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独学に勝るものなし

「独学に勝るものなし」

意味:何事も全て最初は独学から始まる。誰かに習うのは倣うということ。

類義:好きこそ物の上手なれ

(例)いやぁ、以前は会社勤めで、やらされることばっかりだったけど、全く新しい仕事を始めてからは今まできなかったことができてるよ。まさに「独学に勝るものなし」だね。

「独立時計職人」という菊野昌宏という方がいるのをご存知でしょうか?
この方は現在36歳なんですが、高校卒業後は自衛隊に入り、四年後に除隊しました。その後、物作りの専門学校に一年通い、世界でも30人しかいないと言われる独立時計師の正会員になり、独学で時計作りを始めました。

特異な経歴ではありますが、菊野さんのこだわりは物凄いものがあり、「全て自分で作りたい」と、ネジ一本から自分で削って作ります。
そして、「和時計」という、「日本」をテーマにした時計を制作し、その値段は数百万円から3千万円というような超高額の値がついています。そんなに高額でも、作ってはすぐに売れてしまうそうです。


見本その①見本その②

しかし、完成しても、自分が納得がいかない出来だったら、売り物にはならないと、非売品にしてしまうそうです。


失敗作(鶴の羽の音が気に入らない)

何千万円という時計の場合は、一年掛けて作ったりもするそうで、その作業は途方もないですが、それだけ掛けて、世界に一つだけの、菊野さんにしか作れない逸品が生まれるのです。

さて、菊野さんはこのような経緯を辿ったそうなのですが、「時計を作りたい」と思った時、2つの道があります。

1つは、時計を作る会社に入ること。または、時計職人に弟子入りすることです。

もう1つは、菊野さんのように、独学で始める場合です。

大抵の人は、1つ目を選ぶことでしょう。そりゃそうです。右も左も分からず、ノウハウもないのに時計を作ることはまずできません。例外を言うのであれば、子供の頃から何でも分解してしまう「分解癖」を持っていると、何でも分解してしまい、その構造を理解して組み立ててしまうことがあります。好きな人は、パーツを集めてパソコンを組み立てたり、バイクや車を自作してしまう人もいます。

類義で「好きこそ物の上手なれ」と言いますが、まさにその純粋な情熱に勝るものはないのかもしれません。

多くの人が、最初はどこかに就職し、転職したり独立したり、自分に合った仕事を探すものです。そして、多くの人が、自分のやりたいことや自分を生かした仕事ができていないとも言えます。

決して、誰でも独立しろというつもりはありません。生き方は色々あって人それぞれですから。

なぜ「独学に勝るものなし」なのか?

菊野さんは、自衛隊という時計作りとは関係ない仕事をしていましたが、その時に、機械式腕時計を付けていた上官に会い、それがきっかけで、腕時計に興味を持ったそうです。

きっと、もともと器用ではなかった菊野さんは、時計を作りたいと熱中したのでしょう。ひとまず物作りの専門学校に通ったものの、自分で時計を作るには多額の資金も必要だし、簡単には作れません。

しかし、普通の時計とは違う思いもよらない時計があることを知った時、発想の転換によって、自分で作る方法を考えました。

それから菊野さんにしか作れない、世界に1つだけの「和時計」を生み出しました。

もし、菊野さんが最初から、はたまた自衛隊除隊後に某有名時計メーカーに勤めていたら、「和時計」は生み出されていたでしょうか?

答えは、わかりません(笑)

それでもやっぱり生み出されたかもしれませんが、きっともっと後になったかもしれません。そうなると、柔軟な発想ができたから怪しいので、やはり生み出されないかもしれませんね。

なぜなら、会社に勤めるということは、その会社のやり方を学び、既に出来上がっている方法を身につけることになります。それが「やらされている感」と言えますが、もちろんそれは必要なのことです。しかし、「既成概念」ができてしまうと、それを破壊することは簡単ではありません。

「認識」してしまったら、覆すことはほぼできないからです。

「和時計」は、「腕時計」というゴールは同じでも、その道筋は他の物とは全く違うのではないかと思います。

つまり、「和時計」は、独学だったからこそ生み出されたと思うのです。

全ての始まりは独学から

高級時計で有名な、かのフランクミュラーも最初は独立時計師だったそうです。
スティーブ・ジョブズもiPhoneを生み出した独立スマホ師と言えるかもしれません(笑)。しかし、出来上がってしまったら、Apple社は、その性能を上げる、形を変えるというくらいしかできません。

ここがポイントです。

菊野さんは、専門学校に通うことで、基礎を学びました。何をやるにも基礎は必要です。独学で進むか、就職したり弟子入りするかは、そこからです。
手っ取り早く成功するなら、就職するのがいいでしょうね。ただ、会社の中で必要とされないものは、どんなに独創性があって魅力があっても、却下されることでしょう。

「自分にしかできないものを作りたい」というのであれば、「独学に勝るものはなし」ということなのでしょうね。

菊野さんは、きっと時計が作りたいんです。その情熱と、独学による独創性によって、唯一無二の時計を生み出しました。きっとそれは、使い手の為ではないでしょう。ある意味、自分が作りたいものを究極に突き詰めたものが「和時計」だと思います。

ニーズに合わせるだけが商品ではありません。利用者が唸るほどのものであれば、ニーズを超え、何千万円という値が付くこともあるのです。

他でもない私も、独学でカメラマンや映像制作を始めたのですが、そんな自分を正当化するコラムにしたいと思います(笑)

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