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【推薦図書】人はつい、同じ出身県の作家をひいきしてしまう?!

「戦争花嫁」という短編小説が
川上未映子の短編集にあります。

川上未映子の特異なワードセンスで 
生まれた造語かしら、
とずっと疑わずに読んでいました。
 
ところが、
有吉佐和子の『非色』を
読んでいたら、
また「戦争花嫁」という言葉に 
出会いました。
「戦争花嫁」とは、
太平洋戦争の敗戦後、
占領軍としてやってきた
アメリカ兵士らと結婚した
日本人女性が
そう呼ばれていたんですね。 

戦争花嫁。
決して字からは
良い印象はありません。
物騒な印象ですらあります。

「戦争未亡人」という
言葉もありますが、
これは、私の祖母がそうでした。
軍人を夫にもち、
戦争で夫を亡くした夫人は
戦後に再婚すると軽薄だと
責められたのです。
節操がないではないか?と
再婚を許さない空気でした。

さて。話を元に戻します。

有吉佐和子は、
1931年、和歌山県生まれ。
1964年に、人種差別をテーマにした
『非色』を発表しました。
33才の若さで。

主人公の女性、笑子は
アフリカ系アメリカンの
兵士と結婚し、子を授かり、
渡米していく物語です。

この400ページ強の物語、
発表されてから、50年以上も経て、
ちっとも古びていない不思議さ。

あまりの面白さに、
令和6年を生きる私は
感動を覚えました。

その中には、有吉佐和子が
和歌山県生まれという、
出身地、出身県生まれが
大きく関わっています。

やはり、令和6年といえど、
同じ出身地かと思うと
応援したくなります。
また、やはり、和歌山県と
同じグループの関西にも
応援したくなる気もちがあります。

この気持ちは、
でも、裏をかえせば、
関西以外の他府県は応援しない、
というような感情の芽が
生じています。
もしも、有吉佐和子が
関東出身だったら、
東北や九州出身だったら、
今みたいな気持ちで
迎え入れたかどうか、  
たぶんは読まなかったかも
しれません。

うん?これはある意味、
差別につながる感情ではないか。

こんな差別感情が
生まれる土壌があるなら、
私は、有吉佐和子が精魂かけて 
書いた『非色』という作品のテーマを
わかっていなかったことになります。
オーマイガー!です。

生まれた場所や
生まれた人種から、
愛着を持ったり、
無関心を持ったりするのは、
なんなのでしょうね?

優雅に、同郷作家の
人種差別の小説を読んでいたら、
その作家を高く評価する背景に
まさか、出身地問題が
混じっていたなんて。

それにしても、それにしても。
人種差別をテーマにした『非色』、
女性蔑視社会をテーマにした
『悪女について』
公害をテーマにした『複合汚染』
老人の認知症をテーマにした『恍惚の人』
不倫を問いかける『不信のとき』など
どれも、数十年前に
有吉佐和子が書き残した作品です。
ひいきめに見ても、
どれもまだ古びていない、
そんな有吉佐和子に、
私は去年まで、ノーマークでした。

これからは忙しくなるぞ〜。
しばらくは、有吉佐和子の傑作を
堪能できるのですから、
まだまだ人生、楽しみは尽きません。

もっともっと、
有吉文学を味わって、
出身地だから好き、
だなんてレベルから
いちはやく脱け出して、
本質的な意味で、有吉文学を
理解し、愛好したいとおもう。

このせんでいくと、
同じく和歌山県生まれの、
中上健次を私はどれだけ、
本質的に理解し、愛好しているのか、
わかったものじゃないですね。
自信がなくなってきました(汗)。

 

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