見出し画像

お母さんになりたかった話⑥

今回は手術のことを記録に残します。
痛かったことも。
そして かなり長くなってしまいました。
それでも読める心境の方だけ お願いします。



手術までの11日間

朝起きたら、おはよう。
顔を洗ったあとは、気持ちいいね。
ご飯を食べたら、こんなに美味しいものがあるんだよ。

1日に何度ものんちゃんへ話しかけました。

この人はあなたのお父さんと、おばあちゃん。
二人とも優しくて、おもしろい。
抱っこしてほしかったね。

私の目を通して
綺麗なものもたくさん見せてあげたかったので、
電車から見える風景や、
街に連なるたくさんの灯りを見つめました。

今振り返ると、のんちゃんに
「〜〜してあげたい」という気持ちで
大切に暮らしていた日々は、
日常の「なんてことない」ものに感謝する という
ことが基盤になっていたんだなと。


与えるより、与えられたことのほうがたくさん
あったね。
今、noteを書いていて気付けたことです。
ありがとう。


9月17日

不思議なことに つわりは続いています。
なのでお腹ぺこぺこ、そしてだるい…。
元気を出すためにも ずっと我慢していた
お寿司をたくさん食べました。

そして 21時から絶飲、絶食。

のんちゃんと過ごす最後の夜。
この日まで出血などもなく、自然に出てくる様子はありませんでした。
私の、最後のときまで一緒にいたい気持ちが
通じたのかなぁ、なんて思いました。

眠れる気がしないので、市販の眠剤を飲みました。
流れる涙はそのままに、瞼を閉じ続けました。


9月18日

夫は一旦、仕事に。
私は朝8時に一人で病院へ行きました。

看護師さんに案内され、診察台に登ります。

手術の前にする処置があるということでした。

ラミナリア という小さな器具を子宮口に入れます。

どんな形状なのか知らないままだったので
画像検索しましたが、ここに貼るのはやめておきます。こんな物が体に入ったなんて。


膣の奥にある子宮口はぴったり閉じています。
そこをラミナリアで拡げて、
拡げたところに更に器具を入れて吸引する。
説明を受けただけで気が遠くなりました。

吸引。

信じられない、受け入れたくない。
頭の中が冷たくなっていきます。
でも自分の体のために、従うしかないのです。

ラミナリアを入れる前に、もう一度エコーで
お腹のなかを見ました。
「あれ?胎盤大きくなってるなぁ。12週分くらいの大きさある。大丈夫かなぁ」
なんて声が聞こえてきます。不安。

「とりあえず処置するね、痛いけどごめんね」

よくわからないまま処置が始まりました。

とても幅の狭い、薄い板を無理矢理ねじ込まれていく感じで、もちろん激痛です。
男性に例えるなら、尿道に普通サイズのストローを入れられるような。でももっと鋭利な感覚です。

痛すぎて呻きながら、椅子の肘掛けをがっつり掴みました。
自分、こんな低い声出るんだ…と思いながら
握力で誤魔化すしかなくて。
でも全く痛みを逃せない。

すると看護師さんが横に来て、
「力んだら余計痛むから、ゆっくり呼吸して〜!」
「はいもうちょっとで終わるよ〜!大丈夫大丈夫」
そのあと、膣の中にガーゼを大量に詰め込まれ、
永遠に感じた処置は2、3分で終わりました。


痛みと力みでふらふら。車椅子に乗せられました。
「生理痛に似た痛みがあると思うけど、1時間くらいでおさまります。ラミナリアが抜けたら困るから
この後は横になっていてね。よく頑張った!!」

看護師さんに励まされながら、ゆっくり横になりました。気持ちを落ち着かせるために イヤホンで
ミスチルを聴きました。


1時間後、お医者さんが来て
「さっきエコー見たら胎盤が大きかったんだけどね
ラミナリア一個分の広さじゃちょっと厳しいかなと思って。申し訳ないんだけど、もう一回やり直してラミナリアを2個入れてもいい?」

鬼だと思いました。
でも仕方ない…

また診察台に乗り、ガーゼを抜かれます。
腸を引っ張り出されてるのかと思うくらい
ながーいガーゼ。

そしてラミナリアを外しにかかりましたが、
すでに子宮口の中で膨張し、抜けませんでした。

「ごめん、もう抜けなくなってるからこのままで
いきます。大丈夫だとは思うんだけど…」

仕方ない、仕方ない…もう忘れよう。

母、到着。
そして夫も仕事を早退して来てくれました

手術は13時から。それまでのんびり、三人で過ごしました。


手術室と呼ぶには小さな部屋で、看護師さんは6人くらいいました。
「旦那さん心配そうな顔してたわね〜」
「ていうか旦那さん何歳なの?」
「え!すごい歳の差!でも年齢は関係ないよ!笑」
明るい話題でみなさん盛り上げてくれました。
私も素直に受け答えができたし、そのおかげでリラックスできました。


吸入麻酔だったか、静脈麻酔だったか…
記憶があやふやですが、そのどちらかです。
でも、「麻酔しますね〜」の声がかかってから
意識がなくなるまでの時間が結構長くて、
「え?ほんとに麻酔かかってる???」って感じ。

麻酔って、なんにも抗えないまま瞼が閉じちゃうと
思うんですけど、このときはなんか軽い感じで。

不安だな〜って気持ちが大きくて、
正直、のんちゃんのことを大切に思う時間は
過ごせませんでした。



そして、自分のうめき声と 痛みで目が覚めました。
麻酔が切れたのでしょう。不安的中です。

とにかく痛い。痛すぎる。
カチャカチャと器具のぶつかる音。
体の中が吸引されている音と、感覚。

あぁ、今、とんでもないことをしているんだ。
誰もわるくないのに、なんでこんなことになって
いるんだろう。

「もう少しだよ!!もう終わるからね!!!」
「今、声聞こえてるんですかね!?」
「聞こえてると思うわ!声かけてあげて!!」
「痛いよねごめんね!もうちょっとだよ!!」

看護師さんたちの声を聞きながら、少しずつ痛みは治まっていきました。
やっと終わった。

ベッドに寝かされて、そこからは麻酔が切れるまで
眠り続けました。

手術は10分で終わる予定でしたが、
やはり子宮口が狭かったのか、20分くらい
かかっていたそうです。

目が覚めてからは、ぼんやりした頭のまま
着替えて、お会計をして、家に帰りました。
お会計は2万円くらいでした。

病院やお医者さんについて、責めるつもりは一切
ありません。手術をしないと私の体がもっと危険な状態になるところでした。
本当に感謝しています。



家に帰ると、母がカレーを作ってくれました。
弟が買って持たせてくれたという、果物も食べさせてくれました。
本当に、胸がいっぱいになります。

「ゆっくり休んでね。いつでも帰っておいで」
夜遅く、母は実家に戻りました。
遠いのに駆けつけてくれてありがとう。


眠りにつく前、夫に背中をさすってもらいながら
大声で泣きました。
今朝までお腹にいたのに。
吸引された感覚を嫌でも思い出してしまって、
本当に苦しかった。
「今日は、のんちゃんの体を返してあげたんだよ。
大丈夫。大丈夫」
私が落ち着くまで、ずっと抱きしめてくれました。


こうして長い1日は終わり、9月18日は
私たちにとって忘れられない日になりました。

そらまめ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?