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通貨のこれから 【 リブラ・COMEMO企画 】

日経COMEMOテーマ企画がまた始まりました。

既に企画に投稿されたnoteを拝見したところ、専門家の皆様ばかり。「さすが専門家だ」という思いとともに「これは素人が書かない方がいいかな・・」と思いました。

・・しかし、企画した方も、的外れでも一般庶民の投稿も期待しているかもしれない。もしリブラが始動したら、利用する大多数は一般人だし。

という事で、専門家の皆さんから苦笑される可能性が大なのですが、せっかくなので素人意見を投稿してみます(お手柔らかにお願いします)。

♦ 通貨のボーダレス化は必然?

■ 経済、取引のボーダレス化

グローバル化、ボーダレス化という「言葉」も、既に目新しいものではなく、「古さ」すら感じるくらい定着しています。

一昔前は、海外の友人と連絡を取り合うにも、国際通話か・・と不便さを感じていましたが、今やネット環境さえあれば全てがクリアになります。

抵抗のあった海外通販もサイトや決済方法等が整備され、より手軽に利用できるようになりました。

この数年で、沢山の「抵抗感」が解消されている。今までの人類史上、一般の人々がここまで、世界中とワンクリックでつながる、取引する環境は無かったでしょう。

国が、大企業が、ではなく、個人レベルで、売買について国内か海外かを気にしなくなっている。

ただ、「決済方法」だけはそれぞれの国の通貨がメインです。この点、未来の人からしたら「?」な状況なんだろな、なんて思います。

やはり「通貨のボーダレス化」は遅かれ早かれやってくる、という事かなと思います。

■ 仮想通貨への抵抗感

「通貨のボーダレス化」は仮想通貨ではなく、法定通貨であるべきという意見もあるかもしれません。ユーロのように圏内共通通貨はありますが、世界共通通貨みたいなものは、政治的に実現可能性が極めて低いですよね。

ビットコインのような投機的仮想通貨ではなく、電子マネーの延長線にあるようなステーブルコインのリブラ。

「価格が安定しているとはいえ、仮想通貨でしょ?」という抵抗感。現段階の説明を見る限りでは、FBの利用の延長線にあれば、利便性が高さから、抵抗感なく、すんなり個々人には受け入れられるように感じます。

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♦ 整備の問題

リブラに対する法整備。これは専門家でないので、変なコメントはできないのですが、「グローバル化と法整備」という視点なら、ちょっと職業的に知っている分野があります。「会計」と「税務」の世界です。

■ グローバル化への対応(会計の世界)

会計の世界は随分と前から、グローバル経済に対応すべく世界共通の「国際会計基準IFRS」の導入、実施を掲げてきました。国際会計基準委員会の発足は1973年です。

上記は金融庁が平成29年に報告書類として用いた図です。IFRS強制適用国はオレンジの国。多く見えますが、日本は国際会計基準を強制ではなく、企業に選択させる任意適用。アメリカや中国もオレンジではありません。

そもそも各国には、各国に適した自国の制度があります。これだけグローバル経済となっても、会計ルールはなかなか統一できません。

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■ グローバル化への対応(税の世界)

同じく税制。こちらはもっと厄介。

今、世界の大国の多くが法人税の引き下げを実行しています。

表向きは、景気調整や経済対策ですが、グローバル企業や優良企業が法人税が低い国へ流出することを防ぐための攻防でもあります。

経済産業省の「平成29年度 法人税改革の影響及び 諸外国の税制改正動向に関する調査」 より。

日本だけの法人税推移は以下参照。(財務省より)

日本も法人税率を23.9%を23.4%に、そして今は23.2%とジリジリ引き下げました。

税制は、政治です。この間のG20で話題になったデジタル課税の問題も、対応はこれからです。

現状でも、税制はグローバル化に追い付いていません。というか、企業や個々人はボーダレスな動きができても、国は国取引がボーダレスでも、正式な国境は当然ながら消えません

各国がグローバルな租税回避に対応すべく税制改正しています。国と国の条約も作っています。

「自国を守ること」

先月の記事にあるような、協調ではなく攻防がどうしても生まれます。

■ 小括

法定通貨ではなく、国が運営するものではないブロックチェーンが大きな存在感を持った時。ますます、全世界的な協調、連携が必要だと推測しますが、それができるだろうか。

極論ですが、「国」という枠組みで縛ることがどんどん困難になっていくように感じます。(まあ、それを求めている人たちもいるのでしょうが。)

♦ まとめ

■ 便利さと引き換えに・・

私はリブラ自体、否定派ではなく受け入れる派です。ずるい表現かもしれませんが。

遅かれ早かれボーダレスな通貨が始まるのであれば、どこかの国による国家政策や、よく分からない団体による運営ではなく、全世界で周知、利用されているFBからの発信はメリットが大きいだろうと思います。

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ただ、利便性が増し続ける世の中に、たまに「怖くなる」ことがあります。

というのも、ここからはリブラ問わず、最近読んだ本の話です。

父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 ヤニス・バルファキス,  ダイヤモンド社, 2019年

ベストセラーなので、既に読んだ方も多いと思いますが、この本を読んで、いかに自分の周りに「原理のわからないもの」が溢れているか気付かされました。

市場と交換価値は、私たちの小さな世界を超えて無限に広がっている。

本の書評は下書きしてあるので、また投稿しますが、この本では度々、映画の「マトリックス」がでてきます。よりよい世界を、より便利な世界を作ろう、と皆が望めば望むほど、理解できない仕組みのものが身の回りに増えていく。「理解」というのは、単に「知っている」ではなく、自分が作り上げたり直したりできる範疇を超えるものです。

アイデアにはもともと破壊的な要素が秘められている。アイデアには物事を変える力がある。(アイデアのヒント , ジャック・ファスター , CCC , 2003年,116頁)

新たなアイデアは、ワクワクしますが、その裏で失われるものもある。世界がつながるメリットも、裏を返せば、コミュニケーションの場が、「直接」ではなく、ネットを通じた時間が増え続けること。無限に広がるという事は、その分、密度はどうなるだろうか。普段は便利になることにワクワクしていますが、たまに、ふと立ち止まって考えると、こうやってどんどん常識が変わっていくのかな、と思います。・・まあ、こんなこと言いだすと、「古い」と言われますし、そもそもリブラから脱線しすぎなので、ここら辺で止めておきます(笑)。

■ 通貨の民主化

最後に、父が娘に語る経済の話からもう1つ引用します。

通貨が政治と切り離せないことを認めたら、われわれにできることはひとつ しかしかない。通貨を民主化することだ。ひとり一票の重みを通して、通貨を管理する力を人々の手に与えるしかない。それがわれわれの知っているただひとつの防御策だ。もちろん、通貨を民主化するにはまず、国家を民主化 しなければならない。それは、かなりの難題だ。だが不可能ではないはずだ。

個々人が、リブラを利用すること自体は、トラブルが多少あっても一般的に順応するだろうなと勝手に思っています。

問題は、やはり「リブラ」と「国・組織」の関係。利用者の安心が確保されるか否かの整備だけでなく、むしろ、各国が金融政策や経済に大きな影響を与えるあろう仕組みをどう受け入れるために整備するか。

仮想通貨がどうとか、FBがどうとかではなく、通貨の民主化への対応という視点が今後も重要だと思っています。

以上、思い切って、ド素人が書いてみました。

書いてみて、もっとリブラを詳しく知りたいと思えたので、順番が逆ですが、これから私もしっかり学びたいと思います。

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(参考文献)

 #ニュースで語る #COMEMO #Libraを私はこう評価




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