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【高橋洋一 石平(2023年)『中国経済崩壊宣言』ビジネス社 90頁】

【期末レポート】

 本の内容についてまとめる。本の内容に対する感想や批判


著者(出版年)、『タイトル』出版社、頁

例:トマ・ピケティ(2014)、『21世紀の資本』みすず書房、365頁から引用

この書式を守りながら、著者の記述を引用し、それに対する批判、感想が入っていることが期末レポートの成立条件である。

文字数 約6千字

knishi@grs.u-ryukyu.ac.jp 


以下、本の内容に対する感想や批判のレポートなります。

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【高橋洋一 石平(2023年)『中国経済崩壊宣言』ビジネス社 90頁】

中国に大打撃を与えた婚姻件数の激減について、石平氏が、「中国では10年くらい前から若い者たちの間で5月20日が「恋人の日」とされていることです。ある歌手が歌の中で勝手に5月20日を「恋人の日」と決めつけたことから始まったそうです」と述べている。このことについて、日本では恋人の日は定まっていないが、中国ではこの恋人の日に婚姻登記をするカップルが急増し社会現象となっていることを正直知らなかった。そもそも、私自身、中国の内政について知る機会が少なく、日本の婚姻状況についてもほとんど同じ状況であり、自分の興味のないことはますます知る機会が少なくなり、TVメディアに触れることは少なくなり、スマフォでネットサーフィンする程度でニュースをザッピングする日常である。そこで、日本で婚姻の日なるものを日本政府がメディアの力を借りるなどして、何とか広めようとする未来を考えてみたい。なぜなら、日本においても少子化が社会問題となり、結婚や出産の意欲が低下している現状が指摘されている。中国の「恋人の日」に婚姻登記が急増した事例を知ったことから、日本でも同様の取り組みが考えられる。

日本政府が、メディアの力を活用して「婚姻の日」を広めることで、結婚へのポジティブなイメージを醸成し、若い世代に結婚の意義や喜びをアピールすることができるだろう。これには以下のような一連のステップが考えられる。

メディアキャンペーンの展開: テレビ、ラジオ、オンラインメディアなどを活用し、「婚姻の日」の意義やメリットを伝えるキャンペーンを展開する。成功事例や幸福な家庭の紹介などを通じて、結婚に対するポジティブなイメージを構築する。

教育プログラムの導入: 学校や社会教育で、結婚や家族の重要性についての教育プログラムを導入する。若者に将来のパートナーシップや家庭の形成に対する理解を深める機会を提供する。

経済的支援策の検討: 結婚や出産に伴う経済的な負担を軽減するための支援策を検討する。住宅ローン優遇措置や育児休暇制度の拡充などが含まれる可能性がある。

広報活動の強化: ソーシャルメディアを活用して、若者が気軽に参加できるキャンペーンやイベントを積極的に実施する。ハッシュタグやオリジナルコンテンツを通じて、広く若い世代にアプローチする。

パートナーシップ強化: 企業や団体と連携し、婚姻に関するイベントやセミナーを開催する。地域社会や企業が結婚を応援する文化を醸成することが期待される。

以上の取り組みが、結婚に対するポジティブなイメージを広め、少子化対策に一翼を担う可能性がある。ただし、これには社会の多様性や個々の選択の尊重が重要であり、過度なプレッシャーをかけないように留意する必要があるだろう。

例えば上記のような取り組みが一般的ではあるが、中国においては、どういうわけか習政権になってから若者は結婚したくなくなったようである。日本においても、経済状況や社会状況の年々の悪化から若者たちが未来に対する失望感が増えたことにより、婚姻を選択するカップルが減っていると言えるのではないか。中国では、結婚する条件としてマンションを購入するということが一般的になっているようであるが、中国経済の低迷により、マンションを購入することが出来ないと同時に結婚もできなく、経済状態が結婚に連動している状況にある。日本においても、やんわりと親は子供が住宅をもつことを支援する流れなどがあることもあり、家が結婚と直接的に結びつくとは言い切れないまでも、結婚したいカップルの親世代の経済力の低下も、日本の婚姻をためらう要素の一つになっているのではないか。

他方、習政権による政治的要因だけでなく、結婚意欲の変動は複合的な要因が影響している可能性もあるだろう。経済状況や社会悪化は一因ではあるが、他にも働き方の変化や価値観の多様化などが影響を与えていると言えるだろう。婚姻条件と経済の関連性についても、一般的はなく、地域や個々の事情によって異なるだろう。また、経済力の低下だけでなく、価値観や個人の選択も結婚意欲に影響を与えているだろう。例えば、日本における経済力の低下と結婚の関係性であるが、不安定な雇用状況や非正規雇用の増加が、若者たちの将来の不安を増大させており、経済的な不安感が高まる中で、結婚に対する意欲が低下する傾向が見らえる。住宅や子育てに必要な経済的なリソースが不足していると感じることが影響している。価値観が多様化し、地方移住が進むものもいるが、それらはごく一部であり、大方は、都市部を中心によりよい利便性を求めて生活圏とし、その結果、都市部の住宅価格の高騰が継続しており、若者たちが自立しやすい状況が整っていない。住宅購入が難しくなることで、結婚に向けたステップを踏みにくくなり、結婚の意欲の低下につながるだろう。

また女性の社会進出と結婚のタイミングも関係しており、結婚や出産は社会進出を目指すことで、後回しにする傾向がみられる。経済的な自立が求められるなかで、キャリヤ構築や個人の成長に焦点を当てる女性が増加しているといえる。

要するに日本においても、経済力の低下と結婚の関係性は複雑で多面的であるといえるだろう。自分の知り合い日本人の例であるが、50歳の方が、3度目の結婚相手を若い中国人女性を選んだのであるが、もちろん婚姻の為に約3000万円のマンションを中国に購入し、無事結婚相談所経由で結婚したが、1年ほどで離婚となった。結局、マンションも相手の名義となっており、売却もできず、3000万円と妻を失った。このことは、異文化間の結婚や異なる経済環境がもたらすリスクや課題を示唆している。結婚相手が異なる文化出身である場合、言語や習慣、価値観の総意が生じる可能性があり、これがコミュニケーションや生活習慣の違いとして現われ、関係にストレスを感じることがある。さらに、3000万円もの金額のマンションを異なる国で購入することは、経済的なリスクを伴う。異なる法制度や言語の障壁があるなかで、資産や不動産の取引は慎重に進める必要がある。この事例では、結婚が続かなかったことで不動産の所有権が問題となり、損失が生じた。また、結婚相談を介しての結婚は、相手との信頼関係が未熟なまま進むことがある。十分なコミュニケーションや理解がされないまま結婚が進むと、将来的な問題が発生しやすくなる。結婚において、資産や財産の取り決めや管理について明確な合意がないまま進むことはリスクを伴う。この事例では、購入したマンションが相手の名義となり、結婚解消時に損失を被る結果となった。離婚は社会的および経済的な影響をもたらすことがあり、経済的な損失だけではなく、精神的な苦痛や社会的な信用の喪失も考慮されるべきである。諸々記述したが、個別具体の例としては、経済力があり結婚が出来たとしても、日中のカップルであっても、離婚の危機の要素はどのカップルにも多かれ少なかれ持ち合わせており、それが、大衆全体を表しているとは言い切れないが、近未来の結婚に対する価値観については、さらに結婚を選択しない方向に変遷していくような流れになっていくのではないかと推察している。将来の結婚トレンドは多様性を取ると考えられ、結婚を選ばない選択肢や、異なる形態のパートナーシップが増加する中で、結婚に対する価値観も個々の選択やライフスタイルによって異なる方向に進むだろう。経済力があるだけでなく、個人の生活設計や幸福の追求において結婚を選ばない選択肢が増えていると見ることも重要である。結婚以外の生き方や関係構築の選択が多様化する中で、結婚が必ずしも個人の満足や幸福に直結するとは限らないだろう。


同書182頁に高橋氏が「「平和3要件」のうち「自国と相手国の民主主義度を高くすること」いついては、「両国が民主主義国だと戦争しない」という古典的な民主的平和論ともほぼ同じと考えられます。だからこれは「一方が非民主主義国だと戦争のリスクが高まり、双方ともに非民主主義国なら戦争のリスクはさらに高まる」といことでもあります。平たく言うと、民主主義国同士はほとんど戦争しない、民主主義国と独裁国家は戦争をそこそこにやる、独裁国家同士はすごく戦争をしやすい。面白いくらいにわかりやすいでしょう」とある、このことについては、非常にわかりやすく記述されている。先ほどの結婚しているカップルに例えるなら、お互いに成熟している精神的に民度も高い者同士であれば、戦争、すなわち喧嘩はあまりしないのではないか。これが、独裁国家、例えば暴力的で高圧的な人とそうではないものとのカップルがいた場合には、喧嘩が絶えないのではないか。ただし、この理論やアナロジーはあくまで一般的な傾向を示唆するものであり、具体的な国やカップルに当てはまるかは個別の事例に依存するだろう。例外も存在するため注意が必要である。

高橋氏の表現だけを鵜呑みにすると、この理論は国家間の関係を非常に単純化しており、国家同士の複雑な相互作用や文脈を無視している可能性がある。国家間の対立や戦争の原因は単一の要因に還元されることはめったにないだろう。また、文化や歴史的な背景を無視しており、これらの要因も国家間の関係に大きな影響を当たる可能性がある。例えば、日中関係や、日韓関係などである。例外ももちろんあるだろう。民主主義同士でも紛争が発生することもあり、非民主主義国家との間で平和な関係も構築しているケースもあるかもしれない。また、民主主義という言葉は、さまざまな形態を取り得るため、一概にすべての民主主義国を同じとみなすことは難しい面がある。異なる文化や社会において、民主主義が異なる形で機能する可能性があるだろう。さらに、経済的な要因も国家間の影響を与えるが、この理論ではそれに十分な焦点が与えられていない。

高橋氏は、「民主主義からかけ離れた独裁国家では選挙や権力の相互牽制機能は存在しないため、戦争をするという極端な行動が採用されやすくなります。」と記載している。このことは、例えば、独裁国家とされる北朝鮮が、戦争をするという極端な行動が採用されやすくなる一面を示唆しているが、軍事力が相対的に低い北朝鮮が独裁国家だとしても、軍事大国に戦争を自ら仕掛けるという可能性は低いということを示していると言えるだろう。アメリカやロシアなどの軍事大国に対しては、戦争が冷静な戦略的検討に基づいている場合が多いため、極端な行動は慎重に検討されることが一般的である。独裁国家が戦争をしかける場合、その行動は外交的な反発を招く可能性が高い。国際社会に反応や連合体制、国際法に対する制約も考慮されるべきである。これらの制約は、戦争行為を慎重に検討させる一因となるだろう。また、独裁国家が内政的に不安定である場合、戦争は内政の混乱を進化させる要因となり、よって、独裁者は内政の安定性を維持するためにも慎重な戦争の採用を検討するだろう。北朝鮮のような独裁国家は情報統制が行われ、実際の状況と乖離した判断が生まれることがある。これが戦争の採用に誤った判断を生む可能性がある。これは日本の一時的に独裁国家であったとされる時期、特に第二次世界大戦前後の昭和初期から中期にかけての時期であるが、この時期において、軍部や政府が情報統制を行い、実際の状況とは異なる誤った判断が生まれ、結果として戦争の採用につながる事例がいくつもあった。例えば、日本は満州事変を起こし、日本政府は当初、中国に対して満州の安定と秩序維持を主張していたが、実際には領土拡張を進めており、この情報統制が行われていたため、国内外において正確な情報が提供されず、日本の行動が積極的な帝国主義的拡張であることが広く知られていなかった。他には、開戦の是非や真珠湾攻撃などである。

非常に考えにくい仮想シナリオとして、アメリカが核開発を進化させた北朝鮮と軍事同盟を結んだ場合、日本はどうなるかということを想定してみたい。高橋氏の理論によれば、アメリカ、日本、北朝鮮の軍事バランスが、アメリカ>北朝鮮>日本となり、北朝鮮が日本を制約する状況が生まれることになるだろう。このシナリオにおいて、日本の立場は非常に困難であり、安全保障上の深刻な懸念が生じるだろう。例えば、核脅威への直面があり、北朝鮮が進化した核兵器を有する同盟国である場合、日本は新たな核脅威に直面することになる。これにより、日本は核戦略やミサイル防衛など、防衛体制の見直しを余儀なくされるだろう。同盟国への行動の対処として、アメリカと北朝鮮が同盟を結んでいる状況下では、日本は外交的・安全保障上の難しい立場にたたされるだろう。市民の不安や反発に対処し、同時に国際社会との連携を強化する必要が生じるだろう。軍事バランスがアメリカ>北朝鮮>日本となることで、日本の安全保障上のリスクが増加するだろう。北朝鮮が日本に対して圧力をかける可能性が高まり、日本はその脅威に対処する必要があるだろう。日本は非核政策の維持が難しくなるだろう。このシナリオの場合は、日本は極めて困難な外交・安全保障上の状況に立たされ、慎重な戦略と強力な外交手腕が求められるだろう。そもそも、日米同盟が永続的であるかどうかは、日本がアメリカの軍事力を自国の国防のために利用している状況であり、さらに、日本にとって費用対効果を最大限出すために友好国として取り繕っている状況に変わりなく、軍事バランスや事実上日本の内政や経済に干渉しているアメリカに対して抵抗する選択肢が制限されていることからも、アメリカのさじ加減にかかっていると言えるのではないか。そこで、アメリカの機嫌を損ねた場合は、北朝鮮と同盟を組むぞと言えば、日本が例え他の民主主義国家と連携してアメリカへ対抗したとしても、それらの軍事力はもはや北朝鮮以下である可能性もあり、どのみち日本に勝ち筋はないという状況であると推察することができるのではないか。もはや、主権国家としての独立性が重要な要素となるが、アメリカとの同盟が強固になればなるほど、日本の独立性が欠け、軍事バランスがひっくり返されることになりかねないということも想定する必要があるのではないかと考えている。相互依存の増加は、同盟国同士が依存し合うことが増え、独立的な行動が一部制約される可能性があると言えるだろう。国際政治においては、これらの要素をバランス良く考慮することが、安定的で持続可能は同盟関係の構築に資するものと言えるだろう。

以上、日中の結婚事情と軍事バランスについての項目について、感想と批判を記述したが、結婚や恋愛における関係性は、軍事バランスの関係性にも似ていることもあり、日本が誰を選ぶのか、どの国とパートナーシップを結ぶのかについては、自分が誰をパートナーにするのかなどの自分の立ち位置を冷静に明確に認識することが、大切な要素であることをあらためて学んだと言えるだろう。

以上(約6,126文字)


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