ming lee

隙間のじかんを使って音楽を作ったりごはんを作ったりしています。 好きなものを表現するリ…

ming lee

隙間のじかんを使って音楽を作ったりごはんを作ったりしています。 好きなものを表現するリハビリ中です。

最近の記事

老いを見つめる

父親の病状が良くない。 1年半前だろうか、癌を告げられた直後に父と会った。 白髪が目立っていたが、威勢があり声に活力が感じられる人だった。 日が経つにつれ、父の様子が歪んでいった。 睨み付けるような視線、2.3往復で終わる会話。 頼りない背格好、痩せて浅黒くなった肌。 死の影がもしあるとしたら、こんな感じなんだと思う。 親は死ぬ。 私が車にひかれたり、暴漢に刺されたりしない限り私より早く死ぬ。 それに気づいたのは保育園の頃だった。 お昼寝で静まり返った保育室の中、なんとな

    • 腹一杯に食えるということ

      脳は疲労するらしい。 疲れた脳は生き抜くことを最優先にするから、 必要ではないものへの熱意が褪せるらしい。 金曜日の夜だけ聴きたくなる音楽を探したい 早起きしてでもあの映画を見に行きたい あの展示を見たら心はどう揺れる? 残念ながらすっぽりとこんな気持ちが湧かなくなっていた。枯れた頭のお仕事マシンである。 F判定、模試じゃなくて私のストレス判定のこと。 もう3ヶ月くらい瞼の痙攣が止まらない。 笑えないよ。 感性が砂漠になってしまったのを、なんとかしたくて 朝から晩までイ

      • 化粧売り場で「ネットでバズってたから」と正直に申告していいのか

        デパートの美容部員さんとのやり取りが少し苦手だ。 それは大概「うちには何を買いにきたの?」と聞かれるからだ。 そりゃ「○○を買いに来ました。理由は艶を出したくて、」とか言うのがベストだろう。 なりたい顔はいくらでもあるけどコスメをつかってどんな顔になりたいかまで進むとわからなくなってしまう。 ネットでバズってたから と言うまえに ネットでバズっていて、自分は何という効果に期待しているから まで言い切ってやっと接客をしてもらえるのかもしれない

        • セフレのベーコン

          それが見つかったのは12月も半ばのころだった 冷凍庫の奥の方から三口分ほどの「かたまり」と呼ぶには小さい厚切りのベーコンが出てきた あらま。 思わず声が出た ベーコンをくれた人は図々しくて家に着くと勝手にシャワーを浴びたり書きかけのノートを棚から出して読みはじめたり、何をするか予想も出来ず目が話せなくて困ってしまった わんさとボトル酒を持ってきて水道下の物入れにがさつに置いていった 何が一緒に飲もう、だ。一回も飲まなかったくせに 一人じゃ到底食べきれない山盛りのポテトサラ

        老いを見つめる

          化粧をする 自信が湧く

          化粧をする時間が好きだ 白湯をマグカップに注ぎソファにあぐらをかく 化粧水をスプレーして目が覚める ビューラーをすると眼力がみなぎる アイシャドウのグラデーションが自分のうすっぺらさを中和する チークは意見を言えない自分の情熱を食い止める 口紅は口角をあげたときにここぞと目立つ 自分の顔が昔から嫌いだ 大嫌いだ 腫れぼったく、目に生気はなく 写真を勝手に撮られようものならジェイムズブレイクみたいに首をぶんぶん振ってピンボケさせようとしていた 化粧で整形をしたように美しく

          化粧をする 自信が湧く

          食べるにも力がいるので

          食べることがとにかく好きだ 特にこってりした味付けが大好きだ ファミマのホットスナック棚は全種類食べている 出来ることなら私はポリグリップのCMにでてくるバゲットサンドをバリバリ食べる元気なじいちゃんみたいにいつまでも食べることを愛してやまない人間でいたい けれども最近、何か口にいれたいという気持ちが湧かなくて困っている 平日の食事は機械的で寂しい 5日間、同じ野菜のおかずを食べる朝食 水曜日あたりから飽きてきて味がしなくなる 大口あけて飲み込むスープで済ませる昼食 夕食

          食べるにも力がいるので

          指を怪我した冬のこと

          「あ」 声とはなんと遅い生理反射なんだろう 口に出したときは既に血がボタボタと流れていた 指先から爪の半ばまで、一瞬でよくもまあ切れたものだ。 友達には「血が止まんないからどーしたもんかと思って夜間病院にいったのよ」なんて余裕ぶりを出したけれど本当はそれなりに心細いし不安でもあった 土曜日の22時過ぎ、親指の先にキッチンスポンジみたいなフワフワを巻き付けられた異様で滑稽な私の生活が始まった 親指に恩を感じたことはあるだろうか 私はある 眼鏡のフレームに触れない 歯磨きチ

          指を怪我した冬のこと

          ヨーロッパとチェス

          アイスランド滞在中、2回チェスをしている現場に遭遇した。 レイキャビクを歩き回った初日に公共浴場に行った。 ブルーラグーンという観光用のばかでかい露天風呂が郊外あったけれど、一人旅でスパラクーアみたいなところ行ってもなあと渋ってしまったのだ。 温泉の国だしホステルはシャワーしかないし、深いお風呂入りたくない? お風呂大好き日本人、即決で「普通の公共施設」に行くことにした。 「シュンドホットリン」という名の公共浴場は近年リニューアルをしたようで清潔さが心地よかった。 館

          ヨーロッパとチェス

          外国に着いたら深呼吸をするはずだった

          「私は海外に到着したんだぞ~!!」 じんわりと海外に来た事実を実感したくて、空港から一歩外に出たら深呼吸をするつもりだった。 これから旅が始まる喜びみたいなものを体の中にいれてみたかった。 わざわざこんな恥ずかしいことをぶっちゃけてしまった理由は単純だ。 出来なかった。そんな余裕は微塵もなく心細さと不安しかなかった。 深夜のケプラビーク空港は恐ろしかった。 放課後の誰もいない学校の廊下と似た感じだ。 人が賑わっているに違いない場所に不自然に人がいないことはとても不気味だっ

          外国に着いたら深呼吸をするはずだった

          日本から離れる日、なに食べる?

          「地球最後の日になにたべる?」とか 「一生コメと一種類のおかずしか食えなくなったらなにたべる」?とか、私は「なに食べ」系の質問が大好きだ。 そして表題である。 何食べ系でこの質問は考えたことがなかった。 全く頭に浮かばなかったことだ。 現地で恋しくなる味食覚って何なんだろう。 ジャポニカ米のベタついたかんじ? 醤油のこくしょっぱいかんじ? わっしゃわっしゃと掻き込む豪快さ? 日本の味、なんて大したものではないんだろうが お守りみたいに落ち着く味のものが食べたいな。 〈

          日本から離れる日、なに食べる?

          アイスランドの鞄のなかみ

          持ち物について今日は書く。 私もそうだったけれど、とにかくアイスランド旅行の情報は少なくてググるのに苦労した。これから行く同年代の誰かさんの判断材料になったらうれしいな。          【概要】 ▪️旅行者: 26歳女性 ▪️体質:寒がり ▪️期間:4月末~1週間くらい 【キャリー】 L.L.Beanのソフトキャリー。 30リッターなので3泊分くらい。 ハードキャリーをレンタルしようか迷ったけど旅慣れた先輩に「壊される時はハードもソフトもぶっ壊されるよ」と愛のあるお

          アイスランドの鞄のなかみ

          26歳、アイスランドに行ってきます

          くるりの「その線は水平線」を聴きながら更新している。 このボコンって飛び出てるやつ 間欠泉という言葉を知ったのは高校の地学の授業の時だった。 地学の授業を取る学生はとてもすくなくて、いつものんびりしていたように思う。 隣の教室では生物学の生徒がみっちりとノートを取っているだろうに、このクラスは受験なんか他人事という雰囲気だった。 田舎の、しかも公立の学校だ。 同調意識はとても強かった中で「なぜか受講してしまったひとたち」を教える先生は面白い人だった。 「地震が起きたとき

          26歳、アイスランドに行ってきます

          二度と飲めないシードルに

          人生で忘れられない味をいくつ覚えているだろう。 本当のことを言えば両手に10コ言えるか怪しい。 味覚なんてホイホイ変わる、記憶だってすぐ消える。 その一方でどうしても忘れたくない思い出になった味もあるのだ。 人生で忘れられないお酒の味、幸せと直結したお酒といえば間違いなくアップルシードルである。 アップルシードルというよくわからない飲み物に出会ったのは二十歳もそこそこ、友人と車を借りて出掛けた朝霧ジャムというフェスだった。 朝霧ジャムは不思議な場所である。 富士山のす

          二度と飲めないシードルに

          何かにつけて「やったれ」と言ってみる

          根性論なんか大嫌いだ 全力という言葉が大嫌いだ 死ぬ気でやろうとか反吐が出る 嘘だそんなもの嘘でしかない 多分この信条は変わらない この文章は悪口を言いたい訳ではない 職場は女性が7割近くなのだけれど、なぜか私の周りは全員男性だ スーファミの話が止まらなくなってキャッキャ騒いでる時もあるけど仕事はビシッとキメている 正直かなりかっこいい 顔とかじゃなくて仕事の鮮やかさみたいなところ 終業間際にポンと外回りから戻ってくる主任がいる 主任は高田純次みたいな人で、スライムつむり

          何かにつけて「やったれ」と言ってみる

          あこがれミモザ

          ミモザを買った 400円もした 400円あったら何する? 正直、花を買おうとは思わない 100円だま4枚が目の前にあったら、いつもよりちょっとグレードの高い肉まんと、少しトッピングの多いカップスイーツでも本当は買うんだろうな でもミモザを私は買ってしまった 独り暮らしにミモザは少々大袈裟だ。三枚におろされていない鰤を買うような 堀りたての筍を買うような それくらいの身の丈のアワなさである 丁寧な暮らしをするインスタグラムでこぞって女性達が生ける花だ。 ぽってりとしたフラワ

          あこがれミモザ

          わたしが高校生のときアップルミュージックがあったら

          もしあのころにアップルミュージックがあって スマホがあって、週に1回のアイスを我慢しておこづかいから月額を捻出してたら私はどうなってたんだろう。 地方都市の小さな街で、県で唯一のタワレコまでは電車にのって40分。 そりゃもう行くときは何買おっかっておしゃれしてさ、視聴機の前に立つとドキドキするの。 「知らない音楽ばっかり!最高だ!」 あの時いつもレジにいた毛先だけ緑色の黒髪マッシュの店員さんが眩しかったな。 きっとメロコアが大好きだったんだ。 ELLEGARDENがぽっき

          わたしが高校生のときアップルミュージックがあったら