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読書記録「クローディアの秘密」

わたしは秘密というのは嘘をついたり怒られるいけないこと、というイメージが染み付いていた。でもこの話を読んで、秘密は共有すると仲が深まったり、バレないよう思案して良いアイデアが思いついて喜んだり、普段ならいけないと怒られることをしているという非日常感にニヤリとするような楽しさがあったことを思いだすことが出来た。
話の内容は11歳の少女クローディアが弟のジェイミーと家出をして美術館に泊まり、天使の小像の謎を解こうとする、というもの。警備員から隠れたり、2人が通っている学校の生徒とばったり出くわしたりして、家出がバレて冒険が終わらないかとドキドキした。
以下、わたしが印象に残った場面を述べていく。

「日によってはうんと勉強しなくちゃいけないわ。でも、日によってはもう内側にはいっているものをたっぷりふくらませて、何にでも触れさせるという日もなくちゃいけないわ。そしてからだの中で感じるのよ。ときにはゆっくり時間をかけて、そうなるのを待ってやらないといろんな知識がむやみに積み重なって、からだの中でガタガタさわぎだすでしょうよ。そんな知識では、雑音をだすことはできても、それでほんとうのものを感ずることはできやしないのよ。中身はからっぽなのよ。」

193ページから引用

フランクワイラーおばさまは、感情や考えなどの内側のものを時間をかけて体の中で感じないと、「ほんとうのもの」を感じることが出来ない、と言った。
わたしは昔からアニメや漫画、小説などの物語を沢山身体の中に入れるのが苦手で、すぐ胸がいっぱいいっぱいになってしまう。アニメを1話観たら見開きのノート1ページに、感想を書き連ねないと気が済まないくらいだ。事細かに感想を書いてしまい疲れてしまって、物語を楽しめないことも多い。でもこの文章はわたしの悩みに気づきを与えてくれた。自分の中で何度も咀嚼しないと「物事の本質」は分からない。わたしも、「ほんとうのもの」が分からないままの人生は空っぽだと思う。だから気の済むまで思考して、自分の感情をふみといて、表現してゆこうと決めた。例えそれが「人より無知だから劣っている」という印象を与えてもいい。わたしは中身の詰まった人になりたいと思った。

「あたし、このクローディア・キンケイドは、うちに帰った時はちがったクローディアになっていたいの。」

146ページから引用

「それでクローディアはちがったひとになって、グリニッジに帰れるのよ。」

188ページから引用


クローディアは秘密を持つことで、「ちがったひと」になることが出来て、家に帰ることが出来た。今思えばわたしも同じような体験をしたことがある。幼い頃、両親と良くイズミヤに行っていた。イズミヤにはソフトクリーム屋さんがあって、お父さんが「お母さんには内緒だよ」と良くソフトクリームを食べさせてくれていた。お父さんとの秘密はわたしにとって、「ちがったひと」になれることであって、その特別感が好きだったのだ。だからみんな秘密に惹かれるんだ、と気付かされた。

「ストーリーの流れを妨げるものは、例えどんな美しいことばでも描写でも、構成の段階で思い切って捨ててしまいます」

207ページ、あとがきから引用

著者のカニグズバーグ夫人が言うように、これはとても大切な事だと思う。わたしも物語を書いたことがあるのだが、美しいと思う言葉を使いすぎて、完成した話は話の進みが恐ろしく遅い物語だった。学びを与えてくれると同時に、いつかまた物語を書きたいという意欲を刺激された。
この物語は、伏線が些細な日常の描写から成っていたり、この問題をこう解決したら物語は終わるだろう、という予想をいい意味で裏切ってくること、語りの人がキーパーソンになっているという新しさなど沢山の魅力がある。また文章は、子どもの頃の考えていたことや気持ちを思い出させてくれるような懐かしさがあり、将来母になった時に読むとまた見方が変わりそうだ。いつかまた再読したいと思う。

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