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ほむほむに、短歌を詠まされるわたし

限られた文字数で表現する。編集の仕事は短歌を詠む作業とちょっと似ている。

ほむほむ(穂村弘)に魅了されて早くも3週間が経ち、わたしの短歌歴も早くも3週間となった。わたしの「ほむほむワールド」の入り口はエッセイ(『もしもし、運命の人ですか。』)だったのだが、そもそも穂村弘は歌人なので、短歌を詠めばもっとほむほむのことを理解できるに違いない! と思い、短歌への興味がむくむくと湧いてきたのである。そんなこんなで、ここ3週間は毎日1〜2首ずつ短歌を詠んでいるというわけ。

短歌を詠むのなんて中学か高校の授業ぶりだから、いかんせん知識がない。そこで短歌ビギナー向けの本を探していたところ、この本にたどり着いた(というか、ほむほむの本だから当然の成り行き)。短歌がひとを感動させるためには、重要なふたつの要素があり、それは共感と驚異だという。それはなぜなのか、さまざまな歌人の作品を例に挙げてわかりやすく説明がなされており、ふむふむとうなづきながら、また自分なりに歌を詠んでみる。

本書を読んだことでよかったのは、現代においてどんな歌人が活躍しているのかをなんとなく俯瞰することができ、そのうえでわたしは「口語体」の短歌が好きだとわかったこと。次は俵万智や東直子の歌集を読んでみようという方向性も見えた。さらに、ほむほむはラジオ番組などであんなに物腰のやわらかい話し方をするのに、かなりの「異端児(いや、変態?)」であることも判明した。こういう男に引っかかってはいけないと経験上理解しつつも、それでもやっぱりわたしが惹かれるタイプだとわかり、納得したんだか不安になったんだか……。

この本を読み進めるなかで、久しぶりに大学時代の先輩に連絡をした。その先輩とはよく一緒に絵を描いたり、本や映画の話をしたりした仲で、卒業後も親しくしてもらっている。そして野生の勘(?)が当たったのか、彼は短歌をやっていた。ビンゴ。さっそく、わたしがつくったほやほやの短歌たちを見てもらうことになったのだが、改作例を挙げてもらったり、お互いに歌を贈り合ったりして、なんだか楽しかった学生時代に戻ったような気分になり、少し感傷的になった。きっとこんな気持ちも歌にしたら、いい作品ができるのかもしれない。

コピーライターで短歌をやっているひとも多いという。わたし自身、編集者として記事のタイトルや見出しを考えるなど割と近い仕事をしているので、それには納得だ。記事本文を書くのにももちろん根気と熱意が必要ではあるが、やはり読者が最初に目にするキャッチ部分を考えることは最も大変な作業のひとつである。限られた文字数の中にどんな言葉を並べるのか、それは短歌を詠む作業と似ている。短歌を続けることは、とてもいいトレーニングになるだろうという確信が持てた。そんなわけで近々、とある歌人の会に入るつもりだ。新しいことをはじめるときは、いつもたのしい。

短歌という爆弾 - 今すぐ歌人になりたいあなたのために
穂村弘/著
小学館、2013年/刊

もしもし、運命の人ですか。
穂村弘/著
角川文庫、2017年/刊


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