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映画が好きです。 ホラー、サスペンスの要素の中に人間に対する深い洞察があるような作品が…

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映画が好きです。 ホラー、サスペンスの要素の中に人間に対する深い洞察があるような作品が好みです。絵も描きます。

マガジン

  • マントルおじさん

    自作短編小説「マントルおじさん」

最近の記事

うちのネコ その2

    • うちのネコ

      • 模写♯3 クロソウスキー③

        • マントルおじさん 最終回「レクイエム」

          「ところで、さっきわしが料理をしていたとき、君は何をしてたんだい?」 スプーンでカップの中のコーヒーを掻き混ぜながら、マントルおじさんが私に尋ねた。 私は何も飲んではいなかった。 「おじさんの書斎らしき部屋で、ヒトラー関連の本を読んでいたんですよ。でもヒトラーの写真集なんてものがあってびっくりしましたよ。購入する人もあまりいないでしょうね」 「でも君はその写真集を見たんだろう?君だって私と同じディレッタントだよ」 「いや…、はは…まあ…」 マントルおじさんはコーヒーを一口飲ん

        うちのネコ その2

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        • マントルおじさん
          5本

        記事

          マントルおじさん 第4回「ディナー」

          「席に座りなさい。食前のお祈りをしよう」 私が席に着くと、マントルおじさんは何やら日本語以外の言葉を流暢に唱えた。 そして私に食べるよう手で促した。 「どうじゃ。びっくりしたじゃろう。お前の好物はわかっておった。わしには何でもお見通しじゃ」 自慢げにこう言うと、マントルおじさんはフォッフォッと西洋人のおじいさんのような笑い方をした。 「アサリのクリームパスタにマルガリータ、パンプキンスープにシーフードサラダ、エビフライにコロッケ。何でもある。たんとお食べなさい」 料理はそれだ

          マントルおじさん 第4回「ディナー」

          模写♯2 クロソウスキー②

          模写♯2 クロソウスキー②

          マントルおじさん 第3回「食事の用意」

          マントルおじさんの家はたいそう可愛らしかった。 若い女性の部屋のようでもある。壁は暖かみのあるオレンジ色だった。 ちなみにテーブルクロスは赤に白の水玉模様だった。 私がテーブルについて待っていると、マントルおじさんは大きな皿にたくさんのクッキーとカフェオレを入れたポットを運んできた。 「このクッキーはもしかしておじさんお手製のものですか」 「そうじゃ。なかなかの出来じゃろう」 私たちはひとしきり無言でクッキーを齧った。確かに美味しかった。 「おじさん、ここは本当にマントルなの

          マントルおじさん 第3回「食事の用意」

          マントルおじさん 第2回「深部へ」

          私たちは40分くらいの間、黙々と地面を掘り続けた。 そろそろ互いに疲れてきた頃(マントルおじさんは60歳を超えているようだ)、私のスコップが何か金属のようなものにぶつかり、カキンという音を立てた。 そのとき、マントルおじさんの眼が一閃した。 「そらきたぞ!」 こう叫んでマントルおじさんはまるで体力を取り戻したかのように、凄まじいペースで掘り出した。瞬く間に鉄製の梯子が地中から姿を現した。 私はまさかと思った。 「さあおいで」とマントルおじさんがはしゃぎながら語りかけるので、私

          マントルおじさん 第2回「深部へ」

          マントルおじさん 第1回「邂逅」

          某日の午後1時頃、私はマントルおじさんに出会った。 私は神社で鳩に餌を与えているところだった。マントルおじさんは自然に現れた。 「やあ。動物が好きなのかい」 「動物が好きなわけではないんです。動物に餌付けするのが好きなんです」 マントルおじさんは水色のハットを被り、 水色のズボンを履きサスペンダーをしている。背が高く、きっと180センチはゆうに越すだろう。 「うむ。餌付けが好き、ね。それはおじさんもわかるよ」 マントルおじさんは口髭をいじりながら喋った。 「ところでお嬢さ

          マントルおじさん 第1回「邂逅」

          鼠を飼っていた話 (短編小説)

          12歳くらいの頃、ほんの一週間ほど私は鼠を飼っていた。 長方形の木箱の中に扇形のチーズと牛乳を注いだペットボトルの蓋とを隅に置き、即席の入院部屋を用意した。 鼠は壊れた傘の中に瀕死の状態で横たわっていた。なんの気なしに私がその傘を持ち上げるとその中にいたというわけである。 念のために書いておくがそれはれっきとした鼠であり、ハムスターなどではない。不潔の代名詞として昔から名高い、あの灰色の小動物である。 私が入院部屋の中にチーズを入れたのは、患者が鼠だったからである。やはり鼠と

          鼠を飼っていた話 (短編小説)

          模写♯1 クロソウスキー

          クロソウスキーの絵に強烈に惹かれる。 なぞれば彼の言わんとすることがわかるかもと 微かな期待を抱きつつ。

          模写♯1 クロソウスキー

          読書感想文「ネクロフィリア」

          図書館の棚に異質な煌めきを放つ背表紙。 マラルメの詩集を借りにきたつもりが… 久々に直感的に本を手にとった。 結論からいうと大吉をひいた。 単にどぎつい描写だけなら私も読まない。 何か格式の高さを感じたので借りた。 気高さと可笑しみが交錯する。 愛好家同士が、墓場でお目当ての死体をめぐってさながら競争を繰り広げる姿に笑わずにいられるだろうか。 「新年は、よき伴侶と一緒に祝う。」 よき伴侶とはもちろん死体のことである。 生者からアプローチを受けると 「きみも生きてい

          読書感想文「ネクロフィリア」

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          私の部屋に住んでいる猫 イラスト集

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          寂しさに寄り添うUber eats 続き

          Uber eatsの素晴らしさを力説してから一年以上が経過した。 いまもお世話になっている。 もちろんサービスは変わらず素晴らしい。 しかし気づいてしまったのである。 たとえ置き配のUber eatsでもドキドキしてしまうことに。 スマホに「もうすぐ到着です」の通知が来ると緊張してくる。 配達員の方のバイク音がきこえると緊張してくる。 ガサガサとドアの前に商品を置く音、配達員の気配に私も猫も神経をとがらせる。 バイクの音が遠ざかっていくとようやく胸を撫でおろし、コソ泥

          寂しさに寄り添うUber eats 続き

          生産性という呪縛

          すべてが幻想だと自分に思い込ませるようにしていても、幻想とは強い効力を持つから幻想なのであり、なかなかそこから目覚めることができない。 結局は今日も生産性やらお金やらの幻想(魑魅魍魎に見えるときがある)に取り憑かれて終わったのであった。

          生産性という呪縛

          オテサーネク

          先日ヤン・シュヴァンクマイエルの「オテサーネク」を観た。 チェコ民話をベースに制作されたダークファンタジー映画である。 むかしむかしあるところに子供のいない夫婦がおり、ある日夫は庭で赤ん坊そっくりの形をした切り株を掘り起こす。 妻はたいそう喜び、その切り株にベビー服を着せ、それはそれは可愛らしいボンネット(頭にかぶせるヒラヒラしたやつ)まで付けさせる。 名前もオーチカと名付けた。 その強い愛のせいか、やがて切り株に命が宿り生きている人間と同じように動き、声を発し、ミルクを

          オテサーネク