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星の王子様 読書記録 第19節 やまびことの出会い?

Le petit prince fit l'ascension d'une haute montagne. Les seules montagnes qu'il eût jamais connues étaient les trois volcans qui lui arrivaient au genou. Et il se servait du volcan éteint comme d'un tabouret. <D'une montagne haute comme celle-ci, se dit-il donc, j'apercevrai d'un coup toute la planète et tous les hommes…>Mais il n'aperçut rien que des aiguilles de roc bien aiguisées.
  <Bonjour, dit-il à tout hasard.
--Bonjour… Bonjour… Bonjour…, répondit l'écho.
--Qui êtes-vous? dit le petit prince.
--Qui êtes-vous… qui êtes-vous… qui êtes-vous… répondit l'écho.
--Soyez mes amis, je suis seul, dit-il.
--Je suis seul…je suis seul… je suis seul…>, répondit l'écho.
<Quelle drôle de planète! pensa-t-il alors. Elle est toute sèche, et toute pointue et toute salée. et les hommes manquent d'imagination. Ils répètent ce qu'on leur dit… Chez moi j'avais une fleur : elle parlait toujours la première…>

王子様は高い山に登った。彼がこれまでに知っている山は、彼の膝にまで届く3つの火山だった。そして彼は休火山をあたかも足載せのように利用した。こんなに高い山なら、惑星全体が見渡せて、全ての人間も見えるだろうと思った。でも、すごくとがった岩の針以外は何も見えなかった。
<こんにちは。>彼は念のために言ってみた。
こんにちは。こんにちは。こんにちは。山彦が答えた。
あなたは誰ですか?王子様は言った。
あなたは誰ですか?あなたは誰ですか?あなたは誰ですか?山彦が言った。
僕の友達になってよ、僕は一人なんだ。彼は言った。
僕は一人なんだ。僕は一人なんだ。僕は一人なんだ。山彦が言った。
なんて変な惑星なんだ!その時彼は思った。この惑星はまったく干からびていて、とんがっていて、塩っ辛い。それに人間は想像力がかけている。彼らは人の言うことを繰り返す。僕んちの花は、いつも最初に話しかけてきたのに・・・。

🌈単語
✅ascension

♢女性名詞
①登山、登攀
②昇進、出世、台頭
③(物体の)上昇
④(物価などの)高騰
♢faire l'ascension de…

aiguille
♢女性名詞
①(裁縫用の)針

aiguisées
♢aiguiserの過去分詞 
♢形容詞
①研いだ;鋭くとがった
②[食欲などが]刺激された、そそられた

écho
♢男性名詞
①こだま、山彦、エコー;こだまのする場所
②反響、反映;反応
③(言葉、動作などの)繰り返し、写し;模倣者

haute
♢形容詞 hautの女性形
①(高さ、丈の)高い
②(~de + 数量表現)・・・の高さがある
③高いところにある、高所の、上部の

genou
♢男性名詞
①ひざ;膝関節
②エルボ:互いにある角度をなす管の接続に用いる管継手

pointue
♢形容詞
①とがった、鋭い
②[声が]きんきんした;甲高い

tabouret
♢男性名詞
①(肘掛、背の無い)椅子、スツール
②(椅子に座ったときに用いる)足載せ

roc
♢男性名詞
①岩、岩石、巌
②強固なもの;頑固な人

salée
♢ salerの過去分詞 女性形
♢形容詞
①塩分を含んだ
②塩で味付けした;塩漬けに下
③露骨な、卑猥な、きわどい

sèche
♢形容詞 secの女性形
①乾いた、水気の無い
②干した、乾燥させた
③何もついていない、単独の、それだけの
④やせこけた、やせぎすの、肉の落ちた

🌈文学

 王子様は人が全くいないので、高い山の上に登ってみた。
そこに行けば、世界全体を見渡す事が出来るし、人がどこにいるのかもわかると思ったのだ。

 ところが見えたのは砂漠ばかり。

 王子様は一応、こんにちはと言ってみた。

 すると、山彦がそれをそのまま返してきた。

 王子様は、山彦を知らなかったのだろうか。人が答えを返してきたと思い込んだようだ。だから、人間には独創的な発想がなく、オウム返しに言葉を繰り返すだけだと言っている。

 これが人間に対する批判であるとすれば・・・。

 人は、結局押しなべて決まりきった言葉しかしゃべっていないということだろう。みんなどこかで受け売りの言葉を並べて、常識人だという顔をしている。しかし、そこにひとたび疑問の声を投げかけると、こういうことを言い返す。

 そんなことも知らないの!?

 自分で調べろ!

 お前、なめられるぞ!

大抵この3つだ。自分が聞きたいのは質問の答えなのだが、彼らは絶対に答えようとしない。そして、そうこうするうちに距離を取って、逃げ出してしまうのだ。

 ネプリーグで名倉潤さんと原田泰三さんのやり取りでは、このうちの、「そんなことも知らないの?」が取り上げられた。名倉潤さんが、ええから言うてみ~と何度も迫るので、原田さんがうわ~~潤ちゃんのいじわる~~っと言ってわめくショートコントだ。そして、実際に答えを言うと、間違っているという・・・。

 しかし、この手で逃れてきた人もリアルには多く、そうした人たちからすると、このコントはちょっと胸にささるブラックジョークに聞こえた人も多いのではないだろうか。

 どうしてこう切り返すのかというと、自分でも意味がよくわかっていないからである。しかし、自分はわかっているというつらをしたいのだ。でも、そう切り返された相手は、え、わかっていないのはじぶんだけ?みたいな感じで黙ってしまう。

 人から『舐められないための文句』というのを、人は恐ろしくも目ざとく見つけるものなのである。その成果がこれなのだ。

 山彦は、こちらが言った言葉をそのままオウム返しに言い返してくる。この点は実際の人間の対話と完全に一致しているとは言えない。

 でも、私の意見では、このショートストーリーの言いたいことは、自分が今考えていることと同じことなのではないか、という気がしてくるのだ。

 私たちは、同じ範囲の中で、押しなべて似たようなことばかりをぐるぐると言い合っているのではないだろうか。人と人とが対話をし、問題について考える時に、その問題について話し合うよりは、自分がその問題について如何に無知であるのかを隠そうとする。当たり障りのないことだけを言って、結局何だったんだ?という感じで一切が過ぎ去っていく。

 会話が成り立っているようで、全く建設的じゃない。どちらもとんがっていて、突き合っているだけだ。無味乾燥としている。人の血が流れていない。

 会話のどこかからか、自分の無知や、自分の浅はかさな言動が外に漏れるのを恐れている。

 そんなことも知らんのん!?で話を打ち切るのは簡単だが、それで相手が当惑して黙れば、自分の体面を保つこともできるし、相手にマウントを取ることもできる。自分が無知であることを知られるのが怖いからだ。人はこの便利な言葉が大好きだった。この手段ばかり使いまわして、その疑問自体に対しては、真剣に向き合おうとはしない。そして、相手よりも自分のほうが物を知っている気になって、ご満悦になるのである。

 人の多くが自分をまともだと思い、自分を肯定できるのは、駄目だと思える人間がいるからだ。その反射によって、自分が優れていると錯覚できることに居心地の良さを覚え、人によっては、それが本当の自分であるとまで信じ切るのである。その反射も、「虚」なのだ。本当は自分もよくわかっていないのに、自分はわかっている気がして、気持ちよくなれるのである。

 戦争をする奴らを見て、戦争はよくないと言えば自分達は「平和」を願っていると思えるし、
 犯罪を犯す人を見て、犯罪はよくないと言えば自分達は「犯罪」を嫌っていると思えるし、そういうやつらと自分は違うと思うし、
 いじめをする人を見て、いじめはよくないと言えば自分達は「いじめ」を行う人間とは違うと思えるし、
 非常識な人を見て、非常識な人に怒りを向ければ、自分達は「常識的」と思えるし、
 しかし、そういう彼らに、「常識」とは何か。「戦争」とは何か。「犯罪」とは何か。「いじめ」とは何か。その答えを積極的に求めると、やはりわからないのである。

 常識は、積極的に常識が何かを分かって構成されていると言うよりは、数多くの非常識な行動によって、反射的に決定されていると私は考えている。常識は、非常識によって支えられているのだ。私たちは、常識というものが何なのかよくわかっていない。しかし、数々の非常識な行動や言動が、常識というものを私たちに教えてくれているのである。非常識は常識の反面教師なのである。いじめや戦争や、犯罪もそうなのだ。

 なぜならば、私が、「常識って何ですか?」と聞いたら、皆口々に、
そんなこともわからんのか!と言い返してくるだけだからだ。

 今までの人生いろいろ疑問に聞いてきた
 
 「大人って何?」
 「子どもって何?」
 「人生って何?」
 「友達って何?」
 「結婚って何?」
 「仕事って何?」
 ・・・
 ・・・

 でも結局全部、そんなことも知らんのか!?だった。記憶に良く残っている。第2位は、自分で調べろ!だ。

 ところが、数年たって、斉藤孝という先生が「友達って何だろう」という本を出し、売れているそうだ。私は読んだことはないが、書店で見かけたことはある。この時は、「おい!」と思ったものだけど。ちなみに私は、すでに「友達とは何か」という答えを見つけていた(見つけることはできたと自分では思っている)し、「戦争」とは何か、という自分なりの答え、「大人」とは何か、「仕事」とは何か、「結婚」とは何か、他もろもろの疑問の答えは、全部じゃないけど、発行した本や記事に書いたことがある。全部を全部書くのは大変なので、自分の考えを切り取って一部を載せることもしている。例えば結婚については、前野の結婚観で紹介した。結婚を理解するには、前野の結婚観は重要なヒントになる。

 Noteにきて、特に思ったことがある。やっぱり私が疑問に思ったことは、間違いではなかった。人によってはそうしたことに真剣に記事を書いている。それにスキがついたり、コメントをしたりしている。ということは、みんなよくわかってないんじゃんってことだ。少なくとも、誰もが納得するような統一的な答えはでていないということだ。ということは、そんなことも知らんのか!と言ってきた人間たちも、実際は何もわかっていなかったはずだ。わかっているなら、今頃その答えが輝いて出てきており、誰もが皆、同じ答えを言うはずだからだ。

 いずれにせよ、そんなものだから、そこを限界としてしか会話というのは成り立たなくなる。

 こうしてお互いが「舐められないように」していけばいくほど、人は結局無知のままになる。物事に昏くなっていく。ハマグリはがっちりと閉じて自分の弱い身を現わさない。

 そうして、シギとハマグリが戦ってしまうと、(別に私は相手を喰いたいわけではないんだけど)物事をよくわかっていない状態を狙って、食べにやってくる奴がいる・・・。言葉の意味が曖昧であればあるほど、助かる人間がいるのだ。曖昧さに乗じて、言い逃れをする人たち、あなたたちは見たことがありませんか?

 私たちは、言葉を発し、いろいろと話をしているようで、何も話していない。そして、つながれるのは、お金を介してだけ。そういう社会になっている。孤立社会だ。お金という魔法がなければ何もできない。でもお金では何も根本的な解決にはならない。今の王子様の状況と同じかもしれないですね。

 この前蛇がこういった。人間はどれだけ人と交わっていても、独りぼっちだと。

 




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