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【LGBT】同性愛の私小説が刊行される時代に

先月、折口信夫の短編集が
宝島文庫から発売された。

折口(おりくち)信夫(しのぶ)は
古代研究家、
万葉集研究家で、
たしか、文学史の教科書では
釈迢空の名前で短歌を残した、
と書いてありました。

かの柳田国男と共に、
民俗学を高めた日本有数の大学者。

さらに、もう一歩、踏み込めば、
『死者の書』『身毒丸』など
奇妙な小説を遺していた。

この折口信夫が、今年没後70年らしい。
先月出た文庫は『口ぶえ』。
その表題作は、恋愛小説らしい。
表題作については、
その文庫のオビに
「男子学生同士の切ない純愛」と
書いてあります。
つまり、今流行りのBL。
ボーイズラブ小説なんですね。

折口信夫がBL小説を描いていた、
というだけで、少し前なら
衝撃だったでしょうに、
新刊の文庫のオビにはさらに、
そのBL小説は、
折口信夫の私小説だと書いてある!
つまり、折口信夫は
同性愛者だったという訳ですね。

もちろん、今の社会では、
LGBTは後ろめたいことなどはなく、
折口信夫が同性愛者であっても、
ちっとも後ろぐらいものではない。

とはいえ、
折口信夫の同性愛の私小説……と
赤裸々にオビで謳われる時代が
来ようとは思わなかったですねえ。

もしかしたら、折口信夫がいちばん
驚いているかもしれませんね。

あ、そうだ、
同性愛的な私小説を描いた作家は
他にもまだまだたくさん
いたかもしれない。

たとえば、三島由紀夫。
彼の初期の傑作、
『仮面の告白』は、
あたかも同性愛者のように、
自己を語った作品ですが、
三島の告白は、そのまま素直に
受け取れないだけに
三島=同性愛者は怪しいですが。

宮沢賢治は、
作品には書き残していませんが、
日記には同性愛を匂わす記述が
あるという話を読んだ記憶が…。

いや、こんな風に暴露的に
同性愛者を特定しようとするのは、
いけないですね。
誰が同性愛者であれ、
それはその人の
自由であり権利であるからです。

そこを暴露的に追求するのは、
ただのワイドショーのような
スタンスでしかなく、
それこそLGBT差別ですね。

それにしても、
折口信夫による、
男子学生同士の
純愛BL小説にして私小説、
というキャッチコピーが
サラリとオビで印刷される時代が
来ようとは、、、なんだか
感慨深いものを感じました。
これは確かに、時代が
前進した証拠と呼べそうです。

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