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中国人妻の苦悩・・・日本人の社交辞令と家族観

前回の記事で、中国江蘇省で生まれ育った妻が日本に来て良かったことを書きました。たくさんの方に読んで頂きありがとうございます!まだお読みになってない方は是非こちらも合わせて宜しくお願いします。

今回はその逆で、日本と中国の文化の違い、日本人との価値観のギャップで悩んだことを中国で20年、日本で10年ほど暮らした妻に聞きました。日本人である私も半分共感できる内容だったので、どちらが良い悪いではなく、あくまで一人の中国人の考え方として捉えて頂ければ幸いです。

社交辞令が多すぎてコミュニケーションに疲れる

これは多くの方にも共感頂けると思いますが、日本語は社交辞令の宝庫。仕事の取引先とのやり取りはもちろん、プライベートでも、時には友達や家族に対しても息を吐くように社交辞令が出てくる日本人。これは、世界中でも結構めずらしい文化かもしれません。
私が中国に留学していた時代にも、韓国人はまだ近い感覚はありましたが、ヨーロッパや東南アジアのクラスメイトと話していても、「市川(私の苗字)は気を遣いすぎだよ」としょっちゅう言われました。

あくまで私見ですが、その中でも特に中国人は感情を包み隠さずにストレートにぶつける文化があると感じています。

妻も、日本に来た当初はまだ日本語もほとんど話せず気づかなかったようですが、徐々に日本語を覚えて日常会話ができるようになってきたあたりから、日本人の社交辞令の多さが気になり始めました。特に仕事をする中で、お客さんから言われる社交辞令の理解に苦しんだと言います。

妻は美容系の販売員の仕事をしていますが、お客さんの「前向きに検討してみるね」→その場しのぎで全然検討しない 「一旦家族と相談して明日また来るね」→結局来ない こうした事が続くと嘘をつかれているような感覚に陥いってストレスフルな毎日が続いたそう。

正直、お客さんの中には商品を買うつもりはないけど、身の上話を聞いてほしい・・そんな人もいるかと思います。それも含めてある程度相手をしてあげるのが「お客様は神様」的価値観のある日本人の特性かと思いますが、妻にとってはそんな社交辞令合戦に費やす時間がもったいないから「NOならNOと先に言ってほしい」と感じるようです。

中国の場合は、お客さんが買わないなら「買わない」「興味がない」とはっきり言います。あるいは「値下げしてくれたら買う」と言って値切り交渉することはありますが、店員や販売員とお客さんのやりとりはお互いの損得のみ考慮するので短時間で済みます。

社交辞令という点では、私に対しても時折感じているようで、例えば中国に旅行して親戚と食事会をした際に散々お酒を飲まされたのですが、後から「いや〜しんどかったけど頑張って全員と乾杯したよ」と言ったら「嫌なら断ればいい!そんなことで誰も怒らない。逆に何でもハイハイYESマンになってる方が信用されない」と耳が痛いことを言われました。

言葉だけでなく”営業スマイル”もかなり難儀だったみたいです。中国に行った事がある方はわかると思いますが、店員はお客さんが来たら反射的に「ニコッ」と営業スマイルを作る日本のような習慣はほぼありません。気持ちいいぐらいぶっきらぼうです笑 不思議なもので慣れるとこれはこれで気楽でいいなぁ〜と感じたりもします。

日本に来て10年、妻も公共の場では営業スマイルや空気を読んで会話する・・といったことができるようになりましたが、今でも非効率だなぁ〜と疑問は持っているようです。

また、中国人は声が大きいという話も別の記事でしましたが、

中国人は他人の騒音に比較的寛大です。中国で電車とかに乗るとイヤホンすらせずに音楽を聴いたりゲームをしている若者もいますし、車内で大声で喧嘩したりというのは日常的な風景。でも、周りの人もそれを「うるさい!」と咎めるようなことはほぼないのです。

日本人の思いやりは確かに素晴らしいと思うけど、人目を過剰に気にしたり、絶対に他人に迷惑をかけてはいけないというプレッシャーが日本では常にあるというのが妻の実感でした。

その分、私たち夫婦間のコミュニケーションは喜怒哀楽全開。せめて家庭は言いたい放題で心休める空間にしたいと思っています。

家族に対して冷たい・・・

夫婦間の会話で一度だけ妻を泣かせてしまったことがあります。今でも猛省しているのですが・・・
ことの経緯としては、結婚前は妻のお義父さんのことは「叔叔(おじさん)」、お義母さんのことは「阿姨(おばさん)」という呼び方をしていたのですが、妻は婚約したその日から、「今日からみんな家族だから(妻の)父と母のことは、爸(お父さん)、妈(お母さん)と呼んで」と言われました。妻の両親もそこから私に一気にフレンドリーになりました。

一方私の両親と妻は結婚前に2回くらい対面したのみで婚約に至ったのですが、婚約後に食事をした際に、妻がそれまで両親に敬語だったのが急にタメ口になっていて、当時の距離感的にちょっと私の方が気になってしまったので「もうちょっと段階的にタメ口に変えるのがいいんじゃない?」と話したところ、妻はポロポロと涙を流し「なんで家族なのに敬語なの?家族として認められてないみたいで悲しい」と漏らしました。私の両親もすでに妻と仲良くなっていたし、今考えても的外れなことを言ってしまい、妻を傷つけてしまったことには後悔しかないのですが、その経験が中国人の家族・親族との距離感の学びにはなりました。

また、妻は私の家族との距離感にずっと違和感を感じていたようです。私は社会人になってからは実家に帰省するのは年に数回、少ないとお正月しか帰らないみたいな年もあったのですが「それははっきり言って異常だよ」と言われました。また、弟と会ったり連絡を取る機会はもっと少ないのですが、「弟くんに近況連絡して!」といつも妻からプッシュされます。確かに私は親不孝者の人でなしかもしれませんが、日本では結構このぐらいの頻度で家族と接している人も多いのではないでしょうか。

その後、妻に説教されたおかげで、今では月に数回実家に帰り母の病院通いをアテンドしたり、妻も一緒に私の両親と食事する機会も増えて、だいぶ親子関係が近くなりました。母も「アンタ、突然どうしたの?」と言いつつ、やっぱり息子と会えるのを嬉しそうにしています。嫌いなわけではないけど、照れもあって遠のいた家族関係を近密に戻してくれた妻には感謝しかありません。

中国では家族/親戚という分け方をあまりせず、親戚もみんな家族という価値観があります。もしかしたら昭和時代の日本の大家族や、地方の親戚関係もこれに近いのかもしれません。
今、妻の中国側の親族は日本に10人ほどいますが、ことあるごとに食事をしたりお祝いしたり、私が単独にお義父さんに食事に誘われることもあります。ここまで家族に拘束されるとうっとおしい!と感じる人もいるかもしれませんし、それも正しいと思います。現代の価値観としては多様性を認め、それぞれの家族の形として自由な選択肢があって然るべきかと思います。
それをふまえて、私が飛び込んだ中国の伝統的な家族のあり方は、温かくて心地よいと感じています。

去年の9月、妻や妻の両親、妹らと一緒に中国江蘇省に帰省したのですが、日本に帰国し直後、羽田空港で妻がポツリと言った一言が妙に耳に残っています。
「中国と日本の中間ぐらいがいいね」

これは文化、習慣、社会、様々な要素を加味した深い言葉だなぁ〜と勝手に解釈しました。僕も妻に激しく同感です。






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