見出し画像

ユッケジャン、すっぽん雑炊、ラムと生茴香の炒め物の日。

冷凍庫の作り置きスープのストックが切れたので、昨日買ってきた材料で朝食後にユッケジャンスープを作る。今回は牛ではなく豚スペアリブを使ったバージョン。スペアリブを柔らかく茹でる間、昨夜寝る前に重曹入りの水に漬けておいたワラビ、白菜、もやし、ニラをそれぞれ茹でて水気をよく切っておく。スペアリブが柔らかくなったらお湯から上げて肉をほぐし、野菜と一緒にボウルに入れて、小麦粉、コチュジャン、ニンニクのみじん切り、胡麻油、醤油を加えて手でよく揉み込む。韓国料理研究家のなすんじゃ先生に教えて頂いたレシピで作ると、いつもそれほど沢山の汁物を飲めない私でも、ぐいぐいと体に入っていく。塩も醤油も味噌もそれほど多く入れないのにしっかりした味が出ていて、それなのに後味はスッキリしている。結局その“しっかり味”は塩分ではなく、一つ一つの材料の旨みを引き出し丁寧に重ねて行くことによる、重層的な厚みなのだということを実感する。

しばらく春を思わせる暖かい陽気が続いていたのに、今朝からまたぐっと冷え込んで2月らしい気温に戻った。何か体の芯まで温まるようなものが食べたくなって、午前十一時頃家を出て浅草に向かう。地下鉄の浅草駅を出て、観光客でごった返す浅草寺周辺を素早く通り抜け、観音裏の「辻むら」へ。お目当てはフグの唐揚げと、フグとすっぽんから選べる雑炊がセットになった、お得な「美人セット」。私自身フグはお刺身と唐揚げ以外あまり興味がなく、コースでもお鍋は要らないと思ってしまう人間。そして雑炊はフグよりもすっぽんが好みという訳で、「辻むら」のこちらのセットは本当に有難い組み合わせだ。香ばしいフグの唐揚げを食べながら、遠い大学時代をふと思い出す。今から二十数年前、まだ平成初期のムードを引きずっている人がごろごろ居たその頃。おじさんが女の子を喜ばせたい時に誘うお店の種類に、多様性というものはほぼ存在しなかった。そして冬になると彼らは凡そ、フグかすっぽんを食べようと声を掛けてきて、いつものコースを食べながら前年とほとんど同じ話をし、若者に豊かな経験をさせてあげたという満足感を漏らしながら寒空の中帰って行った。そうして今年の冬も、きっと大量のフグやすっぽんがおじさんの飼育願望と女の子の空腹を満たしている。

雨の中、都バスに乗って根岸で降り「コーヒー店ジァン」に入る。ご主人の指示通り、折り畳み傘を入り口に敷いてあるタオルの上に立て掛けておくと、しばらくしてご主人がわざわざ私の傘をタオルで丁寧に拭いて渡してくれた。有難い。店内の大きなテレビでNHKの番組が淡々と流れる中、ブレンドコーヒーを飲みながら窓の外をぼんやりと眺める。まるで時が止まっているようだと思いながらふと携帯の時計を見ると一時間以上過ぎていて、慌ててお会計をし電車で帰宅。冷蔵庫からラム肉の切り落としを取り出し、余計な脂肪を包丁で取り除いてから紹興酒と醤油を揉み込んで少し置いておく。その間に炊飯器のスイッチを入れ、昨日池袋の中国スーパーで買ったフレッシュのフェンネルを洗って水気を拭く。今夜のメインはラム肉とフェンネルの炒め物。あとは茹でたカリフラワーを軽くニンニクと炒めてから豆乳と一緒にミキサーにかけたポタージュスープや、人参の金平、緑豆澱粉の春雨を使った温かいサラダなど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?