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日本近代文学

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2022年6月の記事一覧

vol.129 太宰治「ダス・ゲマイネ」を読んで

vol.129 太宰治「ダス・ゲマイネ」を読んで

なんとか小説家で生きていこうとする太宰の心のもがきを感じた。

「ダス・ゲマイネ」は、ドイツ語の「Das Gemeine」で『卑俗』という意味らしい。太宰は友人への手紙に、「『卑俗』の勝利を描いたつもりです」と、この作品のことを伝えている。

大辞泉、「卑俗=いやしく下品なこと。品がなく俗っぽいこと。」の勝利とは、どういうことなのだろう。

内容
主人公の帝大生「私」佐野次郎(あだ名)は、恋した女

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vol.128 向田邦子「父の詫び状」を読んで

vol.128 向田邦子「父の詫び状」を読んで

「そう言えばこんなこともあった」「確かこんな話もしたっけ」と、少女時代の思い出をつづった、TVドラマの脚本家でもある向田邦子さんのエッセイ。

内容
父が夜更けにほろ酔い機嫌で客を連れて帰ってきた時のこと。玄関で客の靴を揃えていた時の父との会話。客の吐瀉物を子どもの自分が掃除していた時の父の態度。転勤先の仙台から「此の度は格別の御働き」という一行が父からの手紙に書いてあったことなど。(内容おわり)

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