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Dear Mom (アメリカのマムへ)

私にはアメリカにMom(お母さん)と呼んでいる女性がいる。彼女はもうすぐ94歳になる。
 
Momとの出会いは、30年以上前だ。私は、その先にあるアメリカ留学を念頭に、大学1年の夏休みの1カ月、東海岸でホームステイをした。
 
受験英語には自信があったものの、英語圏の世界に足を踏み入れるのはその時が初めて。英会話も流ちょうとはいいがたい。

 
昼間は語学学校や課外活動に出かけるが、毎日ツナサンドイッチかピーナッツバターとジャムを合わせた”PB&J”と一緒にブラウニーやフルーツを詰め合わせ、ランチを持たせてくれた。夜は肉を食べない私のために、魚料理を中心とした手作り料理を振るまってくれた。ホームステイ先では夕飯はインスタント食品が中心といった家庭があるとも聞いていたので、そのおもてなしに感激した。

 
食事に限ったことではない。週末になると、地元のフェスティバルや音楽祭のようなところに連れて行ってくれ、友人の家にも遊びに行った。

 
Momと彼女の夫(Dad-私はお父さんと呼んでいた)は60を過ぎ、すでに退職していたので、時間にも余裕があったのだろう。5人子供がいて、みな独立していたので、大学生の私を一番下の娘のように扱ってくれた。Momは退職前、小学校の先生をしていたこともあり、外国人の学生を家に迎え入れるのは初めてだったようだが、とても忍耐強い。

 
彼女のひいひいおばあさん(great-great-grandmother)が宣教師として、日本のとある高校の創立者の一人だったとのことで、日本にも縁があったらしい。日本にも、その高校からの招待で2度来ていて、来日時に日本人に親切にしてもらったとのことで、知り合いを通じ、ボランティアで日本人学生を受け入れる家庭を探していることを知り、迷わず手を挙げたらしい。

 
私が、大学卒業後にアメリカの大学院を考えていると伝えたら、彼女の住んでいる州やその近隣州の有名な大学まで週末に連れて行ってくれ、キャンパスの雰囲気を体験させてくれた。

 
アメリカでは、思っていることをはっきり言わないとダメ、とか、英語になると少し弱気な私の背中を押してくれた。

 
その翌年も、親友と共に、MomとDadを訪れ、1週間滞在。友人もアメリカの一般家庭の雰囲気を楽しみながら、彼らの優しさにいたく、感激していた。
 
Dadは残念なことに、その2年後に亡くなった。

 
その後、大学院への留学中も、サンクスギビングやクリスマスなどのイベントに私を迎え入れてくれ、記者になってからも、私の(英語での)記事を読み、感想まで送ってくれた。

 
最後に会ったのは8年前。その後は、手紙のやり取りや彼女の娘の協力で、時折オンラインで話したり、交流は続いている。もう一度会いたいけれど、今は高齢者向けの住居に住んでいるため、私が行くことで負担をかけたくない、という気持ちのほうが強い。

 
以前、記事にも書いたが、Momに出会っていなければ、おそらく今の自分はいないだろう。


彼女はどんな時も、優しくてチャーミングで、知的で、ユーモアのセンスがあって、そして強い。
私が大学生の時から、年を重ねながら、あのような女性になりたいと思えるほど、素敵な女性だ。

 
この出会いに、感謝してもしきれない。

 
海の向こうにいるもう一人のお母さん。

Happy Mother’s Day!!

最後になりましたが、クロサキナオさんのこちらのイベントに参加します!

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