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コーヒーについての私的考察 10.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

サードウェーブという波にのれず、いまや溺れかけの状態にあるぼくの関心事といえば、「次はあるのか?あるとすれば、それは何なんだ?」ということになる。

サードウェーブと名付けちゃった以上、次はフォースウェーブで、その次もあるならフィフスウェーブなのか?
もしそこまで進化したコーヒーがあったなら、それはスーパーウルトラハイパースペシャルティコーヒーとでも呼ばれるのだろうか・・・いや、そのころにはもうぼくはいないだろうから何でもいいか。
と、あれこれ想像してみたりする。

コーヒーも進化、志向するのは、食べものと同じでやはりそっちなんだ。

サードウェーブの特徴を見聞きしはじめたとき、ぼくが感じたのはこれだった。
これは ”素材(豆)本来の味や香りを活かし” といったことを指していて、食品、飲料である以上その方向性は誰が聞いても正しいと思うけれど、ぼくはこれ以上があるとするなら何処へ向かうのだろう、と率直に思う。
もし素材や焙煎の進化が行き着くところまで行ったのなら、そのうちほとんど焙煎しないとか、お茶のように水出しになったりするのだろうか。

ぼく自身はパンを含め長年食べもの屋さんでありながら、かなり素人目線の人間だと自覚しているけれど、そんなぼくがサードウェーブというものに惹かれなかったように実は同様に感じていた人は意外と多いのではないかと正直思っている。
こういったことを書くと「昔ながらの喫茶店は良かった」といった話になりそうだけれど、ぼくがここで感じているのはそういった懐古的なことと違い、これ以上、進化の余地はあるのか? またそれは本当に必要なことなのか?といったことを指している。

実際、サードウェーブで括られるお店にはセカンドウェーブの象徴と思うマシンを使ったメニューが共存しているし、もしかしたらお店によってはサードウェーブブーム真っ只中でも注文数でいえば、ラテやカプチーノといったセカンドウェーブの方が多かったりするのではないかとさえ想像する。
 
ぼくは料理に対する印象として、日本料理はできるだけ足さない引き算の志向で、フランス料理は加工することに妙がある足し算(あるいは掛け算)の志向だと思っている。もちろん一概には言えなくて、日本料理にも足すことや掛ける部分はあるし、それはフランス料理も同様。
そして現代のフランス料理は日本料理の志向に近くなってきたと思っている。

これをコーヒーに置き換えて考えると、セカンドウェーブの象徴であるエスプレッソやラテ、カプチーノ、カフェ・オ・レなどは、加工することの妙という意味でフランス料理に近いと感じるし、そういった意味でスペシャルティコーヒーは、最先端とされる現代のフランス料理に近い気がする。
スペシャルティコーヒーを日本料理でなく現代のフランス料理に近いと思うのは、コーヒーもフランス料理もセカンドウェーブ(加工することの妙)という時代を経て素材重視、素材の良さを引き出すといった価値に行き着いたという共通点があると思ったから。

だけど、飲食に限らず最先端のもの=必ずしも良いもの、需要あるものとは、ぼくには思えなかったりする。
というお話は、次回。

つづく


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