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「概念が変わる」ほどのいちじくを、より多くの人に届けたい【かまびと。 #12 小さな自然農園にゃんモコ・大塚さん、濱島さんご一家】

🌱かまびと。
嘉麻市のふるさと納税に関わる「ひと」にクローズアップ。こだわり抜いた返礼品を提供している事業者さん、嘉麻市のために頑張る市職員さんなどなどの紹介をしています。

細い山道を登って行くと、いくつも立ち並ぶビニールハウス。ここで栽培されているいちじくは、食べた人に「いちじくの概念が変わった」とも言わしめる、ふるさと納税や産直サイトの人気商品です。収穫・梱包にてんてこまいで、繁忙期には朝4時半から収穫することもあるんだとか。

今回の「かまびと。」でご紹介するのは、嘉麻市の山の麓で農家「小さな自然農園にゃんモコ」を営む「じぃじ」こと大塚寿丸さん、そして娘夫婦の濱島明子さん・秀嗣さんです。いちじく、たけのこ、米、麦の農場を1代で築き上げた大塚さんと、インターネットを通じてそれをより多くの人に届けるべく奮闘する濱島さんご夫婦。美味しいいちじくを作って直接お客さんに届ける努力、家族でいちじく栽培に携わるようになったきっかけなどなどをおうかがいしました。この記事では、皆さんの人柄を伝えるべく方言もそのままでお伝えします!

無農薬・有機肥料で安心のいちじくを、家族みんなで

ーいちじくを作る際にこだわっているところを教えてください。

大塚さん:うちは農薬を使いません。それは自分の体のためでもあるんです。僕は昔ここで花の栽培をやりよったけど、花は3日に1回薬をやらんといかんのです。そうなると、農業をやっている人も体をやられてしまう。

濱島明子さん:農薬を使っていないからこそ「皮ごと食べられる」というのが1つの売りですね。果物は皮に農薬がついていることもあると思いますが、うちのいちじくは無農薬栽培なので子どもでも安心して食べられるものになっています。

大塚さん:害虫を殺すための農薬を使っていないからこそ、虫取りはしっかりせないかんと思っています。いちじくにはカミキリムシがつきやすいのですが、それを見つけたら、即切断ですね(笑)今の時期は木の中に虫がいることもあるので、針金を使って駆除しています。うちの孫も手伝ってくれますよ。「じぃじ、虫釣りいこ〜」って。


大塚さんはおしゃべり好きで、たくさんお話をしてくださいます。お孫さんについて話すときは特に顔がほころびます。

濱島明子さん:油断したら虫が飛んでいるので、その都度対策をしていますね。アナグマなどの小動物も出てくるので、網を張ったり、電気を流したりして食べられないようにしています。

大塚さん:肥料も化学肥料ではなくて有機肥料と堆肥を使います。化学肥料を使うのは栄養剤を飲みよるようなもんです。化学肥料を使うと、すぐに木が太くなる。そうすると、どうしても植物の体がひ弱になると思うんです。それよりも、じわじわと木を強くする方がいいと思うんですね。

あとは、肥料が多すぎると、いちじくに色がつかんのです。そして美味しくなくなる。果実はいのちの危機にさらされた方が甘くなるので、収穫の時期と肥料が分解していく早さに合わせて肥料の量を調節しないといかんのですね。

ー小さな自然農園にゃんモコさんでは、どれくらいのいちじくを作られているんですか?

大塚さん:いちじくの木1本から、だいたい500個くらいの実がとれるんですよ。なのでハウス1棟で1万個くらい。うちは全部で20棟のハウスがあるので、収穫時期の7月終わりから10月終わりは1日も休まれません。収穫時期を1日逃すと、虫が湧いて腐敗が始まって、ひどい時はハウス1つがダメになる。その虫を絶対つけちゃいかんので、1つ1つの実を毎日見て回って確かめています。

濱島明子さん:実を採る時期を見極めるのは難しいんですよ。1日単位で変わるので、今日取り忘れて「明日にしよう」って思っていたら熟れすぎていたりするんですよね。動物に盗られてしまって「やっぱり採っておけばよかった」と思うこともしょっちゅうです。

出荷するいちじくです。箱にぎゅっと詰まっていて美味しそうです。

ーいちじくは傷みやすいイメージがありますが、販売する際に気をつけているところはありますか?

濱島明子さん:去年(2022年)からネット販売を始めたのですが、梱包が一番の課題だと思っています。配送している時に実同士がぶつかって汁が出たり崩れたりしてしまうので、そうならないように緩衝材を詰めるなどの工夫をしていますね。

いちじくの実は、乾燥すると少し縮んでしまうんです。配送するときに箱が揺れると、いくら綺麗に詰めても実がばらけてしまったり、潰れてしまったりするんです。

濱島秀嗣さん:それに加えて、いちじくは追熟しないんですよね。早めに収穫すれば実が硬いので形が綺麗なまま送れるのですが、「一番美味しい」という状態ではない。でも実が完熟した状態のものはその日のうちにダメになってしまう可能性もある、というジレンマがあります。

濱島明子さん:私としては、お客さんになるべく綺麗な状態で美味しいものを届けたいんです。やっぱり箱を開けた時に感動して欲しいじゃないですか。いちじくは硬いと美味しくないので、届く時にいい状態で送れるように試行錯誤しています。

1代で広大な田畑を開拓。そこから始めたいちじく栽培

ー大塚さんが農業を始められたきっかけを教えてください。

大塚さん:きっかけは親に「兄ちゃんは大学行くき(行くから)弟は家を継げ」って言われて。昔はよくあったんですよ。余裕で大学に合格するくらい頭がいいのに、親に「お前は絶対農学校に行って家を継げ」って言われることが。でもやっぱり農業は好きでしたね。

その頃は花とたけのこの栽培をやっていました。花はビニールハウスで栽培していたんですが、そのころはビニールハウスが流行し始めていて、先進的やったんですね。そこから30年花の栽培を続けました。

ちょうど40歳くらいになった頃に妻が病気になってしまったんです。花の栽培は一人ではできないので、代わりに米づくりを始めました。今は地域の人たちからも田んぼを託されて、10万坪くらいになりました。それからいちじくの栽培もするようになりました。

今はいちじく、お米、たけのこ、麦を作っていますね。たけのこは1万5000坪(東京ドーム約1個分)の敷地を使って作っていて、去年は多い日で1日に2トンくらい収穫したかな。

濱島明子さん:たけのこは鍬で掘っているのですが、1年で刃がすり減ってダメになってしまいます。農機具も普通は数年持つはずのものを、毎年修理に出さないといけないくらい使ってしまうんですよね。1代でこれだけ農業の地盤を固めたのは、子どもながらに感心します。

収穫時期はこの箱100個分のたけのこがとれます。2023年からはいちじくだけでなくたけのこもふるさと納税に出品されています。

ーいちじくの栽培を始めたのはなぜですか?

大塚さん:もともと花を作っていたハウスがあったんですが、花の栽培をやめてしまったのでハウスがもったいないと思ったんですね。それで何を作ろうか探していて、いちじくはハウスで栽培しやすいっちゅうことでいちじくを作るようになりました。栄養を集中させるために摘果(育ちの悪い実を摘み取ること)をしなくていいし、葡萄のように房の形を整えるようなこともしなくていいですから。

父の手伝いを通して見えた、農業の可能性

ー濱島さんがいちじく販売に携わるようになったきっかけは何ですか?

濱島明子さん:私はもともと学校で栄養士をしていたんですが、出産を機に退職したんです。子育てをしている時に父に「うちを手伝ったら?」って言われて。実家なので融通も効くし、それでお給料がもらえるならいいかなと思って、最初は軽い気持ちで始めました。最初は農家を継ぐつもりは全くなかったですね。

私が農業を手伝うようになって、通販サイトでいちじくを販売し始めました。そうするといちじくを欲しいと言ってくれる人が多くなって、ありがたいことにリピーターになる方も増えてきたんです。作ったら作った分だけお客さんに喜んでもらえるのは嬉しかったですね。

それまでは父と農業についてしっかり話す機会はなかったのですが、父と話したり仕事をしたりする中で「農業って面白いんじゃないかな、やり方次第では成長させることができるんじゃないかな」と思ったんです。父がせっかく土台を作ってくれたので、これを続けていきたいなと思うようになりました。

いちじく作りにはまだまだ伸び代があると思うんです。私は栄養士の免許を持っているので、それも生かして加工場も作りたいと思っています。形が悪くて出荷できないものもあるのですが、そういうものをジャムやコンポートにして付加価値をつけられないかなと考えていますね。

夫は小学校の教員をしているのですが、今は育休をとって育児をしながら父の手伝いをしてくれています。夫の手も借りながら幅を広げていけたらいいなと思っています。

濱島さんご夫婦とお子さんです。大塚さんと息の合った掛け合いが印象的でした。

ーいちじくの生産や販売をしている上で一番嬉しかったこと、やりがいは何ですか?

濱島明子さん:やりがいはやっぱりお客さんに「美味しい」と言ってもらえることですね。インターネットを通じて販売していると、コメントをいただけたり良い評価をつけてくださったりすることもあるので、それは私たちにとってもモチベーションになります。

産直サイトやふるさと納税ではありがたいことにたくさんコメントをいただいていて、「いちじくの概念が変わりました」と言ってくださった方もいらっしゃいました。

今までの農業は「良いものを作っていればいい」という風潮だったかもしれないのですが、今はそれだけではなく、多くの人に知ってもらうことが重要だと思っているんです。父がせっかくいいものを作っているので、それを私たちの力で広めていきたいなと思っています。

「リピーターを増やしたい」今後の目標

ー皆さんのこれからの展望や見通しを教えてください。

大塚さん:これからはリピーターを増やしていきたいですね。嘉麻市には、収穫時期になると毎週5~6箱いちじくを買ってくれるお客さんがいらっしゃるんです。そのような方を増やしていけるといいですね。

濱島明子さん:地道に地元で声をかけていきつつ、インターネットで全国にも知ってもらって、うちのいちじくの味を広げていければいいなと思っています。

大塚さん:それに加えて、今は新しい果物にも挑戦しています。いちじくの木の寿命は10年から15年なのですが、一度いちじくを作ってしまった土地は「連作障害」っちゅうていちじくを作りつづけることができんのです。

だから別の果物に切り替えて、一部のハウスにはシャインマスカットとデコポンを植えようとしています。そのために自分で本を買って勉強しています。

ーチャレンジ精神旺盛で、あたたかい皆さんのお話をうかがうのはとても楽しかったです!ありがとうございました。


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https://www.instagram.com/nyanmoco.smallfarm/

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