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エッセイ | 祝うの不得手

友人とLINEでメッセージのやり取りをしていた時に「今日誕生日なんだ」とメッセージが届いた。大学時代からの付き合いであるが、友人の誕生日をこの時初めて知った。

2月や3月、8月や9月のように、長期休暇中に誕生日がある人はお祝いをする機会がないために知らないこともあるのだが、その友人は長期休暇に当たらない月の生まれだった。

「初めて知った! おめでとう!」とメッセージを送ると、喜んでいるスタンプが返ってきた。

メッセージのやり取りがひと段落ついた時に、「これでいいのだろうか?」と自分に問いかけていた。問いかけてみたのだが、私には分からない。


私はお祝いをすることが苦手なため、誕生日をどのようにお祝いすればいいのかが分からない。誕生日以外のお祝いであればなんとかなる。例えば、友人の婚約祝いや結婚祝いならそれなりに祝っていると思う。

ただ、誕生祝いとなると話が変わる。なぜだかぎこちないお祝いの仕方になってしまう。一緒にお祝いをしてくれる人がいればいいのだが、1人だとかなり不安になる。

「誕生日おめでとう」とも言うし、ケーキやプレゼントを用意することもある。ただなぜか「これでいいのか?」と不安になる。自分はしっかりと相手の誕生日を祝えているのだろうかと思ってしまうのだ。

相手がよろこんでいるところを見て、やっと「よかった」と安心できる。


こんなふうに不安になってしまうのには、私が誕生日をお祝いしてもらう時にあまりよろこべていないことに原因があると思う。

私は誕生日をお祝いされてもそこまでうれしいとは思えない。それよりも、自分の誕生日をお祝いしてもらい申し訳ないとすら考えてしまう。

「誕生日おめでとう!」と言われたら、すぐに「ありがとう!」と返し、その話はそこまでで終わらせる。「そんなことよりも楽しい話をしようよ」とでも言わんばかりに違う話題に乗り移らせるのだ。

このような状況だから相手を祝っても不安になってしまうのかもしれない。「この祝い方で大丈夫かな?」や、「これは本当にうれしい時の笑顔なのか?」と考え込んでしまう。

こうなってくると困ったもので、大切な友人を疑いだしてしまう自分が嫌になってくる。


友人とメッセージのやり取りをした2週間後にその友人とランチへ行った。仕事の愚痴や、お互いの近況報告をしながら食事をする。

食事を終えてコーヒーを飲んでいる時に、お店のスタッフから食後にケーキはいかがですかとメニューを手渡される。

私はメニューを受け取るが、先ほど食べた食事でだいぶおなかが満たされていたため、「けっこうです」と言ってメニューを返した。

友人は午後から予定があったため、その後お店を出て別れた。「久しぶりに会えて良かったな」と感じながら駅を歩いていた時にふと思った。ケーキを一緒に食べればもっと良かったかもな。



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