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詩集「それでもいいから愛したい」

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夜景

夜景

無性に

東京の夜景を見たいなと思う

夜景に包まれると

無性に

誰かに手紙を書きたくなる

ホテルのライティングデスクの

レターセットは

そんな心を誘うためにあるのだろうか

それらはすべて

そんな自分に

会いたくなることから

はじまっている

夜景は雄弁だ

なぜそれを

知ることができたのだろう

ひとりごと

ひとりごと

ひとりごとは

わたしに一番近い言葉

ひとりごとは

わたしの呼吸

ひとりごとは

わたしの眼差し

わたしはあなたの

ひとりごとになりたい

ブルー

ブルー

ブルーがあるなら

ブルーとの調和なら

まごうことの無い美が存在する

なぜなら 空

海も山も

地球はブルーを選び

一致する

ブルーに纏われていたい地球

我らはなぜ忘れてしまったのか

宇宙船の船長

この地球を何色だと叫んだのか

聖母マリアが装った衣

真実のブルーとなぜ呼ばれているのか

誰か教えてくれないか

今ここにある光の意味を

誰か教えてくれないか

かつて人は誰しもが

もっとみる
ひとりごと

ひとりごと

ひとりごとは

わたしに一番近い言葉

それは

呼吸と一緒に

それは

眼差しと一緒に

わたしは君の

ひとりごとになりたい

しあわせ

しあわせ

幸せは 小さくていい

幸せは ひとつのタイミングでいい

幸せは 一人だけでいい

幸せは 一生に一度の場所でいい

幸せは 私のものではなく

幸せは 誰のものでもなく

幸せは 世界中を探しまわっても

見つけ出すことはできない

What is happiness

What is happiness

幸せって

いつでも手が届くことを指すのなら

それは幸せではない

幸せって

待ち焦がれて訪れてくれるもの

幸せって

この世でただひとりの人から

与えてもらえるもの

幸せって

この世でただひとりの人

だけのもの

幸せって

一生にひとつだけでいい

幸せって

それでいい

それが 幸せ

暦を外そう

暦を外そう

待っていた楽しみ
眺める暦が嬉しくて
嬉しくて
待ち望む日が明けてからの
暦の数字が嫌で
嫌で

旅から戻ったら
暦を外そう
天を射抜く歓びの後に は
底なしの喪失が座っている
生の道は凸凹の波
平坦を選択しない生の
一歩の一呼吸
我が一望の 自分であり
我が一望の 大地
暦はいらない
暦を外そう

ずるい

ずるい

あっちを向いて

ずるいなぁと振り返る

こっちを向いたら

やっぱり

ずるいなぁを見つけてしまう

ずるいなぁを映してしまった鏡には

周囲人の笑顔ばかりが描かれていた

罪の痛さは

自分だけが感じるもの

自分の罪は

誰のものでもなかった

電話

電話

君の声

君の声と等しき真はあらず

流れるすべての血汐を

浄化させてしまう

君の声は

あらゆる説法も独裁もエゴも

無意味に覆す

君の声は

すべての始まり

君の声は

すべての創造

君の声は

すべての解決

君の声は

すべての風景である

君の声があるだけで

わたしの呼吸は

成り立ってくれる

ほんとうの

ほんとうの

ほんとはね 聞きたいの

ほんとはね ほんとはね

そのままになさい

そのままに そのままに

夕陽が泣くように

染み入ってくれるはず

ほんとはね 聞かないで

ほんとはね ほんとはね

ここへ辿り着くまで

いくつ涙を零してきちゃったの

どうして知りたいの

どうしての向こう側にある

心の出で立ちを直視できるの

聞かなくてよかった

知らなくてよかった

そのままでよかった

どうし

もっとみる
続いていくのです

続いていくのです

たとえ

一日だけに巡ったロマンスであったとしても

それが

一生分の想いに値すること

想いをつかむことは

己をつかむこと

己を逃さないこと

目の前を通り過ぎている時間に

一生分の美質が潜んでいるから

値うちを測ろう

今すぐに

与えられた時間は途方もなく短い

世は己がいようと

いるまいと

世はそのまま

流れていくのです

続いていくのです

残酷にも

残酷にも

鏡

わたしがあなたを
好きになれなくなったのではなく

わたしが
あなたを好きでいるわたしを
愛することができなくなったのです

もっと

もっと

「もっと一緒にいたいのに」

残してくれた別れ際の目に

君の人生のまことがいてくれた

罪深く 愛おしく

あの目だけで

わたしは 生きていける