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【ブックセレクト】河合隼雄先生のオススメは何ですか?

また、懲りずにやります、
妄想ブックセレクト企画。
今回は、メンタルにまつわる本が
読みたいと、とある実業家から
依頼があったとします。
別にメンタルが弱ってる訳ではなく、
むしろ、タフでたくましい人。
そんな人に頼まれたと仮定…。
縛りは、トータル5000円以内。

やはり、第1冊めは
河合隼雄さんから行きたい。
河合隼雄先生は心に関するいい本を
何十冊も世に出した方ですが、
一番人気は『こころの処方箋』。
新潮文庫、605円。
でも、これは有名過ぎですね。
みんなが紹介しまくっている。
今回のセレクトでは、ちょっと
外してみましょうか。
では対談ですが
『魂にメスはいらない』
先生役は河合さん、
生徒役は谷川俊太郎。
谷川さんは子供のように、
河合隼雄を質問責めにしていく。
しかも、非常に根本的な議題を。
実に愉快な講義を体験した
気持ちになれます。
講談社アルファ文庫、880円。

河合隼雄さんの他にも
日本には精神の問題に挑んだ
知の巨人が何人もいました。
精神病理学の木村敏。
統合失調症の大家・中井久夫。
フロイトの専門家・小此木啓吾。
戦前も含めるなら、
森田療法の森田正馬。
日本人の心を「甘え」を中心に
捉えようとした土居健郎。
もっともっとたくさんいます。

でも、フロイトの精神分析は
科学ではなかったとなると、
小此木啓吾さんの本を
オススメする気持ちが減退する。
ことのほか、統合失調症を
取り上げる中井久夫さんは、
投合失調症に興味がないと
面食らうかもしれない。

その点、河合隼雄は懐が広い。
心の病全般に目配せがきいてる。
根っこはユング研究や箱庭など
独特の専門家なのに、
描いてきた内容は、狭い範囲に
おさまらない。
やはり、河合隼雄はすごい。

ということで、セレクトする本は
河合先生の本から、という
趣旨に変えさせてください。

さあ、河合隼雄の2冊目は
『いじめと不登校』
新潮文庫、605円。
いじめ不登校の問題に挑むには
自分の中の「悪」をどう
コントロールするか?
「悪」をないことにしては
何も始まらないという、
実に本音の話です。
なぜ、世の中から悪が
なくならないか?ではなく、
どう悪と付き合うか?を
語るあたりは河合先生の
真骨頂です。
河合隼雄さんはきれいごとを
一行も書いていない人ですね。
恐るべし。

続いて、また対談です。
『なるほどの対話』
河合隼雄、よしもとばなな。
新潮文庫、605円。
作家よしもとばななと
人生のあれこれを楽しく語り合う
対談エッセイの名作。
河合先生もばななも、二人とも
悩んで生きてきたのがよくわかり、
なるほど~となりますね!

河合先生を更に知りたくなったら
『河合隼雄自伝』があります。
新潮文庫、825円。

また、河合隼雄さんの
カウンセリングに関する
名言を集めた『河合隼雄語録~
カウンセリングの現場から』は
カウンセラー河合隼雄の
名アドバイス。
カウンセラーだけでなく、
心について考える全ての人が
学べる言葉ばかり。
岩波現代文庫、968円。

心理療法家の顔とは別に、
河合隼雄さんの日本文化への
分析力を知らしめたのは、
『母性社会~日本の病理』。
よく「母系社会」と呼ばれる
日本をあえて「母性社会」と
名付けた名作は、まだ今日も
日本社会の「診断」として有効。

河合隼雄さんは実に
守備範囲が広かった。
ユング、箱庭、昔話のほか、
実はジェンダーについても
関心が高かった。
『とりかへばや、男と女』は
性が入れかわる中世の物語を題材に、
男らしさ、女らしさ、エロス、
性変換などを掘り下げています。
驚くのは『とりかへばや物語』が、
映画『君の名は』より1000年前に、
すでにあったということです。

ジェンダーレスについて、
エロスについて、
深層心理学から見た名著です。
新潮選書、1430円。


さあ、こんな感じでどうでしょう?
河合隼雄先生の全体像を
まんべんなく掴むには良い
セレクトになったでしょうか。

それにしても、
足跡があまりに広範囲だから
追いかけるだけでも大変ですが、
それは楽しく実りある遠足になる
ことは間違いないでしょう。

金額は、
880円、605円、605円、825円、
968円、1430円、
トータルすると5313円でした。
ちょっとオーバーしましたね。

『魂にメスはいらない』
『いじめと不登校』
『なるほどの対話』
『河合隼雄自伝』
『河合隼雄語録~カウンセリングの現場から』
『母性社会~日本の病理』
『とりかへばや、男と女』

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