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カナン関係

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架空世界カナンについてのテキストや、その世界を舞台に書いた小説などを入れたマガジンです。
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記事一覧

「架空世界カナン」の話

 昔、ゲムルという会社を立ち上げてPBM(大人数での手紙によるやりとりで行うTRPGみたいなもの)をやっていたときに、このゲーム用というだけでなく、誰がどう使ってもいいシェアワールド的なものを作ろう!と作った架空世界がある。

 それがカナンだ。
 ここ数年は、ちょっと放り出してあるけれど、まあ私の心のどこかはこの世界にあると思う。
 剣と魔法ではなくて、石と呪いのファンタジー世界。
 神様は山ほ

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カナンの「人生・波瀾万丈」ウナレ王妃

※架空世界カナンの人物を、歴史読本風に紹介したものです。
 カナンについては、こちらを。

 恋する軍師は最善を尽くす

 カヤクタナ王妃 ウナレ・ナンハバシク・ハンムー

 カヤクタナの王妃にしてカヤクウル建国の立役者となったウナレ・ナンハバシクは、夫であるモロロット二世のため、そして彼の愛した祖国のために「最善を尽くした」女性である。
 ウナレ王妃が求めたものは、愛するモロロット二世との幸福な

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ラッハ・マク! プカプカ!

 (第一回) 旅の女紙芝居屋 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、それじゃあプカプカの話をはじめよう。
 昔々、本当に昔々のおはなし。
 この世で最初にムングの絵札(※1)を作った少女、プカプカのおはなしをな……。

       *     *     *       
 ンブツ神の源たるゴヌドイル河(※2)、その岸辺の乾ききった大地に、川面を渡って一陣の風が吹いた。
 ひび割

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ラッハ・マク! プカプカ!

 (第三回) 密林と猿 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、ではプカプカの話をはじめよう。
 昔々、本当に昔々のおはなし。
 この世で最初にムングの絵札(※1)を作った少女、プカプカのおはなしをな……。

    *     *     *    

 プカプカの耳元で、ひゅうっと風が鳴った。
 あらゆる風の神の中で最も身近な神、フェム(※2)の作る風。
 気づいたときにはもう遅

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ラッハ・マク! プカプカ!

 (第五回) 純潔なる邂逅 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、ではプカプカの話をはじめよう。
 昔々、本当に昔々のおはなし。
 この世で最初にムングの絵札(※1)を作った少女、プカプカのおはなしをな……。

「ハックァンフ!」
 プカプカは、唐突にくしゃみをした。
 それも、こんな時に限って、“屋根飛ばし”のフウブウ親父(※2)みたいな威勢の良いのを……。
 案の定、真昼の日差

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カナンの小さな神話1

 魚になった叔父と甥・その1 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、それじゃあムング(神々)の話を始めるとしようか。

 昔々、まだ、あの旅の紙芝居師プカプカ(※1)がムングの絵札を作りながら旅をしていた頃のこと。ゴヌドイル河の岸辺の村に、蟹採りを生業にしていた漁師が住んでいた。
 漁師は蟹を捕まえるのが大そう上手で、毎日のように小さな船で漕ぎ出しては、川底の蟹をごっそり捕まえてき

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カナンの小さな神話2

 恐ろしい棒のはなし さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、それじゃあムング(神々)の話を始めるとしようか。

 今日は『恐ろしい棒の』話をしよう。
 昔々、密林が育つよりもずっと前、まだ北の果てのラガト山脈が人の地だったころ(※1)、その山のふもとに小さな村があった。
 山から流れる川のおかげで村は豊かだったが、ある年、ひどい干ばつになった。雨の季節だというのにさっぱり雨が降らん

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カナンの小さな神話3

 生き返りお菓子・その1 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、それじゃあムング(神々)の話を始めるとしようか。

 昔々、まだヴラスウルがセモネンドと呼ばれていた頃(※1)、ある密林の近くに一人の若い罠猟師がいた。罠猟師とは、森や水辺に小さな網や罠をしかけて獣や鳥をとる生業のことだ。
 ある日のこと、猟師が罠を調べに行くと、森に張ったルテ網(※2)に、綺麗な五色の小鳥がかかってい

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カナンの小さな神話4

 金持ちと魔蛸・その1 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、それじゃあ、ムング(神々)の話を始めるとしようか。

 人はひょんなことから大事に巻きこまれる。ぼんやりした奴や一途な奴ほどムングに目をつけられるからだ。今日はそんな話をするとしよう。
 昔々、ゴヌドイル河のほとりに一人の貧しい若者がいた。
 川底のミク(※1)を採ってはウラナングの家々に採りたてのミクを届けるのが、彼の

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カナンの小さな神話5

金持ちと魔蛸・その2 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、それじゃあ、ムング(神々)の話の続きをしようか。

 若いマイカ(※1)が向かった、ミク売りの故郷は、ウラナングから二日ほどゴヌドイル河を下ったところにあった。
 夫のミク売りは、腰に巻いたランギニョクからまたぞろ金貨を出して豪華な船を仕立てようとしたが、妻である美しい黒髪の娘がやんわりと止めた。
「だっておまえ様、私はお

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カナンの小さな神話6

金持ちと魔蛸・その3 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、それじゃあ、ムング(神々)の話の続きをしようか。

 さて、心配で気が気じゃない若者は、水牛に乗った役人たちが女房をさらったと思いこんで、彼らのあとをつけた。まあ、屈強なお供を八人も連れているんだ、怪しまれてもしかたない。
 水牛に乗った役人は岸辺を川下へと進んでいった。何か探しているようで、みんなして川をのぞき込んでいる

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カナンの小さな神話・追記

カナン神話の舞台裏※以下の文章は「カナンの小さな神話」を掲載した冊子の最終号に載せた、あとがき的な裏話です。文中の(注)は、転載するにあたって、補足として付け加えました。

 最終回ですし、今回は『小さな神話』の裏話でもしましょう。

●小さな神話の作り方
 最終話をのぞく全ての作品は、いずれも私一人の創作ではありません。実はカードによって作り出されたものなのです。
 ここで言うカードとは神話を作

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