わたしは大丈夫!
〜初めに〜
《このお話は、私と娘(次女)がある病気を一緒に乗り越えた事を、娘の目線から少しお話として書きました。。『場面緘黙症』という病名を耳にされた事がある方もいらっしゃると思います。まだまだ認知度が低いかもしれません。気付かれにくく、理解されるのが難しい所もあるので、辛い思いをしてる子達がいると思います。次女の場合ですが、次女は自分で克服することができました。読んでいただいて、少しでも理解して頂けたら嬉しいです。》
【わたしは大丈夫!】
わたしは小学生になってから、家族以外の人としゃべれなくなった。
家族とは大きな声で笑ったりお話したりできるのに。
なんでだろ。
わたしにも分からない。
みんなと思いきり笑ったり、お話したいのに。
何か話そうとすると、わたしの体はカチカチになって、顔は真っ赤になって、息苦しくなる。
ある日お母さんが心配してわたしを病院に連れてった。
そして、病院の先生に言われた。
『場面緘黙症ですね』『ばめんかんもくしょう』なんだろ?
わたしはよく分からなかった。
それは、家族以外の人や自宅(特定の人や場所)以外の場所になると声を出すことができなくなること。話せなくなること。
『場面緘黙症』と分かってから、わたしはお母さんといっしょにカウンセリングをうけるようになった。
週に1回。
車で1時間かけてお母さんと病院へかよった。
わたしが1年生の時の冬、学習発表会の練習が始まった。
でも、わたしはせっかくセリフをもらったのに、ひとことも、なにも、言葉がでなかった。話せなかった。
ある日、担任の先生からお母さんに電話があった。
『娘さんは声が出せないようなのでお友達といっしょにセリフを言ってもらうようにしますので、よろしいでしょうか?』って。
お母さんはこの担任の先生からの電話で、わたしが学校で話せない、声を出すことができないでいることを知った。それまでは、全然わたしのことに気づいていなかった。
それは、わたしが家ではふつうに笑ってみんなと同じように話して、大きい声も出せるから気づくことができなかった。
それからわたしは何か行事があるたびに友達に助けてもらってた。
発表するときは口はパクパクできるけど声は出ない。
だから友達が隣に立って代わりに言ってくれた。
そんなある日、同級生のお母さんがわたしのお母さんに言った。
『話しかけてもうなずくだけ、なんにも答えないし、ほんっとにしゃべらない子よね』って。
まわりにいたお母さんたちは困った顔をしてたみたい。
でも、わたしのお母さんは
『うちの子を気にかけてくれてありがとう。心配してくれてありがとう』って言った。
わたしのことで何か言われるとそう言ってた。
カウンセリングに通って5年目の冬。わたしは6年生になってた。
わたしは1度も学校で声を出すことはできなかった。
もうすぐ卒業式っていうある日、お母さんがわたしに言った。
『この6年間、頑張ったね。もうすぐ中学生だね。1つだけ、ちゃんと聞いて欲しいんだけど、今までは保育園からずっとみんないっしょだったでしょ?中学生になったらいろんな小学校からのお友達とすごすようになるの。その時、これまでのことを知らないお友達はきっと「なんで、しゃべらないの?なんで声をだせないの?」って聞いてくると思う。それは、嫌がらせでもなんでもなくて、なんで?って思うから聞いてしまうの。だから、嫌な気持ちになる事があるかもしれない』ってお母さんはわたしに言った。
わたしは、そのことをずっと考えた。
そして、卒業式の日。
卒業生の名前を1人ずつ先生が読み上げていく。
みんな大きな声で『はい!』って返事をして立ち上がっていく。
そして、わたしの番。
わたしの名前が読み上げられた。
わたしは、精一杯、力いっぱい
『はい!』
と、声を上げた。
まわりのみんなが笑顔になったのが分かった。
後ろの方から拍手が聞こえた。
きっと、お母さん。
卒業式が終わって教室にみんなでかえった。
みんなの反応がこわかった。
でも、みんないつもどおりでいてくれた。
きっと、わたしが小さくなってしまうといけないと思ったんだと思う。
最後に帰る時にみんながわたしのところに集まっていっしょに写真をとった。
その時みんなが1人ずつ小さな声でわたしに
『すごいね!やったね!』って言ってくれた。
お母さんが1番泣いてた。
お母さん、わたしはもう大丈夫だよ!
中学生からちゃんとお話もできる。
発表だってするからね!
最後まで読んで下さりありがとうございます。
次女の症状はまだ軽度だったのだと思います。そして、周りのお友達、先生方、保護者のみなさん、周りの全ての方の理解があったからこそ、乗り越える事ができ、次女は自分で克服することができたんだと思います。
そして、次女は今、友達と🚗で出かけたり、ライブに行ったり。たくさん楽しんでます。
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