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しずおか呑み歩き

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三河屋

三河屋

静岡市。

駅を降りてタクシーの運転手さんにおでん街へお願いします、と言うと
「おでん街は2つあるけどどっち?」
と聞かれる。

まあ、どっちに停めてもらっても、ふたつのおでん街どうしは歩いてすぐの距離だからさほど問題はないのである。

青葉横丁と青葉おでん街。

それぞれに特徴のある、極めて情緒あふれる路地だ。

まずは最も人気があるらしいおみせのひとつ、三河屋さんの入り口の引き戸をそろそろと開

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やきとり酒場

やきとり酒場

沼津。
かつてお城があったという場所をぶらぶら歩く。

横手には神社の鳥居。お稲荷さんなので狛狐。
店の前には大きなお銚子のモニュメント。

暖簾をくぐると残念ながら満席で。

それでは少しぶらぶらして時間を置いてまた覗いてみますね、と店を出る。

駅前の、井上靖の言葉が刻まれた像を暫く眺め、原子力より大きな力を持つ「愛」とやらはいったい何処にあるのだろう、と考える。
愛ねえ。
愛にも質量とエネル

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多可能

多可能

開店と同時にすぐに満席になってしまう超人気店。

知人を接待的な意味合いで連れていく時などは予約必須なお店だが、実は一人でふらりと暖簾をくぐってみると、割とカウンターの隅に入れてもらえる事が多いのだ。

静岡を離れる前に、ここは是非とも寄っておかなくては、と。

この日はカウンターの大皿からながらみと静岡割りを。

ながらみって何かって?
ながらみというのは
要するに
あれだ。
貝、
貝の一種であ

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穂高

穂高

東海道の14番目の宿場町である静岡県富士市の吉原宿。

祭りの夜に、ふと立ち寄ってみる。

初めてのお店では瓶ビールから。

赤星。

「わたしビール飲まないからよくわからないけれど、このサッポロは人気あるわねえ」

赤星を置いている店は信頼できるっていいますよ。

「あらそうなの
そうね、うちは信用していいわよ」

日本酒は
ちろりで燗をしてくれる。

どうやら串カツが看板のお店らしいので、それ

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さかえや

さかえや

親父さんと奥さんがとてもいいお人柄なので、しょっちゅう夕飯を食べに(というか呑みに)通ったお店。
こういう店が歩いていける距離にあったのは僥倖というしかない。

ここは富士市内では、というか東静岡では珍しくホッピーが置いてある。もちろんリターナル瓶ではなく市販品ではあるものの黒ホッピーが静岡県で飲めるのはありがたい。

ゴルフ好きのご主人は、メニューに書いてある料理だけでなく、なじみ客には

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充家

充家

おそらくこの町に住むようになってから、一番通ったお店。

元々はたぶん住宅街に建つ、地元の住民が集うスナックだったのだろう。
そこを居抜きで居酒屋にしたみたいなのだが、駅からもちょっと離れている上に、暗くなったらほぼ人通りのない場所で、しかも店の外観がまさにスナックそのものなので、料理もホスピタリティもとても良いお店なのに、外から中の様子が全くわからないこともあって入りづらく、かなり損をしてい

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旬の味 たなか

旬の味 たなか

伊豆半島はとても良いところ。

沼津や三島に近い北の方も、伊豆下田などの南の方も、真ん中あたりの天城越えも、相模湾側の東伊豆、駿河湾側の西伊豆もそれぞれ驚くほど全く異なる景観と文化があって、のんびりとバイクで一周してるととても興味深くて飽きない。

そんなわけで今回は東側、相模湾に面した伊東市。
言わずと知れた温泉街と、お魚の美味い町です。

日が落ちるとるとやや人気がなくなる暗い通りをぶらぶらと

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大村バー

大村バー

バーという店名だけれど、大正5年創業の老舗居酒屋だ。

割と広めの店内の、入口を入ってすぐの席は普段は常連さんが座る特等席のカウンター。
タイミングよく、うまくそこに滑り込ませていただいて、まずはビールを。

お隣りに座っていたまさにザ・常連という感じの歯の抜けたおじいちゃんが
「今日は月曜かね」と聞いてくるので
「いえ土曜ですよ」
「じゃあ野球あるはずなのになんで映してないんだ」
「今はニュース

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音連れ

音連れ

寂れに寂れた、まあ昨今の日本の地方都市では見慣れた情景であるシャッター通り。

おそらくかつてはそれなりに人通りも多く賑やかな商店が並ぶメインストリートだったはず。そんな目抜き通りの一画に下がる杉玉。

日本酒バーなので当然ながらメニューには全国の銘柄がずらりと。
しかしいわゆる地酒、酒どころ静岡のお酒は地元であるにもかかわらず皆無。
そこらへんにこの店のこだわりというかポリシーというか、強いメッ

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チェシャーキャット

チェシャーキャット

窓から下田の海が見えるホテルの温泉でひとっ風呂浴び、ちょっと一休みして、太田和彦の番組など見つつ時間を過ごし、あたりが暗くなる頃にフロントで傘を借りて下田市内の、繁華街とは名ばかりながら、駅前の飲食店が立ち並ぶ界隈へとぶらぶら。

磯の匂いが微かにする大きな川に掛かる橋をわたり、ホテルから15分ほど、廃業した大きな旅館跡が立ち並ぶ細い道を歩くと、前方に街の明かりが。

人通りのない通りをあても

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たんび

たんび

美味しいお店だと話には聞いていたものの、ちょっと敷居が高い、初見ではハードルの高いお店というのはやはりあって。

この韓国家庭料理のお店「たんび」さんもまさにそういう感じ。
店名はおそらく단비なのだろう、恵みの雨。

入口の前に立つと、中からは笑い声と大きな声の韓国語で会話する喧騒が聞こえてくる。中の様子が全く窺い知れないというのは流石に怖い。

ただ、入りにくければ入りにくい店ほど嬉しくなっ

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泰平

泰平

恒例のサウナしきじに蒸されに出かける。

小籠包のようにホカホカに蒸されてサウナ室を出るなり雨の日に田んぼに跳ねていくアマガエルのようにキャッキャと水風呂に飛び込む(もちろん充分にかけ湯した後ね)その極楽のサイクルを繰り返していると、

蒸し蛙 負けるな ISSA
(俺の行く末密かに暗示する人Honey!)

などという小林一茶の俳句の改変(?)が頭に浮かんで、ずっとDA PUMPがエンドレスで脳

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