈式

 先週の金曜日、4年ぶりに鮎川哲也賞の贈呈式におじゃましてきました。 『帆船軍艦の殺人』で受賞された岡本好貴さん、おめでとうございます!  鮎川賞のパーティは、作…

石井一成
6か月前
10

オールの小部屋から⑨ 目次づくりと文春のジャングル

 すっかり涼しくなってきましたね。  ついにオール讀物11月号、校了しました! 読みどころ満載、まるで1冊の新書のような総力特集「絶対、小説家になる!」については、…

石井一成
6か月前
13
固定された記事

オールの小部屋から① 自己紹介

 文藝春秋の小説雑誌「オール讀物」をご存じでしょうか。  7月より、この雑誌の編集長をしている石井一成と申します。よろしくお願いいたします。  いま、お盆休みで静まりかえった会社の隅で、「第169回直木賞」を発表するオール9・10月合併号を校了しています。  オール讀物という小説雑誌が、どんな編集部員によって、どのように作られているのか。その舞台裏の一端をお伝えできたら……と思いたって、小文をしたためていくことにしました。  まずは、私の自己紹介から。  2000年、新卒で文

オールの小部屋から㉓ 雑誌づくり以外の仕事(後編)

 いよいよGWも終盤ですね。  本日は、かつて在籍した京都大学推理小説研究会の創立50周年大会に出席してきました。日帰りの慌ただしい京都旅でしたが、開催されたシンポジウムで、出身作家のみなさんの「犯人当て」論を聞くことができて、とても貴重なひとときでした。 「犯人当て」の、小説とは異なる特質を(そのライブパフォーマンス的な側面も踏まえて)きちんと捉え直すと、仕事の上でも楽しいアイデアが湧いてくるような気がして、定評ある名作をいくつか読み直そうと、いま、帰りの新幹線の中で考えて

オールの小部屋から㉒ 雑誌づくり以外の仕事(前編)

 暑い日が続きますが、お変わりありませんか。  GW中、noteを連続更新してみようと急に思い立ちました。  今回は、オール讀物のPRをちょっと離れて、「編集部だより」らしく、雑誌づくり以外に私たちがふだんどんなことをしているのか、ご報告しようと思います。かなり慌ただしかったこの2か月間のカレンダーを振り返ってみることにします。   3月某日/『映画ビジュアルブック「陰陽師0」の世界』校了  夢枕獏さん原作、佐藤嗣麻子監督・脚本の映画「陰陽師0」は、みなさんご覧になりまし

オールの小部屋から㉑ 新たな賞の作り方と3人の書店員さん

 みなさん、いつもお読みくださってありがとうございます。  現在発売中の「オール讀物」5月号の中でも、今日はとくに多くの方に知ってもらいたい「大人の推理小説大賞」について、その裏側といいますか、スタートまでの背景を少しご紹介したいと思います。 「ミステリー通書店員が選ぶ 大人の推理小説大賞」。栄えある第1回の受賞作は、黒川博行さんの『悪逆』(朝日新聞出版)に決まりました。『悪逆』は本当に傑作で、警察小説の名手、黒川さんの最近の作品の中でもすごく面白い1冊です。大人の推理小説大

オールの小部屋から⑳ 編集部員シマダの偏愛おすすめ(後編)+AI文字起こしについて

 みなさん、ご無沙汰しております!  気がつけば4月も半ば。まもなくオール讀物5月号が発売されてしまいますが、まだまだ3・4月号を粘りづよく宣伝すべく、おなじみ最年少編集部員シマダさんのおすすめ紹介企画の〈後編〉をお届けします。  本の話ポッドキャストの人気番組【オールの小部屋】より、【3・4月合併号編集部員のおすすめ企画はこれだ!(第1回)】の音声をAI文字起こしした記事です。 〈前編〉にお目通しいただいた上で、こちらをお読みください!  石井 では、オール讀物3・4月号

オールの小部屋から⑲ 編集部員シマダの偏愛おすすめ(前編)

 みなさん、こんにちは。  今回は、おなじみ最年少編集部員シマダさんに登場してもらい、先日、ポッドキャストで放送した「【オールの小部屋】3・4月合併号編集部員のおすすめ企画はこれだ!」の文字起こしをお届けしようと思います。  ポッドキャストをふだん聞かない人にもおもしろ企画をお届けしたい(3・4月号の宣伝もしたい)というのがひとつ。  もうひとつは、最近、AI文字起こしの性能がどんどん上がっていて、音をきれいに録りさえすれば、かなり正確な文字起こしが自動的にできるようになって

オールの小部屋から⑱ 編集者はタイトルを考える

 気がつけば1か月、更新が滞っていました。ついこの前、年があけたばかりなのに、もう2月も終わろうとしていて、驚くばかりです。  このひと月、何をしていたかをふりかえりますと……  2月5日、文春文庫『時ひらく』刊行を記念し、日本橋三越で開催された阿川佐和子さんのトークイベントの進行役を務めました。夜、東京に大雪が降った日です(大変な日に来場してくださったみなさま、ありがとうございました)。 『時ひらく』は三越創業350年を記念して編まれたアンソロジーで、三越を舞台にした短編

オールの小部屋から⑰ 直木賞選考会と伊集院静さんのこと

 本年もどうぞよろしくお願いいたします!  1か月更新が滞ってしまいました。年が明けるとすぐオール讀物2月号の校了、そして第170回直木賞の選考会……と、昨年末から息をつく暇がなかったのです。  この「オールの小部屋」第1回にも記しましたように、直木賞は年に2回のビッグイベントで、編集部全体、会社全体が独特の雰囲気に包まれます。張り詰めた空気の中でおこなわれる選考会の司会はとても緊張するもので、終わるまではいろんなことが手に付かないんですね。  とくに今回は3時間をこえる長時

オールの小部屋から⑯ 高校生直木賞について

 ようやくオール讀物新年号を校了しました!  雑誌って、現実の発売日よりも少し先の日付を表示するのが慣習になっていまして、12月21日に発売するオール讀物は、まだまだ年内なのですけれども【2024年新年号】ということになるんですね。  実は、日本雑誌協会の定める「雑誌作成上の留意事項」というルールがあり、月刊誌については「16日発売日以降は2か月先までの月」までに限って月号を表示する、と決まってるんです(つまり12月21日発売の号は12月号でも1月号でも2月号でもOK。でも

オールの小部屋から⑮ 編集部員紹介 トリハラ青年の巻

「オール讀物」編集部ではいま、どんな人が、どんな志を抱いて働いているのか――。  大好評をいただいているオール編集部員の身内インタビュー企画。先日のシマダさんに続く第2弾は、次に若い、トリハラ青年をご紹介します。1985年、鹿児島県生まれ。最近どんどん増えている転職組のホープです。  今回は聞き手をシマダさんにやってもらいました。どんな話を引き出せているかも注目ですね。 トリハラ オール讀物編集部に2023年7月に配属になりましたトリハラです。聞き手が後輩のシマダさんという

オールの小部屋から⑭ 編集者って何?

 こんばんは。気がつけばもう冬ですね。  ちょうどオール讀物12月号が発売されたばかりです。  東野圭吾さんのガリレオ新作「重命(かさな)る」や、髙見澤俊彦さんの「神様の話をしよう」、夢枕獏×澤田瞳子×蝉谷めぐ実×武川佑さんら4氏による大座談会「『陰陽師』が好きすぎる!」が早くも話題を呼び、大きな反響をいただいています。買ってくださったみなさん、どうもありがとうございます!(まだの方は上記リンクからチェックしてください!)  勢いにのって12月号の宣伝をどんどんしたいところで

オールの小部屋から⑬ ”台割”って何?

 急に涼しくなりましたが、みなさんお変わりありませんか。  目下、オール編集部は12月号の校了中です。 「本屋が選ぶ時代小説大賞」など豪華特集目白押しの12月号についてはあらためてお知らせすることにして、今回は、好評発売中の11月号の「台割」について書いてみたいと思います。  小部屋⑨「目次づくりと文春のジャングル」で、目次の不思議について書いたのですが、お読みくださいましたでしょうか。オール讀物の目次は、小説や記事の実際の並び順とは関係なく、いちばん読んでほしいメイン特集

オールの小部屋から⑫ 編集部員紹介 シマダさんの巻【後編】

 文春にとびこんだ大学生は、何を見、何を思い、どのように編集の仕事を覚えていくのか――。前回につづいて、編集部員シマダさんのインタビュー【後編】をお届けします。 ――入社後、1年半「オール讀物」編集部で働いてきて、「これは頑張ったぞ」という仕事って何ですか。 シマダ 「高校生直木賞」をオール編集部で運営してるんですけど、その関連で高校生を呼んでイベントとかをちょくちょくやってまして。今年2月に阿部智里さんのオンライン読書会を開催したんです。課題図書として2作、用意して、そ

オールの小部屋から⑪ 編集部員紹介 シマダさんの巻【前編】

 いつも自分の話ばかりだと広がりがないので、急遽、突然、思い立って、編集部員インタビューをお届けします!  精鋭5人。いま「オール讀物」編集部ではどんな人が、どんな志を抱いて働いているのか、その実態に迫りたいと思っています。  記念すべき第1回ということで、1999年生まれの最年少部員、シマダさんをお迎えしました。聞き手・構成は石井が担当します。 シマダ どうぞよろしくお願いいたします。入社2年目になります。去年の4月、新卒で文藝春秋に入りました。入社からずっとオール讀物編

オールの小部屋から⑩ 鮎川哲也賞の贈呈式

 先週の金曜日、4年ぶりに鮎川哲也賞の贈呈式におじゃましてきました。 『帆船軍艦の殺人』で受賞された岡本好貴さん、おめでとうございます!  鮎川賞のパーティは、作家と書店のみなさんがとにかく多くて(編集者は少なめ)、ふだんめったに会えない方とたくさん話せる、ミステリ者にとっては夢のような会として知られています。  今回も、選考委員の祝辞が東川篤哉さん、正賞の贈呈が麻耶雄嵩さん(同時開催の「創元ミステリ短編賞」の祝辞は辻堂ゆめさん、正賞贈呈は米澤穂信さん)。そして乾杯の音頭が北

オールの小部屋から⑨ 目次づくりと文春のジャングル

 すっかり涼しくなってきましたね。  ついにオール讀物11月号、校了しました! 読みどころ満載、まるで1冊の新書のような総力特集「絶対、小説家になる!」については、10月20日の発売日にむけておいおいご紹介していくとして、今日は、目次の話です。  オール讀物の目次は「両観音開き」になっています。  表紙を開くと、まず、こんなふうに折りたたまれた目次が出てきます。  これを左右に広げると、  さらに左側をもう1回、広げると、  目次の全貌があらわれる……こういう仕組みにな