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【実践者に学ぶこれからのリーダーシップ】MAY I HELP YOU?相手のためにあなたはどこまで実践できますか?50年近く頼られる企業の秘密 株式会社片岡計測器サービス 川久保賢隆会長インタビュー≪アカデミーハウス特別企画≫

「環境を測る」というと、皆さんはどんなことをイメージするでしょうか?

大気の汚染、水質汚濁、地震の振動、騒音等、
あまりに大きすぎて普段は意識できないけれど、その環境の数値を知ることによって、進む環境政策があり、プロジェクトがあり、そこからビジネスチャンスも生まれていきます。

山口県にある株式会社片岡計測器サービスは1975年日本全体が大気汚染を主体とした公害が注目される中、環境を測る各種計測機器及びシステムと点検・整備・修理など一貫した技術サービスを提供しはじめました。
法律ができ、世間の環境に対する意識が変わりはじめ、急速に「環境を測る」ことが多く求められ始めた時代。
誰しもが手探りで進んでいく中で、計測業に乗り出そうとした大手企業の多くも撤退していきました。
そんな中、(株)片岡計測器サービスは50年近く経つ今も尚、環境を測ることをサービスとして提供し続けています。
「その根源には MAY I HELP YOU?(お役にたちます) という1つのテーマがあります
そう語るのは、株式会社片岡計測器サービス 川久保賢隆会長です

変わりゆく時代の中貫いた、MAY I HELP YOU?(お役にたちます)の真意とは?
これからの時代を生き抜いていくために必要な人材とは?チームとは?

インタビューから、多くのヒントをいただきました。(記事・写真)

今回、KDDI維新ホール併設の次世代リーダーを育てるためのシェアハウス「アカデミーハウス」にて株式会社片岡計測器サービス 川久保賢隆会長にご登壇いただけることとなりました。講義の前のプレインタビュー開催です!

アカデミーハウスとは
KDDI維新ホールに併設した山口市が管理する次世代リーダーを育むための公共のシェアハウスです。
異業種の若手人材(学生・社会人)を対象にした居住型の人材育成施設で、本施設の独自プログラムである、哲学をベースとした時間共有型のキャリア開発「P.C.Tプログラム(Philosophy-based Career Development Through Time Sharing)」の提供等を通じ、山口地域を牽引する次世代のリーダーとなりうる自律した人材の育成等を目的としています。


今回の実践者 
株式会社片岡計測器サービス 川久保賢隆 会長

生まれは北海道、大学は東京。大企業で日本を作ってきた社員時代

生まれは北海道、父の仕事の関係で6歳までいたのかな。
その後、東京に来てそれから群馬や埼玉へ。転校もずいぶん経験しましたね。
大学は東京を出て、秩父セメントという会社に入社しました。
当時は田中角栄さんの日本列島改造論の真っ只中で、東北自動車道や東北新幹線と、日本全体がインフラを造っていく時でした。コンクリートを使う事業がいっぱい出てきたんですよね。セメントメーカーというのは、セメントを生コン工場に売っていくんだけど、私はそこで工場の技術管理の技術者へ指導をしていました。今でこそ当たり前だけど、JISという品質基準を満たしている工場で作ったコンクリートじゃないと、公共工事に使えないという大前提があって、品質を落とさないための体制づくりがとても重要でした。
当時は若造だったけど、指導のためには生コン工場の社長たちに、こうしろ! ああしろ! と指示を出していましたね。
新しいチャレンジだからこそ、何があるかわからないし、もちろん課題も多い。でも、そこからチームで技術開発を一緒にやったりして、大変だけど楽しかった。
これから日本を作って行くぞ! という時で、誰しもが初めての経験だったけれど、相手の社長たちと一緒にとてもいい経験させてもらったなと思っています。


大企業を飛び出し、ギャップだらけの山口へ!

山口に来たのが1979年。元は妻の親父さんの会社で、創立から3年ちょっとくらいの時だったと思います。秩父セメント時代の当時の同僚に、「山口に行くというと、ここにいれば大きな仕事ができるのに、なんでそんな田舎の方の会社に行くのか」とみんなに反対されましたが、
それでもここに来ようと思ったのは「鶏口となるも牛後となるなかれ」。もちろん規模は一気に小さくなりましたが、小さいところでも、やりたい事をトップになってやった方がいいと思ったのだと思います。

しかし、来てみればやはり大きなギャップがありました。
まず全く業種が違う。コンクリートを扱っていると考える単位はどんなに小さくてもミリ単位。でも大気汚染を測るとなるとppmという、さらに100万分の1小さなを世界を見ていくことなります。最初は単位が違いすぎて戸惑いも大きかったです。
一方で、コミュニケーションの方でも山口は良くも悪くも難しい街でした。当時は移住を受け入れる体制や制度も全くなかったし、よその人がなかなか中に入っていくのが難しかったですね。
でも、そこはあまりくよくよせずに考えないから(笑)。とにかくやってみる、生活していくと案外すんなり馴染むことができました。
今となっては、川久保さんは山口のどこ出身? と自然にきかれるようにまでなりましたね。

自分が一番に学び、そこから周りを変えていく

会社の方は正直言ってしまうと、私含め社員の知識や技術力が不足していました。恥ずかしい話、機器には触れるけど、これがどんな原理と技術で動いているのか根本のところがよくわかっていなかったんです。これはまず自分が何とかしなきゃと思って、社員に対して毎日業務終了後、理科の勉強、電気回路の読み方、化学式などの基礎学習の勉強会をはじめました。私自身が学んだ知識を今度は周りに教えていったんです。

そしたらある晩、夕飯を食べていたら、1人社員が家を訪ねてきて、「川久保さん、ここが分からないから教えてくれ」と尋ねてきたことがありました。

全員ではないけれど、1人でもこういう考えの仲間がいるとわかっただけで、俺もやってやろう! と思いましたね。自分がスーパーマンでなくても、自分が学んで、知識や技術を深めて、そこから周りを変えていくというのが会社を引っ張っていくリーダーとしての私のスタートだったように思います。

サービスは“売る”のではなく、“やる”こと。

うちの会社はある意味、当時のベンチャー企業でした。業界的には大気汚染防止法ができて、ちょうど世の中が環境を考え始める時期で、そうなると計測器がいる。けれど使い方がなかなか難しいという状態。機器を提供する側もされる側も、誰もが初めてのことで手探りの部分も多かったんです
そこで私が半年ほど、メーカーの製造部に預かってもらって、とにかく機器について一から教えてもらいました。
我々は環境を継続して測っていく会社です。その環境のサンプルを採取して測るのではなく、現場にモニターを設置して、継続して測っていく。そのモニターを売って、設置して、その使い方をフォローするところまで、うちの仕事なんですよね。“売る”だけではなく、サービスを“する”。そこがスタートなんです。


プロの目プロの技術で究極に相手に役に立つこと。相手の相談に乗れるということ。相手のしたいことを提案できること。言われたことをやるだけでなくああしましょうこうしましょうと言えるようになることがサービスを”する”ことだと思っています。

オフィスに飾られている先代から変わらない社是


おかげさまでメーカーの中にもネットワークを作れたことで。大気汚染の計測の仕事の次は水質汚濁、騒音と時代に合わせて機器が新しくなって計測分野が増えても対応することができました。

メーカーさんからは、当時川久保さんから電話がかかってくると、質問攻めで仕事にならなかったと笑いながら言われましたが(笑)。本当に製造メーカーのサポートのおかげで今があると思っています。

実際にある計計測機器

つながりは与えられるものではなく、自分で作るもの

今思うと、先代と一緒に仕事に行った記憶が一度もないんですよね。だから紹介なども特になく、名字も先代が片岡で、婿の私が川久保だから社長の息子だということも気づかれないことが多い。仕事をやるにしても自分で仕事をして認められて、初めてつながりをつくっていくことができたんです。
しばらくして初めて、川久保さんって社長さんの息子さんだったんですねと後から言われることがほとんどで(笑)。生まれも育ちも業種も全く違う所から来た自分をどう育てようか迷ったと思います。でもおかげさまで自分のやり方で確かなつながりを作ることができました。
でも、親父が裏で実は帰ってきてくれて助かると自慢していたという話を聞いて、とても嬉かったなあ。

成長したい人がまずやるべき”経験”

うちの会社はおかげさまで社員の定着率が90パーセント以上になっています。これは理科の勉強会をしていた話にもつながるけれど、みんなで社員を育てていくことを大切にしているからかなと思っています。
今はインターネットもあって様々なところに情報がある。その分知識はある人が多いけれど、それを実際使える経験はあるのか?というとなかなか難しいものです。
同じ仕事でもある人が30分で終わることも、経験がなければ3時間かかる場合もある。私は人が育つためには3年は経験が必要と思っています。元々が優秀かどうかよりも、3年間やれるかどうか。その気概があればしっかり経験を積んで育つことができると思います。

現代の人はツールとしてPCやITを使うのが上手いけれど、それを使って何がしたいのか。肝心かなめの、目的や、ものの作り方がわからない人が多いように思います。OAに使われるのではなく、それを生かして何をするのか、そこを理解して究極の目的を考えてほしいですね。

社会人の学習は、すぐに使えるスキルにばかり目がいってしまう。
いつ役に立つかわからないけれど、重要な勉強への取り組み、貯蓄が少ないように思います。
自分を大きくするための投資としての勉強をしていってほしい。すぐにアウトプットできなくともいつか役に立つ知識や情報がこれから重要なんじゃないかな。

経験というと、生の情報を得ることも大事です。今は情報を得るにもオンラインで済むことも多くなってきましたが、画面上の数値やデータではわからないことが現場にはあると思います。
自分の肌で感じることそれが何よりも強い情報になる。プロジェクトを進める時も、理想だけではなく、実際はどうなのか。最後に現場がどう動くのか、最後の最後まで考えることが重要。こんな生の情報も一つの重要な知識といえますよね。現場の生の情報を知っているか、取りに行っているか。
これをしているかいないかでも大きく違うと思います。

スタッフ皆さんの修了書が飾られている

仲間を作るために、まずは自分が広告塔となる。

中小企業は、得意分野は得意だけど、すべてができるわけじゃあない。もちろんできないことが多々あります。やりたいことを成し遂げるには、ないものを他と組むことで補っていくことが必要不可欠です。そう考えていくと、上手くいくようになるものです。これは個人でも会社でも同じだと思います。組む相手が難しいんだけどね。

そこで、自分はこれができますよ! とまずは自らできることを整理し、伝えていくことが重要。
ある意味、社長は動く広告塔と思っています。社長を知らずして、会社は知らず。
まずはあの人に、話を聞いてみよう! とそこからプロジェクトが進んでいくこともあります。自分ができることまずアピールしていくと自然と仲間が増えていくのかもしれません。

あなたの切り札は何ですか?

これからは、あなたしかできない。あなたに頼みたいという切り札を作るべき。
その分野は俺に任せてくれ! この機器は私に任せて! でもいい。どんなジャンルでも、それならあの人に聞いてみようという強いカードは作っておくことが必要だと思います
技術サービスという仕事とは、機器がやるべき仕事と、人のやる仕事があると思う。その中で自分自身しかできないオンリーワンになるように、経験と、人間力をつけていってほしいと思います。
私の場合は、どうせ買うならあなたから買うよっていうくらい。究極はあなたに任せたいといってもらうことを目標にしています。
業務を変えることは簡単だけど、相手のことを思いやる気持ちは変わらない。とにかく相手に与えていく。この根本を曲げずにやれるかどうか。社是にもありますが May I help you?(お役に立ちます)の精神を大切ににしています。


何があっても、朝だけは喧嘩をしない理由

そうやって個人の力をつけたうえで、企業としては組織力。チーム1人1人の理解をすることが必要ですよね。私はリーダーとしてはその人のバックヤードも見られるようにしたいと思っています。
たとえばご家族の体調が悪いなどがあれば、いつもより集中できないでしょう?
結婚する人にも奥様に必ず「朝だけは喧嘩しないでくれ」と伝えています(笑)。絶対に影響しちゃうからね。
現場に出る人が気持ちよく出れるようにしないといけない。様々なバックヤードがある中で、そのチームの人が一番パフォーマンスが出せるようにするためにはどうしたらよいか。個の力とチームをうまく組み合わせられるかも難しいところですね。

これからのリーダーへ伝えたいこと

昔は1つ大きなビルが建てば、これから社会はこうなっていくんだというイメージがありました。ここを目指していけばよいのだという、なんとなくでも、みんなで目指していくゴールがあったんです。でも、今は5年後もどうなっているかわからないですよね。
何が起こるかわからない時代。その中で重要になるのは、
仲間がついていきたい! 一緒に仕事をしたい! と思われるだけの人間力だと思います。

後はとにかくやってみること!
うちでは毎年、創立記念日に10分間スピーチをしてもらうようにしています。
かれこれ30年くらい続いていますが、始めはできないと顔が青ざめていた社員たちも今では堂々とスピーチするようになりました。要はやってみれば案外できるようになるものなんです。
自分にはできない、これがないからできないとあきらめて、人任せにしないで、まず自分でどうやるか考えることが重要だと思います。
受け身ではなく、動ける環境に自らいれるというもの素晴らしいことなんですけどね。
さらにその中で、実際にプロジェクトとしてやらせてください!と言えるのは10人いて1人いるか否かだけど、そう言えるリーダーに皆さんにはなってほしいなと思っています。


㈱片岡計測器サービスHP

相手のことを思いやり、まず自分が動くこと。
そんな一つの意識を貫くこと、それこそが経験となり、自分にも返ってくる。MAY I HELP YOU?今までもこれからも、どんな時代にも活きる、
大きなテーマかもしれません。

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