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さて何を編集しようかな

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映画「騙し絵の牙」(主演 大泉洋)

観る前に大泉洋が主演だと知って、どうせしょうもないコメディなのだろうと思った。NHK紅白の司会を務めるなど大泉洋は今や国民的タレントとなったが、私の中では未だ地方局北海道テレビの「水曜どうでしょう」のままなのである(あれはしょうもないのが好かったのだ)。

そんなわけであまり期待していなかったのだが、観てみるとこれが意外と好かったのである(そもそも、コメディではなかった)。

この物語の根底には、出版業界の特異な構図──書籍は取次を介して一緒に流通する雑誌に依存していて、雑誌は広告に依存している──がある。Amazonのようなオンライン書店の台頭と街の本屋の衰退も、この構図と無縁ではないだろう(もちろん、本の販売は場所を取るわりに地価の負担力が低いなど他にも理由はある)。

だが大泉が演じる速水編集長は、その構図を逆手にとって利用しようとする。現実的には有り得ないのだろうが彼が言うように、だからこそ面白い。観ていて痛快である。

「俺が編集するのは雑誌や本とは限らない。次は社会かも……」

と速水は言った。そんな彼を観ていて昔の自分を思い出した。業界も違うし、もちろん社会を編集しようなどと大それたことを考えていたわけではないが、それでも社会にインパクトのある仕事はしようとしていた、あの頃──。大変なことばかりで、きつい毎日だったけど、たしかに私の職業人生で一番輝いていた時期だった。

松岡茉優(彼女は普段あまり好みではないが、この役はとても好かった)が扮する高野恵は速水の下を辞めて、その後「出版もする小さな書店」を立ち上げた。私もこの小さな図書館で過日2冊目の本を編集出版した。さて、次は何を編集しようかな……。

画像引用元 ホミニス

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