見出し画像

【親不孝】あの日私は究極の親不孝をしました。

殴ったり殴られるのは、
基本的にはないよう、
ケンカのない人生を送ってきました。

でも一度だけ、
人を殴った事があります。
父の葬儀の夜。

しかも、相手は6才下の弟を、
まさに仏壇の前で。
向田邦子のホームドラマでも
これはベタ過ぎて不採用ですね。

葬儀も終わり、 
香典の金額の計算、確認を
親族も一緒に手伝ってくれ、 
やっと金額もあい、
解散となったのは6時過ぎ。
もう身体もヘトヘトでした。

やっと私と母と弟の3人に。 

気になってたのは、
これからは親の年金は、
今までの半分になることです。
母の毎月の遣り繰りが心配です。

だから、弟にも、
早く契約社員から
正社員になってもらい、
ボーナスを貰える待遇になって欲しい。
そうしたら、たまに母に仕送りも
できるしなあ…
みたいな話をしたら、
弟が変な顔つきになってきた。

私としては自分だけ仕送りしてて
不公平だよな、弟も母ちゃんに、、、
そんなエゴからです。

でも疎い私は
「早く正社員になってくれよな」
と地雷を踏んだんです。
弟だって、好きで派遣仕事を
やってる訳ではないのに…。

今の時勢なら、
正社員になれるのは
どれだけレアか?
なるのが大変か?
よくわかりますが、
17年前の私は愚かでした。

普段は大人しい弟が
激怒し始めたんです。

実は、私が話しかける直前、
弟のスマホには、 
直前に面接を受けた会社から、
不採用通知が届いてたんです。

なんて、
タイミングが悪すぎるんだろ。

転職活動で落ちたばかりの弟。
弟の気持ちも知らないで、
自分が正社員なのが
当たり前だと考える兄。

気がついたら、
飾り立てホヤホヤな父の
遺影の真ん前で、
私と弟は、殴りあってました。
どっちが先だったかなあ?

よく覚えてるのは
弟の頬を殴る時の、
ぐにゃりとした肉の感じ。
私の拳の骨や弟の頬骨の感触。
かなり気持ちが悪かったです。

そして、まさにドラマのように
母があいだに入ってきて、
「もうこんな日に、父ちゃんの前で、
何をしてるん、やめなさい!」。
母はボロボロ泣いてました。

なんて親不孝な私でしょう。

みんな、しばらくは
父の遺影の前で黙りこみました。
ごめんよ、父ちゃん。

殴るのも殴られるのも、
気持ちいいもんじゃあないです。
もう二度とごめんだなあ。
あの、自分や相手の肉や骨の
感触は味わいたくない。

その後、私は3度もうつ病になり、
母に仕送りするどころか、
母に経済的にも精神的にも
助けてもらう情けない長男に…。

一方、弟はずっと母の助けなくとも
無事になんとか働いています。

どちらが親孝行だったでしょうか?
私でないのは確かです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?